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元阪神・守屋功輝投手(日本製鉄鹿島)と北條史也選手(三菱重工West)の“対決”は秋に持ち越し

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
5月にオープン戦で久々の再会を果たした、元阪神・守屋投手(左)と北條選手(右)。

 社会人野球の夏を彩る『第95回都市対抗野球大会』は今月19日から東京ドームで行われます。開幕まであと10日となりました。

 元阪神タイガースの北條史也選手(29)が所属する三菱重工West(神戸市・高砂市)は、近畿地区第3代表として出場することが決まっていて、23日の初戦で当たる王子(春日井市)には光星学院(現八戸学院光星)のチームメイト・大杉諒暢内野手がいると、楽しみな様子です。

 しかし三菱重工Westは、秋に京セラドーム大阪で開催される『第49回社会人野球日本選手権大会』の出場権をまだ手にしていません。ここまでの対象JABA大会を、元阪神の守屋功輝投手(30)が昨年から所属している日本製鉄鹿島も合わせて振り返ってみましょう。

◆三菱重工WestのJABA大会

 4月12日〜16日の『第66回JABA岡山大会』が三菱重工Westの今季最初の大会です。まず予選リーグ・四国銀行戦は19安打を放ち16対2で7回コールド勝ち。6番セカンドでフル出場した北條選手も2打数2安打1打点(1回に左犠飛)、さらに2四球で貢献しました。

 この試合の6回、四球で出塁した北條選手が一塁のランナーコーチをしていた笹治健汰選手に何かを確認していたので、どういう状況だったのか尋ねると「ああ、あれは」と思い出し笑い。

 「盗塁って、点差が開いていても行っていいのか?って。プロやったらあかんというか、走ったら“はあ?”みたいになるし。だから聞いたんですよ、点差がこんなにあっても走っていいの?と。そしたら“いいですよ”って」。なるほど、そういうことだったんですね。

JABA岡山大会の四国銀行戦、12対2の6回に四球で出塁した際、笹治選手(右)に「盗塁していいの?」と聞く北條選手(左)。
JABA岡山大会の四国銀行戦、12対2の6回に四球で出塁した際、笹治選手(右)に「盗塁していいの?」と聞く北條選手(左)。

 チームにとって最高の滑り出しだったはずが、2日後の西部ガス戦は散発5安打で2対0の完封負け。でも翌日のJR西日本戦は4対1で勝利。この試合の北條選手は7回に先頭で左二塁打を放ち3打数1安打。しかし守備で左わき腹を痛め、8回からベンチに下がったようです。

 結果は予選リーグ2勝1敗の成績ですが、同グループの西部ガスが3戦全勝だったため、三菱重工Westはここで敗退となりました。ちなみに決勝トーナメントへ進んだ西部ガスは、準決勝も決勝も延長の末にサヨナラ勝ちで優勝。日本選手権出場を決めています。

 次は4月23日から、わかさスタジアム京都で行われた『わかさ生活 第74回JABA京都大会』。この大会3連覇中の三菱重工Westなのに、3試合とも完封負けで予選リーグ敗退。北條選手も、岡山大会中に痛めた左わき腹の影響で出場していません。悔しかったでしょうね。

JABA岡山大会の初戦(対四国銀行)、1回に犠飛で打点を挙げた北條選手は、写真の3回にも左前打でチャンスを拡大します。
JABA岡山大会の初戦(対四国銀行)、1回に犠飛で打点を挙げた北條選手は、写真の3回にも左前打でチャンスを拡大します。

◆日本製鉄鹿島のJABA大会

 一方、日本製鉄鹿島は、早々に日本選手権出場を決めました。ことし最初のJABA大会である『第78回JABA東京スポニチ大会』は3月9日から行われ、守屋投手は2試合目・セガサミー戦の9回1イニングを0点に抑え、4対0の勝利に貢献!しかし、チームは予選リーグ1勝2敗で決勝トーナメント進出を逃しています。

 次は4月13日からの『第46回JABA日立市長杯選抜野球大会』で、ジェイプロジェクトに7対0、続くHonda戦も6対1と連勝。このHonda戦で守屋投手は先発の諸見里俊投手をリリーフし、6回から4イニングを投げ切りました。しかも無安打、無四球、奪三振4のパーフェクトピッチング!

 3試合目の日本生命には1対2で惜敗したものの予選リーグ3位で決勝トーナメントに進出した日本製鉄鹿島。準決勝はJR東海に7対0の7回コールド勝ち、ついで決勝は三菱重工Eastを4対1で破って日立市長杯2連覇!日本選手権に3大会連続12回目の出場決定です。

ヒジの不安なし!

 この時に聞いた守屋投手のコメントをご紹介します。昨年悩まされたヒジの具合は「いいですね。だいぶよくなってきました」とのこと。結局は手術もせず?「はい、何もしていないです。でも治療は、自分で器具を持っているんで電気を当てたりとか、治療院に通ったりしています」

 不安な状況はなかった?「寒い時はやっぱりちょっと動きが悪いので、大丈夫かな?と思っていたんですけど、2月に沖縄の宮古島へキャンプで行って、めちゃくちゃ暖かかったんで、そこでしっかり投げられた。それで、ああ暖かかったら大丈夫だなと不安がなくなりました」

 とはいえ戻ってきた3月はかなりの寒さ。そんな中で行われたJABA東京スポニチ大会を経て、そのあとオープン戦にも投げ「暖かくなって、もう完全に不安はなくなった」と言います。

 じゃあ、昨年いつも野球部の清水茂雄部長が右ヒジに描いてくださっていた“ネズミ退治のネコ”はもうなし?「いえ、今も描いてもらっています(笑)。これはルーティンです!」。そのおかげも?「いや、それはありますね」。清水部長も嬉しいでしょう。

 そして日立市長杯では4イニングをパーフェクト!「はい、めちゃくちゃよかったです!」。かなり貢献したなって感じ?「まあまあ多少は…」。おっと控えめな言葉(笑)。「控えめです、はい(笑)」

 去年は悔しかったですもんね。「そうなんですよ。ちょっと、やっとです。やっと、ちょっとだけ優勝に貢献できたかなって感じです」。やっぱり嬉しいでしょう?「はい、大阪に帰れるということで」。京セラドーム、楽しみにしています。

 ところで中島彰一監督が昨年、守屋くんにもっと頑張ってもらわないと!とおっしゃっていたんですけど、ことしは何か?「4月に明治安田生命と対戦して打たれたんですよ。で、次の日に『何をしとんねん。お前がそんなピッチングしたら、あかんやろ』と」

 おお、喝!ですね。「日立市長杯のHonda戦の後は『やっと、やっとやな』みたいな話はされました。去年は1年間ずっと悪くて。本当に(11月の)日本選手権くらいからですよ、よくなったのが」。その分を今季は取り返して、中島監督を笑顔にしてあげたいですね。

茨城県鹿嶋市にある日本製鉄鹿島のグラウンド。
茨城県鹿嶋市にある日本製鉄鹿島のグラウンド。

【鹿島 vs West・その1】

 さて、3連覇しているJABA京都大会を落とした三菱重工Westと、昨年と同じ日立市長杯で日本選手権出場を決めた日本製鉄鹿島。明暗が分かれた4月でした。このあと実は6月の都市対抗野球の2次予選で、また明暗くっきりとなる2チーム…。その前の5月にオープン戦で顔を合わせています。

 三菱重工Westが関東遠征中の5月10日に、守屋投手と北條選手は日本製鉄鹿島のグランドで久々に再会しました。私も初めて鹿島グラウンドへお邪魔したんですけど、東京から高速バスで2時間!なかなかの旅行気分でしたねえ。

 なお守屋投手は、ちょうど前日に行われた公式戦『JABA関東選抜リーグ戦』のJPアセット証券戦でゲームに入っていたため、この日は登板予定なし。北條選手との直接対決は持ち越しです。

鹿島グラウンドの一塁側ベンチです。右の社名とともに左には「KASHIMA BLUE WINGS」のチーム名。
鹿島グラウンドの一塁側ベンチです。右の社名とともに左には「KASHIMA BLUE WINGS」のチーム名。

◆オープン戦

 5月10日 (日本製鉄鹿島グラウンド)

日本製鉄鹿島-三菱重工West

  West 000 000 010 = 1

  鹿 島 400 700 00X = 11

 ▼バッテリー

  [W] 鷲尾-辻垣-藤居-中川 / 石井‐拾尾

  [鹿] 土屋-伊藤‐金城 / 松田

 ▼本塁打 W:西岡①

      鹿:池間①、松田④、冨田①

 ▼二塁打 鹿:樫村、生田目

 日本製鉄鹿島は満塁を含む3本塁打など13安打で11点、三菱重工Westは7回まで散発3安打で、8回にソロホームランで1点返しただけ。北條選手は2番セカンドで先発出場、三振、右飛、四球の3打席で交代しています。

 ちなみに三菱重工Westは関東遠征の3試合で、東京ガスに0対7、日本製鉄鹿島に1対11、東芝に2対4と0勝3敗…。打てなかった時期ですね。

日本製鉄鹿島硬式野球部のクラブハウスです。2回でランチタイム中。
日本製鉄鹿島硬式野球部のクラブハウスです。2回でランチタイム中。

プロ注目の鹿島・樫村内野手

 ここで、日本製鉄鹿島・3年目の樫村昌樹選手(24)についてご紹介します。守屋投手が「彼のおかげで日立市長杯の準決勝は勝ったようなもの。7打点全部が樫村ですよ。3打席連続ホームランを打って、さらにタイムリー内野安打!決勝も、彼が打点を稼いだ」と絶賛していました。その試合はこれです。

第46回JABA日立市長杯選抜野球大会

 (4月17日 日立市民球場)

準決勝 日本製鉄鹿島-JR東海

  鹿島 220 201 0 = 7

  東海 000 000 0 = 0

   ※7回コールド

 ▼本塁打 鹿:樫村3

 1回、2回、4回の3打席とも2ランで、6回の1点も樫村選手のタイムリー内野安打。4打数4安打7打点で、この日立市長杯選抜大会の最高殊勲選手賞首位打者賞(17打数10安打、打率.588)を受賞しました。なお敢闘賞は、準優勝の三菱重工East・武田健吾外野手(元オリックス、中日)です。

三菱重工Westとのオープン戦では2回にタイムリーを放った樫村選手。
三菱重工Westとのオープン戦では2回にタイムリーを放った樫村選手。

 そんな樫村選手本人にも話を聞けました。5月10日の時点で、公式戦とオープン戦を合わせてのホームラン数が15本!去年は全部で7本くらいだったそうなので、すごいですね。何が変わったんでしょうか?

「去年の冬、ウインターリーグに行かせていただいて、そこで自分が課題を克服しようと打撃フォームをちょっと改善して、そこからです」。NPB選抜の2チームも参加した台湾のウインターリーグで、樫村選手は社会人チームの選抜メンバーでした。

 改善点とは?「そうですね。去年はパワーがついたと思っていたんですけど、やっぱりミートする確率が減ってしまって。その分、打ち損じが多かったっていうのがあったので。ことしは無駄をなくして、どっちかというとミートを意識するぐらいにし始めたんです」

 なるほど、力任せに打つのではなく、ということですね。収穫がかなり多かった?「そうですね。自分の中では本当に収穫が多くて、その課題を(帰ってきてから)冬場で取り組んだ結果が、まあいい感じに繋がっているかと思います」

 聞くところによると、同じ右打者のヤマハの網谷圭将外野手(26)に、とても影響を受けたとか。網谷選手はウインターリーグの成績が61打席27安打、打率.443。今季の公式戦も活躍しているようです。いろいろ教わって、いい刺激ももらってきたんでしょうね。

 この日のオープン戦でも樫村選手を見にNPBのスカウトが来られていたんですけど、耳に入ってますか?「あ、はい。話は聞かせていただいています」。ちょっと意識をするかもしれないけど。「まあそうですね。でも自分のプレーをしっかりできればなと思います」

 この話を聞いた頃からホームランがほとんど出なくなってしまった樫村選手。やはり相手チームの攻め方が変わってきたみたいですね。でもプロスカウトの方々は、変わりなく公式戦やオープン戦を問わず連日、視察に来られているとのこと。楽しみな選手です。

今度は京セラドームの日本選手権で、樫村選手のホームランを見たいですね!
今度は京セラドームの日本選手権で、樫村選手のホームランを見たいですね!

【鹿島・都市対抗予選】

 このあと5月後半に行われた都市対抗野球の地区予選。まず問題ないと思っていた日本製鉄鹿島がなんと…出場を逃してしまったのです。前出の樫村選手だけでなく「チームのホームラン数もエグい。毎週出てるんちゃうか、ってくらい」と守屋投手が語る打線だけに、本当にビックリしました。

 まず茨城県大会(1次予選)は準決勝からの出場で、準決勝は延長10回サヨナラ勝ち、決勝は延長12回で惜敗です。第2代表で北関東大会(2次予選)へ進出。2次予選なみの激戦に「すごい試合でした。北関東では絶対やり返します!」と守屋投手。

 そして6月3日に群馬県太田市で始まった北関東大会、1回戦は日立製作所、日本製鉄鹿島、SUBARU、エイジェックが順当に勝ち上がったものの、準決勝で日本製鉄鹿島がSUBARUに完封負け。それも8回までノーヒットに抑えながら9回に2点を取られての敗戦でした。

 さらに日立製作所も準決勝でエイジェックにサヨナラ負けするという、なかなか波乱含みの展開。なお同じ日に、わかさスタジアム京都で近畿地区2次予選を戦っていた三菱重工Westは無事、第3代表として都市対抗出場を決めたのです。

 この前日「北條が打って勝ちますよ。東京ドームで会う約束をしたので大丈夫です」と守屋投手が太鼓判を押してくれた通り、北條選手も2点タイムリー二塁打で勝利に貢献!この模様は前回の記事でご覧ください。

元阪神・北條史也選手(三菱重工West) 都市対抗出場に続いて目指す“もう1つのドーム”

日本製鉄鹿島のキャプテン・生田目忍選手。ことしのチームスローガンを記した横断幕がうしろに見えます。
日本製鉄鹿島のキャプテン・生田目忍選手。ことしのチームスローガンを記した横断幕がうしろに見えます。

波乱の北関東大会

 北関東大会の話に戻ります。第2代表決定戦に回った日本製鉄鹿島は、翌6月7日から負ければ終わりの3連戦へ。私は「最初の2回戦に勝ち、次の準決勝で当たるであろう日立製作所が難関。そこを抜ければ決勝を残すのみ」と考えていた、その2回戦でまた波乱が起きました。

 6月7日、まず第1試合で日立製作所が茨城トヨペットに敗れます。第2試合で日本製鉄鹿島は茨城日産に対し、8回まで2対1とリードしていながら9回裏にホームランで追いつかれ、さらにタイムリーでサヨナラ負け…。ここで日本製鉄鹿島の夏が終わったわけです。

 最終的に、エイジェック(小山市・栃木市)がこの大会初優勝を飾り、第1代表として3年ぶり2度目の都市対抗出場。第2代表はSUBARU(太田市)です。なお日立製作所と日本製鉄鹿島が揃って出場を逃すのは、2014年(第85回大会)以来10年ぶりのこと。本当に大荒れの北関東でした。

守屋投手は「純粋に悔しいです。一番悔しいのは、去年もことしも(2次予選の)北関東大会で1試合も投げられなかったことです」と振り返っています。

 「玉置さんとも電話で話をさせてもらいましたけど、負けた2試合がどちらも決着がついたのが9回で、オープン戦ではピッチャー陣の中で一番多く9回を投げさせてもらっているのに、大事な試合で投げられなかったのは本当に悔しいです」

 そのあと続けて「11月までの間に、監督やコーチ、チームメイトみんなからの信頼を勝ち取って、日本選手権では絶対に大暴れしてやります!」と決意を新たにしていました。

 なお日本製鉄鹿島から樫村選手がエイジェック(小山市・栃木市)の、また佐田健介投手と生田目選手がSUBARU(太田市)の補強選手として、都市対抗野球大会に出場します!来年は自チームのユニホームで出ることを誓いながら。しっかりアピールしてきてほしいですね。ぜひご注目ください。

5月のオープン戦では残念ながら登板がなく、守屋投手の投げている写真を載せられなくて申し訳ないです。
5月のオープン戦では残念ながら登板がなく、守屋投手の投げている写真を載せられなくて申し訳ないです。

【JABA北海道大会】

 それぞれの都市対抗予選から約10日後の6月18日、札幌市円山球場と岩見沢市野球場で『第65回JABA北海道大会』が始まりました。

 この大会には、何とか優勝して日本選手権の切符がほしい三菱重工West、既に出場を決めている日本製鉄鹿島、また都市対抗の北関東地区第1代表となったエイジェックも参戦。エイジェックには元阪神の石井将希投手(28)と、今大会はメンバーに入っていませんが高野圭佑投手(32)もいます。

 まず予選リーグと準決勝の結果をご覧ください。

◆日本製鉄鹿島

 6/18 ○ 9-7 JR北海道硬式野球クラブ

 6/19 ○13-0 テイ・エステック ※7回

 6/21 ○ 5-4 トヨタ自動車東日本

 守屋投手は最初のJR北海道硬式野球クラブ戦で投げています。9対7とリードした9回に登板し、四球、遊ゴロ併殺打、空振り三振と3人で片付けて無失点でした。

◆三菱重工West

 6/18 ○ 3-1 航空自衛隊千歳

 6/20 ○ 9-6 西濃運輸

 6/21 ○ 6-3 茨城トヨペット

 北條選手は1試合目に3番セカンドでフル出場。2対1で迎えた7回無死一、三塁でレフトへのタイムリー二塁打を放ち、3打数1安打1打点です。

 2試合目も3番セカンドでフル出場した北條選手。3対3の5回、朝日選手の二塁打に続いて右前打し、のちに山下航汰選手のタイムリーで生還します。これで6対3となるも、その裏に3ランでまた同点。しかし6回無死一、二塁で北條選手が2点タイムリー!さらに坂之下晴人選手のタイムリーも出て3点勝ち越し、シーソーゲームに決着がつきました。

 3試合目に北條選手は出場していません。

 これで、両チームとも3勝負けなしで決勝トーナメント進出が決定!なおエイジェックは1勝2敗で予選敗退でした。3試合目の北海道ガス戦で石井投手が先発。1回を投げて1安打3四球1三振、犠飛で1点を失っています。

決勝トーナメント・準優勝

 予選リーグ1位突破だった三菱重工Westは4位の大阪ガスと準決勝を戦うことが決まり、日本製鉄鹿島は2位で、3位の北海道ガスとの顔合わせ。翌6月22日に札幌市円山球場で行われた準決勝の結果はこちらです。

◆準決勝 6/22 (札幌円山)

  三菱重工West ○ 7-0 大阪ガス ※7回

  日本製鉄鹿島 ○ 3-1 北海道ガス

 三菱重工Westは決勝トーナメントから北條選手を“4番サード”で起用。準決勝は、打者一巡で一挙5点を取った2回に、北條選手も左前タイムリー!他に2四球と右飛で2打数1安打1打点でした。日本製鉄鹿島は2本のホームランなどで勝利。守屋投手は登板していません。

 守屋投手いわく「決勝トーナメント進出が決まった時点で北條に連絡して、その時には三菱重工Westも予選突破が決まっていたので、やるなら準決勝より決勝でやりたいなぁ!という話はしていましたね」とのこと。

 北條選手は「守屋さんに、勝たせてくださいと言うときました」と笑い、それを受けた守屋投手は「お前と対戦したら全力で抑えたるわ!って返しておきました」という冗談でのやり取りがあったものの(いや北條選手は本気だったかも?)、やるとなったら互いに真剣勝負です。

オープン戦の試合前、三菱重工Westが到着するとグラウンドで北條選手を出迎えた守屋投手。ちょっと嬉しそう?
オープン戦の試合前、三菱重工Westが到着するとグラウンドで北條選手を出迎えた守屋投手。ちょっと嬉しそう?

こちらはかなり嬉しそうな北條選手。このあと2人で何やら話し込んでいましたよ。
こちらはかなり嬉しそうな北條選手。このあと2人で何やら話し込んでいましたよ。

【鹿島 vs West・その2】

JABA北海道大会 決勝

 6/22 (札幌円山)

三菱重工West‐日本製鉄鹿島

  West 010 030 000 = 4

  鹿 島 041 000 00X = 5

▼バッテリー

 [W] 鷲尾-西-藤居-川上 / 石井

 [鹿] 金城-塙-土屋-守屋 / 松田

▼本塁打

 鹿:松田2ラン(鷲尾)、ソロ(西)

 試合は2回に動きました。まず三菱重工Westが1番・吉田元輝選手のタイムリーで1点先取、しかしその裏に日本製鉄鹿島は7番・松田彪瑠選手の逆転2ランと3番・樫村選手、4番・生田目忍選手の連続タイムリーで4対1とし、3回には松田選手の2打席連続ホームランで1点追加。

 5回に三菱重工Westは4番・北條選手から4連打で1点(山下選手のタイムリー)、さらに暴投と押し出し四球もあり、この回3点を返します。5回からは日本製鉄鹿島打線を、藤居海斗投手と川上雄也投手が散発3安打で0点に抑えますが、三菱重工Westの方もなかなか追いつけません。

 9回は日本製鉄鹿島・守屋投手が登板。北條選手は8回の最終打者だったため、惜しくもすれ違いとなりました。守屋投手は先頭に内野安打と山下選手に死球を与えるなど2死一、三塁としたものの、最後は左飛に打ち取って試合終了です。

 優勝した日本製鉄鹿島から今大会の最高殊勲選手賞に、4試合で3本塁打を記録した松田選手、敢闘賞に2試合投げて計9イニングを3安打無失点(防御率0.00)、奪三振も13個とトップだったルーキー・土屋大和投手が選ばれました。

 日本製鉄鹿島が今大会16大会ぶり2回目の優勝!既に日立市長杯の優勝で日本選手権出場は決まってるため、関東地区の最終予選で出場できる枠が1つ増えて4チームから5チームになります。準優勝の三菱重工Westが繰り上がる、なんてことはないんですね。残念。

JABA北海道大会のMVPに選ばれた日本製鉄鹿島・松田選手。写真は5月のオープン戦で満塁ホームランを打ったところです。
JABA北海道大会のMVPに選ばれた日本製鉄鹿島・松田選手。写真は5月のオープン戦で満塁ホームランを打ったところです。

同じくJABA北海道大会で敢闘賞を受賞した日本製鉄鹿島のルーキー・土屋大和投手です。写真は5月のオープン戦。
同じくJABA北海道大会で敢闘賞を受賞した日本製鉄鹿島のルーキー・土屋大和投手です。写真は5月のオープン戦。

敗戦にも今後への収穫あり

 まず三菱重工West・北條選手にJABA北海道大会を振り返っての感想を聞いています。なかなか、いい試合も多かったのでは?「いい試合が多かったですね。西濃運輸戦は“打ち勝った”って感じの試合だったし、鹿島戦も序盤に点を取られたけど追い上げられたのでよかったかなと思います」

 でもやっぱり悔しいでしょう?「めちゃくちゃ悔しいです。日本選手権に出られるように頑張ります」。守屋投手との直接対決、惜しかったんですよね。やりたかった?「対戦したかったですね。京セラで対戦できたら、めちゃくちゃ集中して、打ちたいと思います」

 何が何でも9月の最終予選で代表になって、京セラドームへ行かないと!ところで4番は社会人初?サードも?「社会人に入って初めてです。特に何も考えずに打席に入っていました。サードの感想は特にないです」

 前回の記事でも書きましたが、北條選手が「絶対プロに行ってほしい」と話している2年目の朝日晴人選手(23)は北條選手と二遊間、三遊間の守備位置はもちろん、打順も朝日選手が2番で北條選手が3番、朝日選手が3番で北條選手が4番と並ぶことが多い2人です。

 そんな朝日選手が、北海道大会の敢闘賞と首位打者賞をダブル受賞!決勝戦前には打率が6割もあり、最終的には5試合で19打数11安打、打率.579という数字です。北條選手にその件を聞くと「朝日、よく打ちましたね!あんなに打ってみたい!」という感想でした。

JABA北海道大会で敢闘賞と首位打者賞を受賞した朝日選手。都市対抗近畿地区2次予選の写真です。
JABA北海道大会で敢闘賞と首位打者賞を受賞した朝日選手。都市対抗近畿地区2次予選の写真です。

 ここで、北海道大会でも3試合に登板した元オリックスの辻垣高良投手(22)のことも少し書いておきます。彼もことしから三菱重工Westに加わりました。北條選手とはウエスタン・リーグで対戦があったので、印象を聞いてみたところ…“いや”の連発です。

 「そんなに長打とかホームランバッターの印象じゃないんですけど、“野球”をしてくる。野球勘がメッチャすごいんで、嫌な場面に逆方向やセンターへ打たれたり、間に落としてきたり。戦っていて、なんかいやでしたね。いやなバッターでしたね。いやーなヤツでした(笑)」。

 ある試合で、1死満塁のピンチを作りながら2者連続三振で無失点だった辻垣投手。しかも最後に「おーりゃあ!」という雄叫びで三振を奪い、それが155キロを表示したもんでスタンドも大騒ぎでしたが、本人は「いやいや、それはないです!144キロです。155はないです(笑)」と即座に訂正しています。

 「自分は変化球で押さえるタイプで、プロでも変化球主体だったんですけど、この冬はずっと真っすぐを課題に頑張った。きょうも最後はスライダーのサインに首を振って真っすぐで勝負しようと。それが結果として空振り三振につながったから、ちょっと喜びもありましたね」

 都市対抗予選の際、ちょうど北條選手が近くにいたので、辻垣投手に「彼はいやなバッターだったんですよね?」と言ったら「いやでした」と顔面でもアピール。それに対して北條選手は「僕、好きでしたよ。なんか“合う”というか」とニヤニヤ。辻垣投手は「三振もあるんですけど…」と言いながら苦笑い。同じチームで何よりです。

元オリックスの三菱重工West・辻垣投手。1球ごとにマウンドで上げる雄叫びが印象に残ります。
元オリックスの三菱重工West・辻垣投手。1球ごとにマウンドで上げる雄叫びが印象に残ります。

さらにレベルアップして大阪へ!

 最後は、日本製鉄鹿島・守屋投手です。都市対抗出場を逃してしまった直後の北海道大会、どういう気持ちで臨んだのでしょうか?「今回の北関東予選で、まさかの敗戦をしてしまって、みんな相当落ち込んでいましたけど、鹿島はこんなもんじゃないし、自分たちの実力を見せつけるためにも北海道大会は絶対に優勝しよう!という意気込みでした」

 もうすっかり切り替えができていた?「終わったことは返ってこないし、選手権もこの先あるんで、前を向いてもっともっと強くなろう!という気持ちで試合に臨んでいたので、切り替えはできていたと思います」

 北條選手とは希望通り決勝での顔合わせ。直接対決は惜しくもかなわなかったですね。しかも、もう日本選手権出場を決めているのに、また優勝しちゃいましたよ。「勝負事なので絶対に負けたくないですし、優勝しか見ていなかったので、きっちりできてよかったです」

 京セラドームで対戦するためにも日本選手権に出てきてほしい?「来てほしいというか、来るでしょう(笑)。もちろん本戦で優勝を狙っているので、その道中で当たる相手やと思いますし、今度こそアイツと直接対決したいです」。そして全力で抑えてやるんですね。

冒頭と同じ、5月10日のオープン戦でのツーショット。守屋投手(右)と北條選手(左)です。今度は守屋投手が視線を外していますね。
冒頭と同じ、5月10日のオープン戦でのツーショット。守屋投手(右)と北條選手(左)です。今度は守屋投手が視線を外していますね。

 では、想定外に長くなってしまう夏と、その先の秋に向けてコメントをお願いします。

 「鹿島のこの戦力とメンバーで、都市対抗に出られないのはめちゃくちゃ悔しいですけど、この夏に自分たちの野球をしっかり見つめ直していきます。お世話になっている会社に出社しながら、そして出勤中は一生懸命与えられた仕事をこなしながら」

 「職場の方々と関わる時間は例年より増えると思うので、野球部を応援してくださるファンをこの期間に増やしつつ、自分たちの課題を潰す練習をさせていただける感謝の気持ちを忘れず、現段階のチーム戦力よりも一段も二段もレベルアップして、京セラに乗り込みたいと思っています」

 守屋投手の決意を受け、北條選手もまたさらに奮起することでしょう。

 大阪・秋の陣、京セラドームの舞台でぜひ両チームを、守屋vs北條の直接対決を見たいですね。そのために三菱重工Westは9月の近畿地区最終予選突破を!ちなみに、近畿地区のチームは対象のJABA大会で1つも優勝していないので、増枠どころか全チームがここに賭けてきます。大変です。それでも、負けられませんね!

   <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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