3年ぶりの鳴尾浜でパワーをもらって、来年へ!もと阪神タイガースの穴田真規選手
阪神タイガースのファームは7月27日に、鳴尾浜で社会人クラブチーム・和歌山箕島球友会と交流試合を行いました。この対戦は2011年9月13日以来、5年ぶりだったんですね。その時は鳴尾浜球場でウエスタン・ソフトバンク戦が行われていたため、若手中心のメンバーで和歌山箕島球友会のホームグラウンドであるマツゲン有田球場へ出かけていったもの。メンバーは育成選手を含む若手中心で、人数もギリギリだった記憶があります。
ちなみに出場した野手9人と投手3人、計12人の平均年齢は21.8歳、そのうち5人が10代!田上(23)、阪口(19)、甲斐(23)、黒田(25)、田中(26)、原口(19)、ベキオナチ(25)、穴田(18)、中谷(18)、吉岡(24)、二神(24)、島本(18)。こんな顔ぶれでした。( )内は試合当日の年齢です。
あれから5年、箕島球友会は顔ぶれがほとんど変わり、野手でいうとスタメンマスクをかぶっていた水田選手が現在唯一の現役。そういう阪神も現役でチームに残っているのは原口選手と中谷選手だけ。その2人ともが今1軍にいるというのは、同じ“いない”という状況の中で最高に嬉しいことですね。
5年前の対戦ではタイガースのルーキーとして試合に出ていた穴田真規選手が、そのあと2013年に退団。翌年から和歌山へ移住し、その和歌山箕島球友会で野球を続けています。そして、昨年9月のパナソニック・阪口哲也選手、ことし4月のカナフレックス・藤井宏政選手に続いて、3年ぶりの鳴尾浜へ“帰って”きました。最初は6月28日に予定されていた交流試合ですが雨天中止となり、でもすぐ振替日程が決まったとか。どれだけ楽しみにしていたか、鳴尾浜へやってきた穴田選手の表情でおわかりだったでしょう。
一応、試合結果と経過を簡単に書いておきます。
《交流試合》7月27日
阪神- 和歌山箕島球友会 (鳴尾浜)
箕島 010 110 010 = 4
阪神 002 100 23X = 8
◆バッテリー
【阪神】竹安‐岩本-石崎-トラヴィス-金田 / 小豆畑-梅野(6回~)
【箕島】寺岡-高川-竹中-松尾 / 水田-中原(7回~)
◆本塁打 横田2ラン(竹中)、俊介3ラン(松尾)
◆二塁打 一二三、伊藤隼
先制したのは箕島でした。竹安に対して2回、先頭の穴田は投ゴロに倒れますが、続く水田がショート植田のエラーで出て、2死後に岸田の中前打で一、二塁、9番・森下の中前タイムリーで1点先取。阪神は3回、柴田、植田、板山の3連打で追いつき、なおも坂の四球などで1死満塁として西田が左犠飛!2対1と勝ち越します。
しかし4回、2人目の岩本が先頭に四球を与え、犠打などで2死三塁として、またもや9番の森下に左前タイムリーを浴びました。これで同点。するとその裏、1死から一二三が三塁線を破る二塁打を放ち、続く代打・俊介の中前タイムリーで生還して、再び勝ち越し!と思ったら、岩本が1番の平井に内野安打を許し、内野ゴロと暴投、さらに四球と二盗もあって1死一、三。4番・林の左犠飛でまた同点です。
終盤に入っても、7回1死から森越が中前打し、続く横田がセンターへ2ランを放つと、直後の8回にはトラヴィスが穴田を右飛に打ち取ったあと四球、代打・榊原に中前打されるなど2死一、三塁として代打・北の左前タイムリーで、また1点差に。しかし8回裏2死から梅野が中前打、伊藤隼がライトフェンスに到達する二塁打で二、三塁とし、俊介がレフトへ3ラン!8対4で阪神が勝ちました。
目標を見失いかけた予選敗退のあと
和歌山箕島球友会の西川忠宏監督が「今までで一番いい!」と春先に言われた通り、3年目の穴田選手は打撃好調。都市対抗本大会出場はかなわなかったものの、昨年優勝した全日本クラブ野球選手権で連覇、そして日本選手権へ!と楽しみにしていたのですが…まさかの予選敗退となりました。大阪・和歌山1次予選を免除されて臨んだ、7月2日の西近畿予選の初戦で敗れたのです。
この時点でも今までと違う感じがしたのは確かで、翌3日の敗者復活1回戦は勝ったのに第2代表決定戦で、前日の初戦で大敗した県警桃太郎に、またしても負け。9月のクラブ選手権(西武プリンスドーム)も、それに優勝して出られる10月の日本選手権(京セラドーム)も、すべて届かずに終わってしまいました。クラブ選手権は穴田選手が入ってから2年続けて出ていたので、そこへ行かない事態になるなんて思いもよらないこと。
もちろん公式戦は今後まだありますし、オープン戦も組まれています。だけど、“目指すべきところ”が道の先にはない―。選手も、応援した家族やファンの皆さんも、そんな思いだったでしょう。「まさか」と繰り返すばかりでした。でも、今回の阪神戦が練習を再開したチームの励みになっていたと聞き、ホッとしたような気持ちです。
試合が終わったあと、西川監督は「目標がなくなったと言うけど、それは違いますね。来年の都市対抗があるんですよ。選手たちは来年に向けて切り換えています。きょうホームランを打たれたピッチャーたちが、来年はエースになってもらわないと」とおっしゃいました。
阪神の野手陣について「ほとんど1軍経験のある選手ばかりでしょう?」と西川監督。よくご存じで。一二三選手と植田選手以外の全員、1軍の試合に出たことがあります。「それはもう刺激になったし、いい経験になりました。オリックスとやった時(5月13日)も、ほとんど1軍経験がある選手だった。よかったですよ。こういう機会でモチベーションを上げていけて。アピールできた人、できない人がいるけど、こういうところでアピールできるかどうかなんですよね」
もう新チームへと動き始めています
さらに西川監督は「きょう打った選手を、あの時に使うべきだったかなあって、いまだに考えてしまう」と言われます。“あの時”というのは都市対抗やクラブ選手権の2次予選ですね。戻ってやり直せるなら…と何度も何度も思うと。
すべては来年ということになり、そのために監督と選手の個別面談も行われたようです。クラブチームの場合、将来を見据えて3年か4年で退団していく選手が多く、ことしも何人かチームを去ると聞きました。一方ではセレクションで新戦力を見極めるなど、来年に向けてのチーム作りが既に始まっています。
そうそう、ポジションの変更もあるとか。3番を打っていた岸選手は俊足を生かして外野へ、穴田選手がファーストへ回るのではないかと思われます。岸選手は試合後に話を聞けず、でもヒットの写真が撮れたと言ったら「ほんまですか!」とニッコリ。出すのが遅くなってすみません。この日は2安打に2盗塁とアピールし、阪神の選手からも名前が出ていましたよ。
穴田選手、岸選手とも同い年の榊原選手は、都市対抗予選に続いてまた代打でヒットを放ち「よかったです!」と笑顔です。打ったのはトラヴィス投手からですが「石崎さんとかメッチャ球が速いですねえ!僕やったら打てないですよ。バッターもすごい人ばっかりで」と興奮気味。初めてだという鳴尾浜で「哲と会いたかった」と榊原選手。
社会人として対戦もある阪口哲也選手(パナソニック)とは高校の同級生で、彼が阪神にいる時に対戦したかったということでしょうね。あ、そうだ。市立和歌山高校の甲子園出場、おめでとうございます!和歌山大会の決勝で破ったのは、西川監督はじめチームにOBも多い箕島ですけど…。
「みんなに会えてメッチャ楽しかった!」
お待たせしました。穴田選手のコメントをご紹介しましょう。といっても野球の話はほとんどしていません。帰り際にバスのところへやって来て、開口一番「めっちゃ楽しかった!」と、久しぶりに弾けるような笑顔でした。みんなに会えた?「はい。ほとんどの人としゃべったかなあ」。試合中も、守備位置からトレーナーさんに会釈していたくらいですもんね。
阪神退団後も、バットを箱ごと送ってもらったり、高価なお財布をプレゼントされたり、とってもお世話になっている上本選手がたまたまファームにいて、しかも試合も出たのは嬉しかったでしょう?「上本さんには頑張れよって言われました」。一二三選手は?「何も。いつも通り、おちょくりあいしてただけ」。“おちょくりあい”って通じますかね。ふざけあっていただけ、という意味です。
そして「めっちゃ道具もらった!みんなからもらった」と目を丸くしながら報告してくれます。もしかして…その右手につけている上本選手のリストバンドも?「そうです。ずっと欲しかったんですよ。テレビで見て、ええなあと思って。だから電話しました。“ください”って。きょうもらったとこです。すぐつけた(笑)」
試合の話はそっちのけで「平田さんに会いたかった。(筒井)壮さんも会いたかったんで、会えてよかったです。平野さん、覚えてくれてはりましたよ!『1年かぶってたよな』って。それに宮脇さんはメッチャ嬉しそうやった。近くにきたからって、マツゲンへ寄ってくれたことがあるんです」と次から次へと名前を挙げ、満面の笑み。
あげく「宮脇さん、俺のことメッチャ好きやから」と厚かましいことを言いながらキョロキョロ。すると、そこへ宮脇ファームマネージャーが出てきました。まさに以心伝心?相思相愛?改めて激励の言葉をもらい、バスに乗り込んだ穴田選手です。
筒井コーチに叱ってもらって気合い注入
今季の本大会出場が全部なくなった時に「僕も先のこと考えてますよ」なんて意味深なことを言い、しばらくして聞いたら「決めた!ビッグになる」とか。わけのわからない結論です。でもきっと穴田選手なりに迷いも不安も焦りもあったでしょう。表には出さないけど。そんな時、鳴尾浜へ来て懐かしい方々に会って、気持ちの方向らしきものが見えたかもしれませんね。
鳴尾浜で筒井壮コーチに「何がプロに戻りたいや。そんなんじゃ無理やわ。気持ちが入ってへんやろ。もっともっと名をとどろかせろ!」とハッパをかけられたそうです。この他にもいろいろ言ってもらって、最後に「頑張れよ」の言葉もあったとのこと。翌日、穴田選手は「久しぶりに、壮さんに叱ってもらって気合いが入った!」と言い、続けて「来年もよろしくお願いします(笑)」と連絡がありました。
来年は都市対抗に出ることしか考えてないそうですよ。もちろん東京ドーム、西武プリンスドーム、京セラドームの制覇も!楽しみにしています。
試合のあった翌日に甲子園球場へ行った際、試合前の練習を終えてロッカーへ引き揚げる中谷選手に「きのう穴田くんが鳴尾浜に来たよ」と言ったら「そうなんですよ。メッチャ会いたかった~!」と、ものすごく残念そうでした。それを伝えると穴田選手は「俺も一番会いたかったっすよ!俺ら、ラブラブやから」と。はいはい。ほんと仲良しで。ちょっと懐かしいですね。「楽しかったわぁ」と穴田選手もしみじみ。
「球遅いわ」vs「空振りしたくせに」
最後も同級生の2人です。何度か記事で書きましたが、阪神の一二三選手と箕島の寺岡投手は中学時代、ジュニアホームスのチームメイト。同じピッチャーとしてしのぎを削っていたそうです。それまで小学生時代は、あらゆる賞を手中にしてきた寺岡投手なのに「中学になったら、ぜーんぶ一二三に持っていかれた!」と話していました。と伝えたら一二三選手も楽しそうに笑っていたんですよね。
その2人が揃うということで、周囲の我々も楽しみにしていた対戦。一二三選手もきっちりスタメンでしたもんね。1打席目は左飛、2打席目は初球のを打って三塁線への二塁打という結果です。で、試合後に一二三選手から「まっすぐ遅すぎ!チェンジアップかと思ったわ!って寺岡に言うといてください」と頼まれました。そんなこと言えないよなあと思いながら、そのまま伝えると…
今度は寺岡投手から伝言です。
「うるさい!空振りしたくせに!と言い返しといてください」
それを捨て台詞のようにバスが出発し、しばらく経ってからウエートルームへやってきた一二三選手に、再び伝言。
一二三選手は楽しそうに笑って
「だから、ですよ。真っすぐやと思ってるのに遅すぎるから空振りしてしもたんすよ!」
昨年のクラブ選手権MVP右腕になんてことを。でも今季はちょっと乗り切れないままシーズンが終わってしまいそうで心配になりますね。いつも1人で投げ抜いて、大変な負担でしょう。オフは来年に備えてしっかり休めてください。なおこの日、試合後は直接話ができないまま、伝言を託した一二三選手と寺岡投手。これが成人式以来の対面だったそうです。