元阪神の穴田真規選手、4戦すべてに安打で貢献!和歌山箕島球友会が2年ぶりのクラブチーム日本一に
社会人野球のクラブチーム日本一を争う『第42回全日本クラブ野球選手権大会』が、9月1日から4日までメットライフドームで行われました。元阪神タイガースの穴田真規選手(24)が所属する、西近畿代表・和歌山箕島球友会は2年ぶり7回目の出場です。一昨年のチャンピオンチームでありながら昨年は予選敗退。その反省も含め、頂点を奪い返す“挑戦”の年だった箕島が、見事2年ぶり4回目の優勝を決めています!
われらが穴田選手も今季はずっと好調で、大会では1回戦から決勝までの4試合すべてにヒットを放ちました。17打数7安打で打率.412、あと少しで首位打者も狙えた?という成績だけではありません。決勝が延長10回のタイブレークに突入した時に西川監督は、1死満塁で打席に立つ大役を穴田選手に託したのです。「ここは穴田のオーラに賭けた」と。これに応え、まさかの足で(失礼…)サヨナラへつないだ穴田選手。2年前より、ずっと誇らしげな顔が印象的でした。
なお決勝の相手は、佐々木恭介監督率いる大和高田クラブ。元阪神の野原祐也監督がことし就任したOBC高島が惜しくも敗れた東近畿の代表です。組み合わせを見たときに対戦するなら決勝とわかっていたものの、キッチリ両者とも勝ち上がりましたね。このクラブ選手権は近ごろ近畿勢が強く、2000年の25回大会で大和高田クラブが準優勝して以降は2003年、2014年、2016年を除いて近畿勢が優勝か準優勝をしています。なので、近畿ダービーも珍しくなかったんですね。
さて、ことしの和歌山箕島球友会は1回戦、2回戦(準々決勝)、準決勝、決勝と4試合を行っています。きょうはまず初戦、2日に行われた東北地区代表・東北マークスとの試合結果をご紹介しましょう。結果はご覧の通り、20対3という大差で7回コールド勝ち!7回までなのに、そのうち2度も打者一巡攻撃がありました。特に7回は16人で11安打して11点を奪うという、驚異的な打線のつながりです。
《第42回 全日本クラブ野球選手権大会》
9月2日 第1試合 1回戦
和歌山箕島球友会-東北マークス
箕島 102 510 11 = 20
東北 000 002 1 = 3
※7回コールドゲーム
◆バッテリー
【箕島】○寺岡-北面 / 水田-玉木(7回裏)
【東北】●鈴木-伊藤-三浦-柳原 / 千葉
◆三塁打 冨樫(箕島)
◆二塁打 冨樫、林(箕島)
※個人成績は箕島のみ
◆打撃 (打-安-点/振-球)
1]右:夏見 ( 4-2-2 / 1-1 )
2]中:岸田 ( 2-2-2 / 0-2 )
〃中:森下 ( 2-2-2 / 0-0 )
3]一:岸 ( 5-2-2 / 1-1 )
4]指:林 ( 4-1-2 / 1-1 )
〃走指:富山 ( 0-0-0 / 0-0 )
5]三:穴田 ( 5-2-0 / 0-0 )
6]左:平井 ( 3-2-0 / 1-1 )
〃打:野田 ( 1-0-0 / 0-0 )
〃左:木村 ( 0-0-0 / 0-0 )
7]捕:水田 ( 5-3-2 / 0-0 )
〃捕:玉木 ( 0-0-0 / 0-0 )
8]遊:西口 ( 5-2-2 / 0-0 )
9]二:冨樫 ( 5-5-3 / 0-0 )
〃二:北 ( 0-0-0 / 0-0 )
◆投手 回 (安-振-球/失-自)
寺岡 6回 (7-6-0 / 2-0 )
北面 1回 (0-0-1 / 1-1 )
<試合経過>※継承略
まず1回、1死から四球を選んだ岸田が暴投で二塁へ進み、岸の右前打で一気に生還!先取点を挙げました。3回1死から冨樫と夏見の連打、そこにレフトのエラーも重なって1点。岸田の中前タイムリーで2点を追加します。4回は穴田、平井が連打で1死一、二塁として水田と西口のタイムリー、富樫は2点タイムリー二塁打と5連打で4点!夏見の犠打で1死三塁となり岸田がタイムリー!5回にも冨樫が右中間へのタイムリー三塁打!9点目が入りました。
先発の寺岡は1回が三者凡退、2回は2死から中前打されただけ。3回も1安打ながら併殺で片づけます。4回は2死から内野安打(三遊間への打球にサード・穴田が飛び込んで、よく止めた!)があったものの2奪三振など無失点。5回もバントヒットと盗塁で、初めて二塁に走者を置きますが味方の好守備もあり0点に。
しかし6回、先頭の1番から連打され、1死後に遊ゴロで二塁封殺するも一塁への転送が逸れて1点入り、打者走者も二塁へ。続く5番のタイムリーで2点返されます。とはいえ既に9対2、抑えればコールドという7回にまた猛攻です。まず平井が四球を選び二盗、水田のバントヒットで無死一、三塁となって西口がタイムリー!冨樫の右前打で満塁として夏見が押し出し四球、途中出場の森下が2点タイムリー。岸もタイムリーで、この回5点目。
次は4番・林です。4回を終わった時点でノーヒットは林だけだったのですが6回に打席を終え、もうないだろうと思われた7回。無死一、三塁で回ってきた5打席目に、林は中越えの2点タイムリー二塁打!これで先発全員安打となりました。まだ続きます。穴田が左前打で、ノーアウトのまま一巡して代打・野田は一ゴロ。しかしバックホームがエラーとなって1点。三塁へ進んだ野田も水田のタイムリーで生還。
この回12人目の打者でようやく1死となった後、冨樫はここでも右前打を放ち5打数5安打3打点の大当たり!1死一、二塁で夏見がタイムリー。森下が内野安打、岸は遊ゴロで延々と続いた攻撃がやっと終わりました。この回、打者16人で11安打、11点。その裏は北面と玉木のバッテリーが先頭を死球で出し、暴投や二ゴロで1死三塁として中犠飛で1失点。20対3の7回コールドゲームです。
穴田選手は大量点を呼ぶ2安打
試合後、まず西川忠宏監督は「やはり、きょうは岸でしょう。あそこで凡退していたらどうなったかわからない。先制が大きいですね」と1回の先取点を挙げました。打線爆発について「3日前に紅白戦をやったんですよ。最終仕上げの意味でね。片方はレギュラーチームで、もう片方の先発が寺岡で。そしたらレギュラーチームが打って打って、きょうの7回の攻撃みたいになった。打たれたのが寺岡なので、非常に複雑ですけどね」と苦笑いです。
また「穴田も、あの技ありのヒットはよかったですよ。守備も、ヒットにはなったけど三遊間の当たりを止めて」とのこと。技ありのヒットは7回の左前打で、内角低めをうまく左へ運んだ感じです。また4回の守備で、三遊間の打球を横っ飛びでキャッチして一塁へ送球。惜しくも内野安打にはなったけど、よく止めましたねえ。
その穴田真規選手は「俺が打ったら、すぐ点になるなあ」とニヤニヤ。確かに4回は穴田選手から5連打でした。7回も“渋い左前打”から、さらに4点入っていますもんね。以降も、まともなコメントはほとんどなく「それがオレやん」と、またニヤニヤ。でも「あしたも勝って、ちゃんとしゃべる!」と言って帰っていきました。その公約通り、翌日はしっかりと話をしてくれていますので、ご期待ください。
先制点を挙げた打者と走者
何度も記事を書かせていただき、小虎ファンの皆さまにもおなじみの和歌山箕島球友会だと思いますので、他の選手のコメントもご紹介します。まず西川監督がポイントに挙げた岸翔太選手は「1打席目で打ててよかった。先制点が取れたので。あすも初回に勢いをつけられるよう頑張ります。僕、最初に結果が出たら乗っていけるんですよ」と笑顔。
岸選手はJABAのオフィシャル取材を受けていて、それを知った穴田選手は「顔が珍しいからでしょう」と相変わらず予想を超えた笑いを提供してくれます。って岸選手に失礼極まりないですよね。原井コーチも「なんでお前や~(笑)」と突っ込みまくり。あとで聞いたところ「先制点が僕だったからみたいです」と岸選手。ほんとグッジョブでした。
先制のホームを踏んだ岸田健太郎選手は「あれで、やりきりました」と笑いながら「思いきって行ってよかったです」と言います。2本タイムリーと2四球、2盗塁という結果に「足が持ち味なんで」とはにかんでいました。平井選手がケガをしたことにより、予選途中から外野を守っていますが「不安いっぱいです」と岸田選手。いえいえ、とんでもないですよ。
10割発進の新人に、もと首位打者は…
9番の冨樫和秀選手は5打数5安打3打点!「ずっと調子はよかったです。原井コーチのバッティングピッチャーのおかげです」。それを聞いた原井コーチは「その気持ちが大事」とニッコリ。ホームランが出ればサイクル安打達成、という7回は「一応、狙っていました。ウソです(笑)。バントのサインだったので」。でも2つファウルしてヒッティングに切り替わり、結果は右前打。一巡後の第5打席も右前打でした。
2015年の優勝時は18打数8安打4打点、打率.444で首位打者に輝いた平井徹選手によれば「経験者なのでわかりますが、自分の欲を出したらダメ」とのこと。「あの時、2戦目と3戦目はちょっと欲がありました。取れたら…と。でも決勝は欲を棄ててやった結果です。だから今回もチームのためにやる。ここってとこで決めます!」。力強い宣言ですね。
なお平井選手は6月の1次予選途中で左足を負傷し、7月の西近畿2次予選もベンチからの応援でしたが、本大会は完全復活。まだ1試合フル出場こそありませんが、盗塁も決めていますし、問題なさそうです。「みんなが、ここまで連れてきてくれた」感謝を込めて全力を尽くします。
先発投手&救援バッテリー
同じくルーキーだった2015年は3試合に投げ3勝、完封と完投が1試合ずつで最高殊勲選手賞(MVP)を獲得した寺岡大輝投手は、1回戦を振り返って「3回まではよかったです。全体的に50点って感じです。全然っすよ。点を取られましたから」と淡々。でも自責点はなしですよ。「(先頭から連打されて)ノーアウト一、二塁の時点で、もうダメですね。それを招いたのは自分なので。細かいコントロールができなかったのは反省ですね」
西川監督は「彼は求めるところが高いから、なかなか自分に納得しない。抑えた、よかったくらいになれば逆に強くなるかも」とエースを分析しています。でも寺岡投手は「2年前も最初に途中から投げたとき良くなかった。ここのマウンドは慣れるまで時間かかるんですかねぇ」と苦笑いだったので、もう大丈夫。「次は、ええ記事を書いてもらえるような投球をします!」と誓った通り、準決勝で素晴らしいピッチングを見せます。
7回裏だけ交代したバッテリー。北面成也投手は先頭に死球を与えたことを「緊張はなかったです。でも初球にメチャクチャいい球がいって、“お、きょうはいけるな!”と思ったら…調子に乗りました(笑)」と振り返り、キャッチャーの玉木献人選手は「メチャクチャ緊張しました…」という感想。2人とも今大会では、この1イニングだけだったものの優勝セレモニーでは飛びっきりの笑顔でした。
“西武ドーム”の呪いは解けた?
最後に主将・林尚希選手と副主将・西口稔基選手。林選手は試合経過でも書いたように、4回で自身を除く先発全員安打となったことに当然気づいていたそうです。実は西川監督も6回に代打を送ろうかと思っていたとか。ところが7回、まさかの8人目で巡ってきた5打席目に2点タイムリー二塁打!「回ってきてよかった。打ててよかった」と繰り返します。
また2015年は4試合でノーヒットだったという西口選手。“西武ドームの呪い”とみんなに言われていたところ2安打2打点で「呪いは解けました!嬉しいです!」とニコニコ。入ったか?と思うくらいフェンスぎりぎりの当たりだった5回の左飛は「風に戻されました」と冷静なコメント。とにかく所沢は鬼門でなくなったわけで、何よりですね。
<掲載写真はすべて筆者撮影>