日本選手権出場決定の三菱重工West・北條史也選手 灼熱の鳴尾浜で心身を鍛えられたおかげも?
社会人野球の目玉は夏に東京ドームで行われる都市対抗野球と、秋に京セラドーム大阪である日本選手権です。ことしの『第49回社会人野球日本選手権大会』は10月29日から11月9日に開催と、正式に発表されました。
出場するのは都市対抗優勝の三菱重工East、クラブ選手権優勝のマツゲン箕島硬式野球部、そして対象のJABA11大会で優勝したHonda、NTT東日本、JR西日本、TDK、西部ガス、日本製鉄鹿島、東芝、日本製鉄東海REX、トヨタ自動車、ヤマハの12チーム。そこに、各地区最終予選の代表チームが加わります。
既に決まっている地区代表は、東北(日本製紙石巻)、北信越(バイタルネット)、関東(日立製作所、明治安田生命、東京ガス、ENEOS、JR東日本)、東海(三菱自動車岡崎、JR東海、王子)、近畿(日本新薬、NTT西日本、三菱重工West、ミキハウス)、中国(JFE西日本、三菱自動車倉敷)、九州(JR九州、Honda熊本)の18チーム。残るは北海道と四国の2チームで、今月中に出場32チームがすべて出揃うでしょう。
三菱重工Westとして初の最終予選
さて、元阪神の北條史也選手(30)が所属する三菱重工Westは4月初めのJABA岡山大会で予選敗退。昨年まで3連覇中だった4月末のJABA京都大会も突破できず。ラストである6月のJABA北海道大会は決勝トーナメント決勝まで進みながら、日本製鉄鹿島に敗れて準優勝。これまた出場権を獲得できませんでした。
日本製鉄鹿島は4月のJABA日立市長杯選抜大会で優勝して早々に出場が決まっているのに、また勝っちゃったんですよね。対象大会で2度目の優勝だから準優勝チームが繰り上げられる…なんてことはなく、その恩恵を受けたのは最終予選で代表枠が1つ増えた関東地区です。
よって9月の近畿地区最終予選に賭けるしかなくなった三菱重工Westですが、無事に7大会連続28回目の日本選手権大会出場を決めました!日本製鉄鹿島・守屋功輝投手(30)との約束を果たせて何より。京セラドームで対戦を見られたら、なお嬉しいですね。
では、わかさスタジアム京都で行われた三菱重工Westの近畿地区最終予選・代表決定戦の2試合を振り返ります。
◆まさに死闘!強かったNTT西日本
その前に、9月4日の初戦(2回戦)はSUNホールディングスWESTに6対1で、12日の3回戦はパナソニックに2対1で勝っています。どちらも竹田祐投手が先発して、2回戦は5安打1失点の完投!3回戦は7回2安打無失点でした。
これで18日の代表決定戦へ進んだ三菱重工West。相手は北條選手が常々「めっちゃ強い」と警戒するNTT西日本です。
◇9月18日 代表決定戦
三菱重工West-NTT西日本
三菱 001 000 000 023 = 6
NTT 000 000 010 024x= 7
▼バッテリー
[三] 鮫島-辻垣-川上-竹田 / 石井
[N] 伊原-田村-濱﨑-大江-松井 / 辻本-小泉
▼二塁打 [N] 酒井、藤井、吉川
先取点は三菱重工Westでした。3回に根来祥汰選手の左前打と山下航汰選手の死球などで2死一、二塁となり、3番・北條選手が中前タイムリー!先発の鮫島優樹投手は4回まで2安打無失点で、続く辻垣高良投手、川上雄也投手も無失点の継投です。
7回からは竹田投手が登板し、8回に四球と盗塁で1死二塁として右前タイムリーを浴びて追いつかれます。打線は4回以降散発4安打で追加点なく、延長戦(タイブレーク)に突入しました。
10回は1死二、三塁で北條選手が右飛に倒れ得点なし。竹田投手がその裏を抑えて11回、三菱重工Westは2死二、三塁から7番・杉浦有祐選手が右前打、続く石井雄也選手が左前打と連続タイムリーで2点勝ち越し!
しかしその裏、竹田投手は先頭を併殺に仕留めて2死としますが盗塁を決められ、2者連続のタイムリー二塁打を許して再び同点。もう日差しは弱まっていましたが、投手も走者もたびたび水分補給のタイムを要求したり、足を治療したりと大変な状況です。
そして12回、朝日晴人選手が四球を選んで満塁として山下選手の右犠飛、北條選手の中前タイムリー、さらに途中出場・坂之下晴人選手の中犠飛が続いて3点勝ち越し!もうこれで大丈夫と思いきや、NTT西日本はやはり強かった…。
その裏、7回から登板して6イニング目の竹田投手が先頭を三振に切って取りながら、四球を与えて1死満塁となり、9番に中越えの2点タイムリー二塁打を浴び1点差。ついで、敬遠で塁を埋めたあと投ゴロを竹田投手が悪送球して2人を還し、サヨナラ負けを喫しました。
投手陣をたたえる監督
試合後の三菱重工West・津野祐貴監督は「先発の鮫島が試合を作って緩急自在に投げてくれたこと、竹田につなごうと最初から考えていた通りの継投ができたんですけど、それまでにもうちょっと点を取れたらよかったと思います。こういう試合になりましたが、竹田はしっかり最後まで、よく投げてくれたので責めることはできないです」と振り返りました。
竹田投手も何度かベンチに入る場面がありましたね。12回には足がつっていたんですか?「つってはいなかったんですけど、つりそうな状態で。おそらく出力を上げたら、かなり痛みそうな予兆があったみたいだったので何回かベンチに来たという感じでした」
それでもやはりエースに託すと?「そうですね。最後はもう竹田でとことんいこうと決めていたので。その中で打たれたのはこっちの責任でもあります。本当によく投げてくれました」。7回から竹田投手を投入したのは予定通り?「前倒しも考えましたけど、その前の鮫島、辻垣、川上がしっかりと竹田につないでくれたんで予定通りです」
改めて、竹田投手の強みはどんなところに?「真っすぐの強さは非常に魅力的ですし、変化球の精度もある。また今季は特に、平均スピードが格段にアップしています。あとは気持ちを前面に出すピッチングができるというところ。そのへんが非常に魅力的なピッチャーだと思います」
北條選手が先制打を放ちましたね。「あのチャンスで何とか北條に回すっていうのは、チーム全体にも浸透してきているところもあります。北條は非常に勝負強い選手ですので、きょうも打点を上げましたけど、そういうふうに打線も組みながらやるようにはしています」
都市対抗までと違って、最終予選は朝日選手と北條選手の間に山下選手が入っていますね?「山下は足も使えるし、バントも非常に上手な選手ですし、長打もありますので、彼を2番に入れることによってクリーンアップにチャンスでつなぐ攻撃を展開できるっていうところです」
タイブレークでの延長12回
北條選手に、すごい試合だったねえ!と言ったら「ヤバい…」とひと言。足は大丈夫?「もう、つっとった」。守備位置で何度か屈伸していましたもんね。「ピリピリずっとつってた」。それに耐えられたのは、やはり真夏の鳴尾浜で繰り返したPP(ポール間ダッシュ)のおかげ?と聞いたら「あはは!確かに」と大笑いです。
でも、あまり水を飲みに行ってなかったのでは?「情けないもん。俺は行かんと(笑)」。いやいや水分補給はマメにしなきゃダメでしょう。ことしはきついから。「そうですね。暑すぎるやろ」。しかもこんなに長い試合で。「いや~プロよりきつい。タイブレークからの12回はヤバい!」
タイブレークといえば、こんな事態もあったんですよね。延長11回は二塁ランナーの北條選手がなかなか出てこず、開始が遅れました。あれはなぜ?「…忘れてた。いや、違うな。(10回に自分の)打席が終わって、打てなかったけど、その裏を守り切って、次はもう打席が回ってこんからゆっくりしようと思って」
確かにプロの場合は延長戦でも打順等が変わらないので、今回のように打席の終わった選手が次回に走者で出る状況はありませんからね。暑さで具合が悪い選手も多かったので、周囲もそう理解していたでしょう。「あっ!と思って出ていって、審判さんにはすみませんって言いました」
そんなこともありながら延長12回まで進み、4時間を超える長い試合になりました。「まあ長いのは神宮とか甲子園でもあったんですけど、なんかこっちの方が疲れっていうか。延長に入ったらタイブレークでピンチから始まるんで、やっぱきつかった」
「僕ら、強い!と思ってやります」
また先制点の場面を振り返って「いい打球を打っても、(普通の)ヒットやったら還られへんしなと思って。そんなに強い打球を打とうっていう気持ちじゃなくて、ゴロで抜けたりとかボテボテでもいいやっていう感じでいったら、詰まってちょうどいい具合になっただけで。たまたまです。まあ結果的によかったですね」と話しています。
タイブレークでは「1打席目(10回)は浅いライトフライで、そこからまた(12回に)回ってきて、これもまた同じような詰まりながらのセンター前。あれは別にもう何も考えずに」というタイムリーだったそうです。
ところで、遅れて出ていった延長11回に杉浦選手のタイムリーで生還する際「やっとホームベース踏めた~!」って絶叫していましたね?「あれは、その…出遅れたし。ベンチから出ていく時に『ベース踏んでくるわ!』と叫んでから行って(笑)。だから踏めたので」。なるほど、有言実行でしたか。
では、これが最後となる次戦への意気込みを。「まあちょっと切り替えは難しいかもしれないですけど、今は。あした1日あるので、そこでしっかり切り替えて。もうこんな試合ないと思うんで、こんな試合できたってことは僕ら、強いと思って。はい。自信を持ってやっていこうと思います」
◆最後を締めたのは不動のエース
NTT西日本との“死闘”に敗れて2日後、敗者復活の代表決定戦が20日に行われました。相手は3回戦と同じパナソニックです。その時は犠打と暴投で挙げた2点を、先発の竹田投手が9回に1点失いながら完投して逃げ切ったもの。今回もやはり1点差の勝利でした。
◇9月20日 敗者復活・代表決定戦
三菱重工West-パナソニック
三菱 000 000 100 = 1
パナ 000 000 000 = 0
▼バッテリー
[三] 鮫島-西-辻垣-藤居-川上-竹田 / 石井
[パ] 定本-榎本 / 川上
▼二塁打 [パ] 山本
鮫島投手は3回に連打と四球で1死満塁として降板、代わった西隼人投手が好投します。まず三振と投ゴロで後続を断ち3者残塁!4回は1四球のみ、5回も走者を自身の牽制で刺して無失点。6回は1死から連打されるも三振で2死を取り交代。最後は辻垣投手が見逃し三振を奪って終了です。
すると7回、そこまでパナソニック先発の定本拓真投手の前に散発3安打だった打線が応えます。併殺で2死となってから6番・坂之下選手が左前打、杉浦選手は四球を選んで、続く石井選手の中前タイムリーで先制!
ただし走者が挟まれて1点止まりで、8回と9回はパナソニック・榎本亮投手の前に三者凡退でしたが、7回と8回は藤居海斗投手が3人ずつで片付け(四球の走者を牽制でアウトに)、9回は川上投手が走者を出しながらも2死を取って交代。最後は竹田投手が1安打されたあと中飛で試合終了です。
6投手による完封リレー!
よく踏ん張った投手陣に津野監督は「鮫島がゼロに抑えてくれて、そのあとピンチでいった西の、あのピッチングっていうのは非常に大きかったかなと。こっちに勢いをつけてくれた。そのあとの辻垣と藤居、川上、竹田がひとりひとり役割を果たしてくれたピッチャー陣だったと思います」と評価。
まず西投手を選択した狙い、どういう役割に期待されたのですか?「状態が非常に良かったので。それプラス、三振を取れる球を持っていますし、そのへんでピンチになったら西でいこうと考えていました」
最後は竹田投手でしたね。「頭からいくっていう選択肢もあったんですけど川上をまず挟んでから。川上と竹田の2人でいくと、それでピンチになれば竹田というふうに考えてました」
前回の悔しさをもぶつけたようなマウンドにも見えました。「そうですね。前回はかなり本人が精神的にも、肉体的にもダメージが大きかったんですけど、同じとこで借りを返すしか彼自身もすっきりしないと思ったので、あそこはどんな場面でも彼に任せようと思っていました」
チームとしても非常に悔しい敗戦だったところからの切り替えは、どんな形で?「そうですね。(間に)1日、練習する日があって、そこで選手たちも落ち込んでいるかなと思いながら見ていたんですけど、そんなこともなく、彼ららしく明るい感じでやってくれてたので心配はなかったです」
「この勝ちは非常に大きい」
0対0の試合展開で、7回2アウトから石井選手が1点を取って、それが決勝点に。「本当に1点勝負っていうところで石井が打ってくれた。オーブン戦もそうですけど、非常にこう勝負強いバッティングをしてくれる選手なので。本当にいいとこで打ってくれたなあと思います」
代打はまったく考えなかったですか?「そうですね(笑)、もう最後まで。まあリードされていたら、ちょっと考えてはいましたけど、まあもうキャッチャーを代えないということで。はい」
久しぶりの最終予選、熱い9月になりましたね。「そうですね。Westになってからの、この選手権予選ってのは初めてだったので、まあちょっと夏の暑さってのもありましたし、入り方は非常に難しかったんですけど。まあしっかり選手たちが順応してくれて、よく対応してくれたと思いますし。この勝ちは非常に大きいと思います」
本大会までは少し時間が空きますけど、それまでは?「全国で勝つっていうところで、やっぱりピッチャーもそうですし、バッターもスピードとパワーをもっともっとつけていかないと、全国の上位は狙えないと思うので、残りの期間でしっかり休養も入れつつ、次のステージに向けてトレーニングも技術練習もしていきたいと思います」
最後のアウトが取れてよかった…
18日の試合後は泣き崩れ、そのあとも自分を責める如く怒りをあらわにしていた竹田投手ですが、20日はもう切り替えて任された最後を締めました。
「この前(NTT西日本戦)は、みんながつないで点を取ってくれたのに自分が打たれてしまって…。あれだけみんな打ってくれて、サメ(鮫島)さんも声を枯らしながら応援してくれたのに、その期待に応えられなかったんで。きょうはチームの勝利に貢献するって決めて試合に臨んだので、勝てて本当によかったです」
最後のアウトを取った瞬間にガッツポーズが出ましたね。「前の試合はその1つのアウトがすごく遠く感じて、改めて野球の怖さを知りましたし、本当に気を引き締めないといけないなと思った試合だったんで、きょうは本当に最後のアウトが取れてよかったです」
この前の試合は気持ち的にも体的にも、なかなか堪える負け方だったと思います。どんな風に切り替えて、きょうを迎えましたか?「まあ負けても、きょうがあったので切り替えるしかないなと思って、登板する準備はしっかりしました」
最初にヒットを許して、どういう心境だった?落ち着いていた?「前の試合は(11回に)2アウト一塁から同点にされたんで、ちょっと落ち着いていこうと。その最後のバッターは自分が一歩引いてみて、落ち着いて投げられたと思います」
次は自分が決めるぞ!の思い
ナイスピッチング!と言ったら西投手は「ありがとうございます」とにっこり。あそこはもう西投手に決めていたと津野監督がおっしゃっていました。「はい、今回が初登板だったんですけど、ずっといい準備ができていたので」。そうなんですね、最終予選は初登板でしたか。
「2回負けたら終わりっていう厳しい戦いの中で、竹田さん1人じゃどうしても苦しい展開になると思っていて、実際にNTT西日本戦でそうなったので、もう次は自分が決めるぞ!と。竹田さんなしでもWestのピッチャー陣は投げられるぞっていうところを、しっかり見せたいと思いました。しっかり投げることができてよかったです」
あの3回と1/3を抑えたのは本当に大きかった!「そうですね。はい。準備もそうですし、パフォーマンスも出し切って(自身の)最後も三振を取って、左(バッター)のところで辻垣につなぐことができたので。もうあとは後ろのピッチャー頼むぞっていう気持ちでした(笑)」
辻垣投手は10球も要したものの三振締め。「はい、辻垣がやってくれました!」。そういえば4月のJABA岡山大会で辻垣投手のことを聞いた時に「あの、いかつい顔したヤツですよ(笑)」と教えてくれたんですよね。実は辻垣投手が入部して一番にしゃべったのが西投手だったとか。
「オリックスにいる山下舜平大と同期入団なんです、と言ってきて。自分が(福岡大大濠高で)舜平大の2つ先輩だったんで。そこからずっと、まあ仲良くというか(笑)」。なるほど、同い年の山下投手と辻垣投手は2020年のドラフトでオリックスに入ったんですよね。その先輩が西投手というご縁でした。
さて本大会ですが、京セラドームで投げるところをぜひ見せてください。「そうですね、去年は悔しい思いをしているんで。先発、中継ぎ関係なく、しっかり結果を出して少しでも上に行けるように頑張ります」
辻垣投手「プロとはまた違う緊張感」
では、西投手からバトンを託された“間接的な後輩”・辻垣投手のコメントです。2死二、三塁という状況でのリリーフながら「あの場面しかないと思い、とにかく集中し、丁寧に投げたことがいい結果になったと思います!」とのこと。渾身の10球でしたね。
また辻垣投手は、18日も鮫島投手のあと5回に登板して三者凡退!6回の先頭も打ち取って左の川上投手に代わっています。「どちらともロースコアの場面だったので、一発だけはないように気をつけながら投げました。またプロとは違った緊張感だったので、本当に面白かったです」
18日は投げ終わって戻ってくる時に雄叫びを上げていましたね。都市対抗は登板できなかったけれど、日本選手権でぜひ“本大会デビュー”を飾ってください。古巣・オリックスの本拠地で。「京セラドームはオリックスのファン感謝祭でしか、まともに使ったことがないので、爪痕を残せるように頑張ります!」
決勝打を謙虚に振り返る捕手
7回に決勝点を挙げた石井選手にも聞きました。あの場面はどんな気持ちで?「自分はバッティングがあまり得意な方じゃないんで。でも何とか、自分で決めてやろうというよりは、何とか根来さんにつないでって思ってたら、たまたまランナーに還ってきてもらった感じですね」
いや、でも結構打っている印象がありますよ。「あ、まあそうですね。でも社会人に入ってから打てなくなって、ずっと悔しい気持ちはあったんですけど。そう思っていてもしょうがないんで、自分の仕事ができたらなって感じで」
0対0でずっと来ていて本職のキャッチャーの方で手いっぱいになるところ。あれで少し楽になりましたか?「まあ1点取って楽になったといえばなったんですけど、やっぱりNTT西日本戦はあそこから引っくり返されたのもあるんで…」
ああ、そうでしたよね。「それが逆にチームとしても、まだ気を緩めたらあかんぞって声も出てましたし。あのNTT戦があったから、きょう勝ち切れたかなと思います」。頼もしい投手陣で。「はい、いいピッチャー多いですね」。本大会もマスクを被ってのナイスゲームを期待しています。「ありがとうございます!」
「チームが勝ったら次がある」
締めは北條選手。まずは記者陣に囲まれての真面目な?受け答えからご紹介しましょう。代表決定戦を制しての感想です。
「この試合で負けるともう何もないというか、大きな大会もなくて練習試合だけやし。それがかかっていた試合で夏の暑い中、ピッチャーも野手も一緒に頑張ってきて、一昨日はああいう試合になったけど、きょうは勝って。みんなも僕自身も嬉しかったし、まだまだ京セラでもこのチームで野球できることに喜びを感じています」
「ちょっとまだ慣れないというか。なんか都市対抗の時は結構興奮して、きょうはあまり興奮はできなかったです。なんかわかんないですけど。まあでも、はい、嬉しかったです」とも言っていました。
京セラドームでホームランは?「ありますよ。4年目の中日戦で」。確かに4年目の2016年8月13日、中日・ジョーダン投手から打ったプロ2号でした。この日は3安打の猛打賞で、青柳晃洋投手とヒーローインタビューも受けています。「でも京セラで1本だけじゃないですか?多分。甲子園の方が多い」
都市対抗の東京ドームに続いて、京セラドームでも打っておきましょうか!「いや、まあまあまあチームが勝てばいいんで。きょうも僕はヒット1本で別に何もしていないし。それでもチームが勝ったら、また次がある。貢献できるように頑張ります」
ところで、阪神・秋山拓巳投手の引退発表を受けて連絡は?「LINEしましたよ。ファームの試合でよく秋山さんの後ろを守って、よくエラーして迷惑をかけましたけど。1軍でも守れたし。でも、やっぱり秋山さんはコントロールがよかったので守りやすかったです。ありがとうございましたって。そういう感じで連絡しました」
改めて、本大会に向けてのコメントを。「この予選もまあ苦しかったですけど、本戦は全国の相手に自分たちの野球をしてWestらしい勝ち方でまず1勝。で、優勝を狙って、これから頑張ります」
京セラドームで見たい、はしゃぐ北條選手
続いて囲み取材の前に聞いた話です。ダブルドーム出場が決まっておめでとう!と話しかけたら、北條選手はなぜか少し戸惑っていて、こんなことを言いました。「何か…あの…決まった瞬間の、みんなが“わあー!”っていうのに、まだ慣れへん(笑)」。え、そこですか?
「あ、あ、あ、なんか行かれへんって(笑)」。そう言われてみると、都市対抗の時ほど大はしゃぎではなかったような気もしますね。「最後の場面はめっちゃ冷静やった。ああ勝つな、みたいな。もう絶対に勝てると思いながらやっていたんで」
じゃあ18日の代表決定戦はどうでしたか?「いや18日にもし勝っていたらヤバかったですよ」。ヤバかった、つまり大喜びしたということですね。でも、あの試合も途中で勝てると思ったでしょう?「いやいや、NTT西日本はわからんと思ってた」。そうなんですね。
「もう勝ったやろ、もう勝ったやろの繰り返し。延長に入って2点取って勝てるって思ったけどまた2点取られて…まだあ!?って」。そして12回にまた3点勝ち越して決まったと思ったら、その裏に4点。サヨナラ負けの瞬間、セカンドで膝をついていましたよね。
「だってもうしんどかったし。ほんま、あれは死闘!死闘です。だから勝っていたら最後はマジでもう」。はじけた?「はい、はじけました!」。見たことのない北條選手が出ていた?「出てた、多分。勝っていたら」。その点、きょうは冷静だったんですね。「そう、勝つと思って。普通に“いける”と思って」
あと、三菱重工Westの試合でいつもベンチから声をかける川上投手がいつも面白くて、今回は北條選手の打席になると「チャンス、チャンス、チャンス侍!」とか「チャンスと言えばジョーさんや!」とか、また18日の延長戦で聞いた「得点圏でジョジョジョー!」には思わず噴き出しました。
そんな掛け声を北條選手も知っていて「あはは!何か叫んでるでしょ」と笑います。今回、三菱重工Westやパナソニックはスタンドに応援団もチアもいなかったので、さらによく聞こえたのかもしれません。本大会では応援合戦もありますが、それに負けない声をかけてくれるはず。新たな“ネタ”も楽しみにしています!
今やすっかりチームやチームメイトに溶け込んだ北條選手。時には若い選手の熱さや陽気さについていけないこともあるみたいですけど、楽しそうな姿を見ると昔を思い出します。
特に2つ先輩だった一二三慎太選手、中谷将大選手、1つ上の西田直斗選手、また1つ下の横田慎太郎選手らと泥だらけになってノックを受けたり、練習後に戯れたり…。ある年は1月の自主トレ時、鳴尾浜の外野芝生で輪になって後転を繰り返す不思議な光景を見ました。何がしたいんだろう?と思いながら写真を撮ったものです。
先日、鳴尾浜で思い出に残っていることを北條選手に尋ねると、こんな返事が即座に届きました。
「試合をして、練習をして、へとへとになってベンチ横のロッカーで道具を磨きながら、みんなでふざけていたことが一番の思い出です!(笑)」
北條選手らしいですね。そういえば練習終わりで次々に選手が引き揚げてくる中、北條選手たちは遅かったので「ああ、また話し込んでるな」と笑っていたことも記憶にあります。よほど楽しい時間だったのでしょう。懐かしいです。
<掲載写真はチーム提供、※印は筆者撮影>