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クラブチャンピオンの座を奪い返した和歌山箕島球友会・準決勝編

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
次のバッターなのに、このカメラ目線。ことしの穴田選手には余裕が感じられました。

 阪神タイガースで3年間プレーした穴田真規選手(24)が、社会人の和歌山箕島球友会に入ったのは2014年です。この年の9月、予選を勝ち抜いてクラブチーム日本一を決める『全日本クラブ野球選手権』に出場するも、活躍できないまま2回戦で終了。翌2015年は自身初の優勝を経験しながら、昨年はまさかの予選敗退。でも今シーズンは見事、2年ぶりの優勝を味わいました。

 9月4日までメットライフドームで行われた『第42回全日本クラブ野球選手権大会』、和歌山箕島球友会のここまでの戦いは、こちらからご覧ください。

<★1回戦>

<★2回戦(準々決勝)>

 社会人野球ではごく普通のことですが、たとえ全国大会でもクラブ選手権の場合、同じ日に準決勝と決勝を行います。最終日の第1、第2試合が準決勝で、第3試合に決勝というパターン。1チームは2試合連続となるわけで、たとえば準決勝で先発したピッチャーが決勝でロングリリーフというのも珍しくありません。この“連続試合”に今回は箕島球友会が当たったのですが、先発投手が2人とも完投したため「中〇時間」という登板はなく終わりました。といっても準決勝の寺岡投手は中1日、決勝の和田投手は2日連続の先発。やはり社会人は大変です。

 またクラブ選手権は毎年、金曜日から月曜日までの4日間という大会なので、準決勝と決勝が行われるのは月曜日になります。よって、応援団も決勝なのに減少するという事態がないとは言えず…。それに今回の決勝が近畿勢同士の顔合わせだったこともあって、テレビでご覧になった方はスタンドが寂しく感じられたでしょうね。

 でも、優勝した和歌山箕島球友会は『第42回社会人野球日本選手権』に出場が決まりました。京セラドームには2年前同様、応援団が陣取って(おそらくチアも加わり)賑やかなスタンドになるはずです。みなさんも是非、お出かけください!

3戦連続の先制!1点差を守って勝利

穴田選手のファウルが、三塁の原井コーチを直撃したところ。
穴田選手のファウルが、三塁の原井コーチを直撃したところ。
6回に左中間への二塁打を放ち、いつものポーズです。
6回に左中間への二塁打を放ち、いつものポーズです。

 きょうは大会最終日の4日に行われた準決勝の詳細をご紹介しましょう。本当は決勝も同時に書く予定だったのですが、一度に掲載できる写真の枚数が決まっているため、両方合わせては無理でした。なので準決勝のみ先に出します。ただし準決勝終了後から決勝が始まるまでの間に取材はできなかったので、談話はほとんどありません。ヒーローインタビューと、閉会式後に少し聞いた話のみで、穴田選手の楽しいコメントも登場しないのです。ご了承ください。

 さて、準決勝の2試合目で関東地区代表・THINKフィットネス ゴールドジム ベースボールクラブと対戦した和歌山箕島球友会。ちなみに前日の準々決勝では、あでやかな衣装を身に着けたチアリーダーの方々がパフォーマンスを披露していて、帰り際にそれを見た箕島の選手たちが「あしたは、このチームとやりたいですねえ(笑)」と言っていたんですけど、さきほど書いたように月曜日だったからでしょうか。この日はチアなしのゴールドジムでした。

 では、試合の詳細です。前の2試合同様、1回に先制したものの畳み掛けるところまではいきません。その間を寺岡投手が素晴らしいピッチングでしのぎ、最後に失点しましたが1点差で逃げ切って決勝へ進んでいます。

9月4日 準決勝

和歌山箕島球友会-GOLD GYM BC

 箕 島 100 100 000 = 2

 GOLD  000 000 001 = 1

 

◆バッテリー

【箕島】○寺岡 / 水田

【GOLD】●北見 / 中川涼-八巻

◆二塁打 岸、穴田(箕島) 田中(GOLD)

1回1死二、三塁で二ゴロ。とにかく先制点を挙げてホッした笑顔の林選手です。
1回1死二、三塁で二ゴロ。とにかく先制点を挙げてホッした笑顔の林選手です。
4回は岸選手の二塁打(左)などで2死三塁、平井選手がタイムリー(右)で2点目!
4回は岸選手の二塁打(左)などで2死三塁、平井選手がタイムリー(右)で2点目!

※個人成績は箕島のみ

◆打撃 (打-安-点/振-球)

1]右:夏見  (4-1-0 / 0-0)

2]中二:岸田 (4-0-0 / 0-0)

3]一:岸   (3-1-0 / 0-0)

4]指:林   (3-0-1 / 1-0)

〃打指:渡部 (1-0-0 / 0-0)

5]三:穴田  (4-1-0 / 1-0)

6]左:平井  (4-1-1 / 1-0)

〃左:木村  (0-0-0 / 0-0)

7]捕:水田  (3-0-0 / 0-0)

8]遊:西口  (3-2-0 / 0-0)

9]二:冨樫  (2-0-0 / 2-0)

〃中:森下  (0-0-0 / 0-0)

◆投手 回 球 (安-振-球/失-自)

寺岡 9回120球 (4-12-1/1-1)

<試合経過>※継承略

生還した岸選手(左)と4回が終わって戻る平井選手(右)、ともに笑顔です。
生還した岸選手(左)と4回が終わって戻る平井選手(右)、ともに笑顔です。
この日2安打の西口選手、守備でも魅せました。
この日2安打の西口選手、守備でも魅せました。
8回はライトの夏見選手も美技を披露!
8回はライトの夏見選手も美技を披露!

 先に箕島の攻撃から。1回は先頭の夏見がバントヒットで出塁!岸田は二ゴロ(野選)で一、二塁となり、岸が送って1死二、三塁。林の二ゴロの間に1点を先取しました。4回は先頭の岸が左翼線に運ぶ二塁打、暴投で三塁へ進み2死後に平井が右前タイムリー!以降は5回に先頭の西口が右前打し、犠打や暴投で2死三塁とするも無得点。6回は2死から穴田が左中間への二塁打、7回は西口が左前打しましたが、追加点なし。8回、9回はあっさりと三者凡退です。

 でも、先発した寺岡が3回までパーフェクトピッチング。4回は2死後に、セカンドの送球エラーで初めて走者を二塁に置いたものの、そこから5回にかけて4者連続三振!5回までまだノーヒットが続きます。6回に先頭の1番・鹿子島を中前打で出し、四球も与えますが無失点。7回は1安打で、最後にショートへ飛んだ打球を西口が捕り、倒れたまま二塁へ投げて封殺!8回は連続三振などで三者凡退でした。

 2対0で迎えた9回、1死を取ってから左前打と遊ゴロで2死二塁。続く5番・田中の右中間二塁打で1点を失い、ここで監督がマウンドへ。次の左打者を右飛に打ち取って試合終了です。

一番しんどかったのは準決勝、と監督

9回に1点返され、西川監督(右)がマウンドへ。
9回に1点返され、西川監督(右)がマウンドへ。
試合後の勝利監督インタビュー。
試合後の勝利監督インタビュー。

 試合後のインタビューで、西川忠宏監督は1点差での勝利に「勝つという気持ちが出ていましたので、そんなに心配はなかったです。寺岡はうちのエースですから信頼していますし、寺岡と心中するつもりでした」とコメントしています。9回に行ったマウンドでは「焦るな、深呼吸して落ち着いて」と寺岡投手に伝えたそうです。

 

 なお閉会式が終わってから伺った総括では「準決勝が一番イヤでしたね。寺岡でいこうと決めていたけど、相手は地元のチームで応援も多いし。決勝の大和高田には最近負けていないので、まだ少し気持ちは楽だった。でも準決勝は本当にしんどかった」と西川監督。

 次の記事で詳しくご紹介しますが、0対0のまま延長に突入した決勝よりも、この準決勝の方が嫌な感じがしたということなんですね。中盤の好機に追加点を奪えなかったことも、さらに疲労感を増幅させたかもしれません。

打者10人から12奪三振!

 次に、2年前の最高殊勲選手でもある寺岡大輝投手。1回戦は7回コールド勝ちで、寺岡投手は6イニングで交代しました。1日おいて準決勝での先発は5回までノーヒットという素晴らしいピッチング!しかも6回に初ヒットを打たれた鹿子島選手以外の、先発全員とプラス代打2人の計10人から12個の三振を奪って、4安打1失点完投勝利です。

4安打12三振1四球で1失点完投勝利の寺岡投手。
4安打12三振1四球で1失点完投勝利の寺岡投手。

 本人は「まず勝ったことが一番うれしい。ここで勝たないと決勝へ行けないので、何としても勝って決勝につなげたかった」と言っています。完封は意識したかとの質問には「頭をよぎったけど、相手より1点少なく抑える気持ちで次のバッターのことだけ考えました。2点取ってもらっていたので、1点取られてもまだ勝てると思いながら」と回答。

 投球内容については「生命線であるストレートが走っていたので変化球が生きるという、自分の持ち味が出せた」と振り返り、決勝に向け「監督を胴上げしたい。優勝しかない。あと1試合、チーム一丸となって勝ち取ります!」と、場合によっては自分も投げるんだという覚悟も込めたコメントでした。

完投勝利を挙げた寺岡投手のインタビューです。
完投勝利を挙げた寺岡投手のインタビューです。
これは閉会式後の、彼女との2ショット。すみません、寺岡投手は目を閉じていますね。
これは閉会式後の、彼女との2ショット。すみません、寺岡投手は目を閉じていますね。

 なお優勝が決まったあとに聞いた話では「1回戦があんなピッチングやったんで、いい記事を書いてもらえるようメッチャ頑張りました!リードを守ることしか考えていなかったです」とニコニコ。そのあと続けて「きょう(準決勝)の調子やったら、ノーヒットノーランができてもおかしくないくらい良かったです。ただ、ここまで来ているチームなので油断はできないなと。1本(ヒット)を打たれて我に返りました」と笑います。

 でも公約通り、最少失点に抑えて自分の役目をしっかり果たした寺岡投手。観戦していた彼女に「かっこよかった!」と言われると、即座に「いつでもですけど」と返し、2人でニコニコ。…お邪魔しました。これからも仲良くしてくださいね。

<掲載写真はすべて筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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