元阪神・北條史也選手(三菱重工West) 都市対抗に続いて目指すは“秋の大阪”
ことしから三菱重工Westに所属する元阪神の北條史也選手(30)が、初めて出場した7月の『第95回都市対抗野球大会』で、チームは“三菱重工West”となって以降、初のベスト8という結果でした。ただ、優勝したのが“三菱重工East”だったのはちょっと悔しいかもしれません。
そのEastには北條選手と同い年の武田健吾選手(元オリックス、中日)がいて、彼は社会人1年目の2022年にENEOSの補強選手として優勝を経験しました。昨年とことしは自チームで出たので3年連続出場。それもすごいのに、3回のうち2回が優勝って!いや~持っていますねえ。
同級生がプロの世界に続き社会人野球の舞台で、しかも全国大会で相まみえるところをぜひ見たいものです。
一番近いチャンスは京セラドーム大阪での『第49回社会人野球日本選手権大会』で、三菱重工Eastは都市対抗優勝チームとして出ますが、三菱重工Westは対象のJABA3大会で優勝できなかったため、近畿地区最終予選(わかさスタジアム京都)で出場を決めるしかありません。
そのうえ、ことしは近畿地区のチームが日本選手権対象のJABA大会で1つも優勝していないので、みんな揃って最終予選に出てくるという現状。代表枠4つは変わらない中、新たに参戦するチームもあって計17チーム。つまり17分の4という確率になりました。
昨年は対象大会で出場を決めたのが三菱重工Westだけですが、2022年は3チーム(そのうち大阪ガスは2大会で優勝したため1枠増)、最終予選参加は12チーム。2021年は3チームと、さらに前回優勝の大阪ガスも出場だったので、かなり“分母”が減っていたんですけどね。
よって北條選手いわく「ムズい戦い」、つまり熾烈な争いになることは必至。さらに「三菱重工Westになってから、JABA京都大会に3連覇で決めていたので、みんな最終予選を経験していないとか…」と話していました。とはいえ、3連勝すればもう代表確定なので一気に決めましょう!
始まった“ムズい戦い”
8月31日に開幕予定だった近畿地区最終予選は台風10号の影響で2日遅れで始まり、三菱重工Westは4日に初戦(2回戦)を迎えました。相手はSUNホールディングスWEST、関本賢太郎さんの息子・関本勇輔捕手(21)が在籍しているチームで、コーチに元近鉄の宇高伸次さん、元オリックスの宮﨑祐樹さんの名前もあります。
『第49回社会人野球日本選手権大会・近畿地区最終予選』
9月4日 2回戦 わかさスタジアム京都
SUNホールディングスWEST-三菱重工West
SUN 000 000 010 = 1
West 002 022 00X = 6
▼バッテリー
[S] 金澤-戸次-大西 / 関本
[W] 竹田-藤居-川上-鷲尾 / 石井
▼二塁打 [S]増永 [W]山下
▼盗塁 [S]清水 [W]朝日2、根来2
今回は朝日晴人選手(23)と北條選手が並ばす、間の2番に入った山下航汰選手(23)(巨人→三菱重工Eest→)が、3打席連続出塁の朝日選手を二度還すなど4打数3安打2打点の活躍。北條選手は3番セカンドでフル出場し、4打数1安打でした。
先発の竹田祐投手(25)が7回2安打2三振無四球で無失点と好投!さすがプロスカウトも注目のエース、安定したピッチングが続いています。
次は3回戦(準決勝)で、12日にパナソニックと戦います。北條選手は三菱重工Westに入ってから初めての対戦で「パナソニックには高校の同級生がいるので楽しみです!」と言っていました。光星学院高から東北福祉大を経て入社7年目の城間竜兵投手(29)のこと。直接対決があるといいですね。
たらればで恐縮ですけど、パナソニックに勝てば、次はもう18日の第2代表決定戦。しかし、もし負けると敗者復活の第3代表決定トーナメントに回り、そこはもう負けたら終わる戦いが3つ続きます。ここは何としても最短で決着をつけておきたいでしょう。
兵庫県秋季大会で春のリベンジ
時を戻して、都市対抗のあと三菱重工Westは8月14日から『第56回姫路市長杯争奪社会人野球大会 兼 2024年度兵庫県社会人野球秋季大会 兼 第66回スポーツニッポン杯社会人野球大会』とタイトル長めの公式戦が姫路でありました。2022年は優勝、2023年は準優勝している大会です。
ことしは初戦(2回戦)で関メディベースボール学院に11対1で5回コールド勝ち、続く準決勝はYBSホールディングスに10対0で6回コールド勝ち。そして決勝は、3月に行われた兵庫県社会人野球春季大会決勝と同じ日本製鉄瀬戸内との顔合わせで、その時は敗れましたが今回は2対0で勝ち、2年ぶり20回目の優勝を果たしています。
北條選手は準決勝と決勝に出場。準決勝は3番セカンドで3打数2安打。決勝も3番セカンドで2打数0安打でした。
ちなみに、この大会での場内アナウンスは、北條選手の「ほうじょう」のアクセントが阪神時代初期の“平板型”だったんですよ。懐かしく拝聴しました。入団当時、場内アナウンス担当の方から“頭高型”と“平板型”、どちらがいいか聞かれ「どちらでも」と答えたそうです。
それで“平板型”が採用されたものの球場で流れると違和感を示される方が多く、それを受け「やっぱり別の方で」と本人が伝えて、以降は“頭高型”に変わったのです。北條選手と昔そんな話をしたなあと思い出し、1人ニヤニヤしてしまいました。
この大会後は社会人チームとのオープン戦があり、東海遠征中の8月26日は都市対抗の1回戦で勝利した王子との試合で、北條選手はホームランを放っています。翌日の西濃運輸戦は雨天中止でしたので、真夏のオープン戦を締めくくる一発だったわけですね。
なお三菱重工West・津野祐貴監督(37)は、日本選手権出場のラストチャンスとなった近畿地区最終予選で「勝負強い北條が、きっとまたいい仕事をしてくれるでしょう」と期待のコメント。都市対抗2回戦のような活躍をお願いしますよ!
東京ドームの夏を回顧
ではここで、もう1か月以上前のことで恐縮ですが、北條選手やご両親などのお話も交えながら、三菱重工Westの『第95回都市対抗野球大会』を振り返りましょう。
近畿地区第3代表として、4年連続40回目の出場を果たした三菱重工West(神戸市・高砂市)。補強は3人とも大阪ガスで、峰下智弘内野手(32)、山川晃汰外野手(26)、三井健右外野手(26)でした。峰下選手は1回戦の試合前に“10年連続出場”の表彰も受けています。
この3選手が本当にいい仕事をしてくれて、津野監督も「いい補強ができました!」と笑顔。なお2番で先発出場の北條選手は、補強の峰下選手がセカンドのため、今大会はサードを守りました。
【1回戦 7月23日】
三菱重工West-王子
West 020 010 110 = 5
王 子 012 000 000 = 3
▼バッテリー
[W] 竹田 / 石井
[王] 近藤-吉川-浅井-若林-宮崎-柳橋 / 細川
▼本塁打
[W] 笹治ソロ(鷲尾)、[王] 神鳥ソロ(竹田)
北條選手は5回に中前打で出て同点のホームイン。7回は右前打と盗塁でチャンスを作り、勝ち越しの生還と、いいところでの2得点でした。ちなみに8回の守備で三ゴロを捕球後、一塁への送球エラーを記録しています。それは言わんといて~と頼まれたのに書いてすみません。
ワクワクします!とお母さん
試合後、選手が家族や友人、知人の方々と対面するスペースで、勢ぞろいした北條家の皆さんとお会いできました。北條選手のお母さんが偶然、私を見つけてくださったもの!お父さんもお母さんもお変わりなくて懐かしかったですねえ。その時に伺った話をご紹介します。
まず、お母さん。「野球しているところを見られるのは、やっぱり楽しいですね。本人の気持ちの入ったプレーを見られて、なんかこっちもワクワクしています。応援もプロとはまた違って、こっちまでノリノリになって。高校時代を思い出しましたよ。応援は忙しいですけど(笑)」
高校時代といえば、対戦相手の王子には光星学院高校(現・八戸学院光星高校)野球部の同期で、中部学院大を経て王子硬式野球部に所属する大杉諒暢内野手がいます。4回の守備で、左中間のフライをスーパーキャッチし、倒れながら最後まで出ていた選手です。
北條選手のお母さんも「きょうは大杉くんのナイスプレーを見られたし、すごく懐かしくて。大杉さんのお母さんとお父さんと、それに東京在住の木村くんのお母さんとも、さっき一緒に会えたんです!」と教えてくださいました。
“木村くん”というのも光星の同期で、当時はセンターを守っていた木村拓弥外野手。北條選手によれば、同学年の松原聖弥選手(巨人-西武)と同じ明星大学に進み、卒業後は日亜鋼業株式会社(尼崎市)の軟式野球部に所属して「今もまだキャプテンやっているんちゃうかな?」とのこと。
お母さんに、皆さんと会うのは久しぶりですか?と尋ねたら「光星高校の父母会がまだあるので大阪の人とは会っているんですけど、(東京在住の木村さんとは)本当に何年ぶりかですね。こんな機会を作ってくれたことに感謝です」と本当に嬉しそうです。
近畿地区第2予選も観戦されたお母さんは「いい仕事をしてくれても、やっぱりヒヤヒヤ、ハラハラはしていました。最後の最後までハラハラさせて、まだまだ落ち着いては見られません。はい」という言葉でした。そうですね、お気持ちはわかります。
エラーはあかん!とお父さん
続いて北條選手のお父さん。「都市対抗は初めてなので、まあ一回観にいこうかと思って来ました」。いかがでしたか?「いや~もう独特ですね。会社を挙げてやっているから。やっぱり、さすが大企業だけあって、いろいろスポーツが野球以外にもあって、その時にあの応援の人たちが出てくるそうですね」
この日の1回戦、最初は調子が出なかったみたいですけど…と言ったら「そうやねん!」と目を見開くお父さん。「えーと、ライトフライにサードゴロ?そのサードゴロもまた、しょぼいゴロやったから(笑)、どないするんやろなあと思った」
ここで王子の大杉選手が、北條選手のご両親を見つけて挨拶に。思わず私も「すごいプレーで!倒れ込んだけど大丈夫でしたか?」と話しかけてしまったのですが「大丈夫です、大丈夫です」と笑顔で答えてくれました。
あのプレーには三菱重工West側からも大きな拍手が起きたと伝えると、北條選手のお母さんも「そうそう!敵味方関係なくナイスプレーには拍手を!って、やっていたんですよ」と言い、それをニコニコと聞いていた大杉選手。北條選手とは久しぶりですか?と聞いてみました。
「まあ久しぶりっちゃ久しぶりですけど、ちょいちょいご飯とかは行きます」。名古屋遠征の時はよく食事をすると言っていましたね。でも試合をするのは初めてでしょう?北條選手も楽しみだと。「そうですね。嬉しかったです。楽しかったです」
まだこれからも対戦する機会はあるはず。って、また脱線してしまいました。お父さんのお話に戻りましょう。試合しているところを見るのは嬉しいですか?「でもね、今もハラハラするんですよ。守っていても“エラーすんなよ”って。いまだにやっぱりね」。そこはお母さんと同じで。
「打てなくても仕方ないけど、エラーはしたらあかんで!って、いつも思う。高校の時から」。大きな怪我もあったので無理はしないようにと思っちゃいますけど。それでもエラーはダメなんですね?「そう、エラーはあかん(笑)」。まあハラハラさせるのも、ある意味では親孝行かもしれません。
といって別れたご両親。それ以降の試合は観に行けないとおっしゃっていました。2回戦の大活躍を生でご覧になれなかったのは本当に残念ですよねえ!ただ、準々決勝での“あかんエラー”を目の当たりにせず済んだのはよかったということで。また今後ともよろしくお願いします。
笹治選手は都市対抗初打席で…
8回にホームランを放った笹治健汰外野手(27)のコメントもご紹介しましょう。ご家族や友人の方々と笑顔あふれる対面をしていました。
ナイスホームランでしたね。打った瞬間に行ったと?「はい。そう思いましたけど、打球がどこ行ったかわからなかったんですよ」。あら、そうでしたか。一塁を回るところからもうガッツポーズがすごかったですね!「あはは!できる時にやっておこうと思って(笑)」
あの1点、大きいですもんねえ。「めちゃめちゃ嬉しかったです!僕、きょうが都市対抗の初打席だったんですよ」。え、そうなんですか?「はい。都市対抗は、ネクストバッターズサークルまでは行くけど、全然打席に立てていなくて…」
「ほんまに、きょうが初でした。まあ1打席目は三振したんですけど、津野監督が2打席目をくれたんで。ほんまに感謝しています!あとは竹田のピッチングとか、周りの人からもいろんなアドバイスをいただきましたし、スタッフの方たちもそうです」
それに応えられた?「いやまあ応えたっていうか、たまたまやと思うんですけど。それでも、出てよかったです!みんなに“ありがとう”という気持ちです」。聞いていてウルウルしちゃいました。こちらこそ、ありがとうございます。
王者・トヨタ自動車に快勝!
2回戦は2日後の7月25日、昨年の優勝チーム・トヨタ自動車(豊田市)との対戦でした。この試合で北條選手は先制2ランとタイムリー二塁打で計5打点の大活躍!紙面やネットで記事をご覧になった方も多かったでしょう。
【2回戦 7月25日】
三菱重工West-トヨタ自動車
West 002 000 700 = 9
トヨタ 000 002 000 = 2
▼バッテリー
[W] 藤居-川上-中澤-鷲尾 / 石井
[ト] 増居-磯村-渕上-池村-後藤 / 高祖
▼本塁打
[W] 北條2ラン(増居)、三井3ラン(渕上)
[ト] 北村ソロ(中澤)
北條選手はまず2回、1死二塁でレフトスタンド中段へ先制2ラン!カウント1-2からの4球目、143キロの真っすぐでした。追いつかれた直後の7回には1死満塁で左中間へ走者一掃のタイムリー二塁打!そのあとも三井選手の3ランで計7点を奪い、試合を決めています。
これで三菱重工Westは2018年に準優勝して以来、6年ぶりのベスト8進出。北條選手は三振、2ラン、三振、左中間二塁打、三振の5打数2安打5打点。9回裏の守備で交代しました。
試合後のヒーローインタビューに呼ばれた北條選手のコメントを抜粋してご紹介します。
Q、初めての都市対抗、ここまでいかがですか?
「社会人野球、最高でーす!」
Q、どういうところが?
「純粋に野球を楽しんでやっているところが最高です」
Q、きょうは5打点の活躍。まずは3回の先制2ランは、どんなことを意識してバッターボックスに?
「いいピッチャーなので、真っすぐに刺されないようにと思って、振り抜いたらたまたま入りました」
Q、そして7回に満塁の走者を一掃するタイムリー!あそこはどんなことを思って?
「前の打席にチャンスで三振してしまってたんで、何とか1点でも多く取りたいなと思って。僕しかいないなと思って、打ちました」
Q、見事、結果を出した形になりましたが、今チームメイトから声をかけられていますね。三菱重工Westはどんなチームですか?
「上下関係のない感じなんですけど、(苦笑いながら少し間)…まあそれがいい雰囲気だなと思って、やりやすく野球をやっています」
以上です。ベンチからかなりの声が飛んでいたようで、それに苦笑いしながら、思わず「上下関係がない」と言ったものの、ちょっと違うかな?と思って“間”が生じたのでしょう。この件に関しては最後の方で触れています。まず2回戦の感想を聞きました。
公式戦初アーチが東京ドーム
“北條デー”というくらいの活躍だった2回戦。結果を見ると三振、2ラン、三振、走者一掃の二塁打、三振とメリハリの利いた5打席でした。「確かに(笑)3三振ですよね?」というので「そう、3つの三振に挟まって5打点」と答えたら「あはは!」と大笑い。
2ランは完璧な手応えだったでしょう?「ああ、そうですね。打って、打球を見た感じで“あ、いった!”と思いました」。スタンドの中断より上に行っていたような。「はい、そうですね」
なお北條選手の社会人初ホームランは、都市対抗開幕前日の7月18日、三菱重工Eastとのオープン戦(金沢グラウンド)で打ったもの。阪神時代に1つ年下で仲のよかった横田慎太郎さんの命日、1周忌の日でした。本人もそれはわかっていて、知り合いの記者に連絡をしたそうです。
それはオープン戦なので、公式戦初ホームランが都市対抗の舞台、しかも東京ドームでの一発となりました!しっかり記憶に残りますねえ。ちなみに東京ドームで北條選手が打ったホームランは2021年4月22日の巨人-阪神6回戦、高橋優貴投手から6回に放った1号2ラン以来3本目です。
都市対抗野球2回戦の話に戻りましょう。前年度優勝チームのトヨタ自動車との対戦でしたが、北條選手は「今思えば、6回に追いつかれたけど、そんなに怖くはなかったですね」と振り返ります。どこかで“この試合はいける”という感覚があったのかもしれません。
2対2とされた直後の7回、満塁でピッチャーが代わったところの走者一掃タイムリー二塁打!この3点が大きかった!見事です。「ありがとうございます」。会心の仕事だったでしょう?「そうですね」
試合後のヒーローインタビューはいつ言われたんですか?「最後の9回は守っていないんですけど(和氣暉親選手に交代)、その時にベンチでマネージャーから『このまま勝てば、2回戦からは選手がしゃべるんですけど、多分それが北條さんになるんでお願いします』って言われました」
そうそう。1回戦は監督インタビューで、2回戦からは選手ですもんね。それで、ベンチでちょっと考えた?「いや~真面目な方がいいんかな?と。真面目でいこうというか、普通にいこうと。はい。会社の方々もいるし(笑)」
なるほど、そこは考えたわけですね。とはいっても、他チームのヒーローたちはめちゃくちゃはじけていましたよねえ!「はじけていますね(笑)」。でもまあ北條選手の場合は“社会人野球サイコーです!で、つかみはオッケーです。
6年ぶりのベスト8で終了
この勢いでベスト4、いやもっと上に!という思いで、急きょ私も再び上京したのですが、残念ながら準々決勝はJR東日本東北(仙台市)に完敗でした。
【準々決勝 7月27日】
JR東日本東北-三菱重工West
JR東 000 200 400 = 6
West 100 000 000 = 1
▼バッテリー
[J ] 鈴木-工藤-西舘-津高 / 小鷹
[W] 竹田-中澤-藤居-川上-鷲尾 / 石井
1回に先頭の朝日選手が中前打して二塁成功、内野ゴロで三進すると暴投で生還。彼のバットと足で1点を先制します。しかし4回に竹田投手が2本の二塁打で追いつかれ、セーフティーバントで勝ち越しを許しました。
7回には中澤投手が2点タイムリーを浴び、代わった藤居投手が三ゴロに打ち取ってチェンジ…と思いきや、北條選手が捕球できず。2死満塁となって内野安打と押し出し四球で、もう2点を失います。
打線は2回以降、5安打と7死四球をもらいながら12残塁。スミ1で攻撃を終えました。8年ぶりのベスト8ではありますが、8年ぶりの準決勝、決勝までは届かずに“夏”が終了。ただし、“三菱重工West”としては初のベスト8です。
北條選手はこの試合、三振、申告敬遠、遊ゴロ、四球、四球と出塁はしたもののノーヒットで、守備で痛いエラーもありました。都市対抗の計3試合では11打数4安打5打点、打率.364、本塁打1、二塁打1、三振4、四球4、盗塁1、失策2となっています。
ちなみに都市対抗の近畿2次予選は4試合で11打数4安打4打点、打率.364、二塁打2、三振1、四球4(4試合ともあり)、死球2、失策2でした。
楽しくて、悔しかった夏…
では、大会後に改めて聞いた北條選手の話です。まず初めての都市対抗野球、感想としては楽しかったか、悔しかった思いが強いかを尋ねたら「まあ両方です。両方。はい」と回答。やっぱり2回戦(トヨタ自動車)が最高に楽しかったんじゃないですか?「はい、そうですね!」
ところが準々決勝(JR東日本東北)は苦しい展開のままで敗戦。「まあ、そうですね。まあ、なんか、はい。負ける時の…そんな感じの試合でした。なんかJR東日本東北はバッティングに力があるなあと、映像を見た時に思ったんですよ。不気味やな~と思ったら、やっぱり強かった」
1対2の7回に2点を取られた直後、自身のエラーからさらに2点が入っちゃったんですけど、それに関して「あれは、だいぶ痛かったです。サードは…。なんか守備の時が一番…。まあ、まあいいです。言い訳になるのでやめます」と言葉を途中で飲んだ北條選手。
でも打つ方で3試合とも仕事はできたのでは?いつも通り四球も選んでいますしね。「フォアボールじゃあ弱いです、勢い的に。たとえばノーアウトランナーなしで勝負にきてフォアボールやったらいいですけど、ランナーがいた時にフォアボールでも、なんか勢いがつけにくい」
なるほど、流れを変えるほどの勢いが必要なんですね。2回戦後のヒーローインタビューで自ら語った「僕しかおらんと思って」のようなものが。「ああ(笑)、そうですね。打った時の方がやっぱり勢いづく感じはありましたね」
予選よりものびのびと楽しそうに見えたんですけど、それは気のせい?「いや、その通りやと思います。予選の方がなんかまあ予選も楽しさはあったけど、もし都市対抗に出られへんかったらやばいなと思っていたんで、緊張感はもっとありました。本大会よりも」
来年の再会を期待して
ことしの開会式は5年ぶりに全チーム参加だった都市対抗、知り合いには会えましたか?「いや、違うグループなのか、対戦相手によるのかはわからないけど、レフト側とライト側に分かれていたんですよ。僕はレフト側で、全然知らん選手ばっかりでした。武田も大杉もライト側やったんで」
そうそう!三菱重工Eastの江越海地選手(29)はわかりますか?江越大賀選手(31)(阪神→日本ハム)の弟さん。「知っていますよ!海地は12年目、僕とおんなじで高校から入っていますもんね。同い年ですよ、僕」。そうでしたか!またまた同い年が登場です。
ことしはずっと試合に出ていますね。「海地は、兄貴と一緒でポテンシャルがえぐいですからねえ」。我々と話をする時などは、ちょっとおとなしいなと思ったけど。まあ兄の大賀選手もそうですもんね。「そうですね、おとなしい」。でも仲間内では違う?「はい(笑)」
元阪神の野原将志さん(36)が三菱重工長崎に入って取材するようになり、その頃から私は海地選手を見てきたので結構長いです。「2014年からですよね?僕は将志さんと2013年に1年だけ(阪神で)かぶっているので」
その野原選手は2014年の都市対抗野球大会に出て、いきなり東京ドームのフェンスを直撃する三塁打を放ったんですよ。でも1回戦で負けてしまって現地では見られず。「へえ~そうなんですか。じゃあ僕の方がインパクト強いですね(笑)」。ベスト8だし、スタンドに放り込んだし?「はい」
来年の東京ドームでもう一度見たいです。「そうですね、はい。東京ドーム。またやりたいなって感じです」。社会人にとっては最高の場所ですからね。「はい、経験できたのでよかったです!」
ところで、準々決勝が終わって整列した際、一塁走者だった北條選手は手にヘルメットを持ったままでした。その後みんなでスタンドにお辞儀してベンチへ戻る時に、もう一度ヘルメットをかぶったでしょう?あれはなぜだったんだろう。あえてかぶり直した?
「ええ、顔を見せたくなかったからですね。写真を撮られるやろと思って。だからヘルメットをかぶったんです」。まあかなり悔しい表情をしていましたもんね。
「めっちゃおもろい」仲間たち
最後に、ヒーローインタビューの件。上下関係がないというのは少し語弊があったようで「ちゃんとしているんですよ。一線を越えることなく。そのへんはちゃんとしているんですけど、和気あいあい。ここはいけると思って多分、いじってくるんですね。そのへんがうまいですね」と北條選手は説明します。
そして、それはたいてい「3つ下の世代」と言っていました。1997年生まれというと古川卓人選手(27)、根来祥汰選手(26)、笹治選手(27)、中山将太選手(27)がそうですね。でも本当に楽しそうに見えますよ。「めっちゃおもろい!人がおもろいです。あの年下のやつらが(笑)」
中でも古川選手は常に専属広報のごとく北條選手のお世話をしてくれて、都市対抗でもなかなか出てこないので古川選手に聞いたら「ちょっと取材中で」と。ちゃんと把握してくれていました。しばらくして見たら北條選手がサインをしている横で手伝う、慣れた仕草の古川選手!
「ほんま、サッと来てくれるんですよ。阪神に行ったら広報できるわってくらい(笑)。出ていったらサッと“さばき”に入って、ほんでまた引き揚げる時も“キリがいいからここで”とか仕切ってくれるから、めっちゃおもろい!」
北條選手からお願いして?「最初の頃、サインをするのに自分1人でどうしようかと思って。古川はロペスってあだ名なんですけど“ロペ、ちょっと手伝ってくれる?”と頼みました。ユニフォームとかのサインは手で引っ張らなあかんし」。ああ~わかります。
さらに「あいつ阪神ファンなんですよ。めちゃくちゃ阪神ファン」と笑う北條選手。そういえば今季初めに津野監督が、ものすごい阪神ファンがいるとおっしゃっていました!なるほどねえ。
「そうそう、古川と根来が阪神ファン。だから2人を連れて東京ドームで巨人阪神戦を観たんですよ。都市対抗の前、(7月)16日から東京に入ったので17日に見に行きました。途中からになったんですけど、阪神ファンのロペスと根来を連れて」
そのうえ、近本光司選手に頼んで皮手袋なども貰ってあげたとか。「はい。めちゃめちゃいい思い出になったんちゃうかな」。それは嬉しいでしょう。阪神ファンなら最高!後日、二見グラウンドで会った根来選手に聞いても、本当に喜んでいました。
北條選手と97年世代
「だから、まあそういう感じでロペスは(サイン等のお手伝いを)やってくれます。ロペスはファン目線でもあるから(笑)、ファンの人に厳しくないんです。優しい。ファンの気持ちが分かるから、厳しいだけじゃないんでしょうね」と北條選手は言います。
たとえば?「ファンの人がいっぱい待っていたら“1人につきサインか写真か、どっちか1つにしてください!”とか言って(笑)」。すごい、完璧な仕切り!しかも優しい。「めっちゃ仕切る。写真もあいつがパッと撮って。僕が差し入れをもらったら、その差し入れの袋を受け取って」
そういう場面を見て、古川選手のお母さんと冗談で「敏腕マネージャーみたいな」と話したりしましたけど、北條選手は「いやいや、同じプレーヤーなんで」とキッパリ。はい、それは失礼ですね。すみません。でも「めっちゃおもろい」と楽しんでいるのも確かで(笑)。これからも北條選手と、97年世代の皆さんに注目です!
また、11月開催予定の『第49回社会人野球日本選手権大会』で再会しなくちゃいけない人たちもいます。早々に出場権を獲得した日本製鉄鹿島・守屋功輝投手(30)が「北條を全力で抑えてやります!」と手ぐすね引いて待っていますからね。
このあと9月12日のパナソニック戦、さらに18日の代表決定戦を制すれば決定です。津野監督が期待する勝負強さで、都市対抗予選や本戦と同じく、また“いいところを持っていっていく”北條選手を見せてください。そして必ず京セラドーム大阪へ乗り込みましょう!
<掲載写真はチーム提供、※印は筆者撮影>