北欧ノルウェーでは「電気の移動」が当たり前?急な変化、懐疑的な市民に理解してもらうには
世界各地の都市でバスの電気化が進んでいる。
北欧ノルウェーの首都オスロでは、ハートのマークがついた赤いバスが走っている。
「Jeg elsker Oslo」(私はオスロが大好き)。ノルウェー語で「エルスケル」(elsker)は愛しているの「ラブ」、「エル」(el)は、「電気」を意味する。
この街は、環境・気候変動対策が評価され、今年の欧州「緑の首都」に認定された。
- 2017年、市民が路面電車、バス、地下鉄、電車、フェリーで移動した市民の旅の数は年間3億回を越える
- 過去10年間で公共交通機関で移動する人は63%増加
- そのうちバスのシェアは2017年で43%
- 5台の水素バスも試験中
- 2019年内に首都の島を行き来するフェリー3台が電気化
- 2019年内に首都を走るバス76台が電気化
「2020年に全ての公共交通機関を再生可能エネルギーで」
2020年までに公共交通機関を全て再生可能エネルギーで運行し、2028年までにはエミッションフリーにすると宣言したオスロ。
すでに、公共の路面電車、電車、地下鉄を使っての市民の旅の56%は、ゼロエミッションとなっている。
隣県アーケシュフースと合わせると、年内に運行する電気バスは115台となる。
フィヨルドに囲まれた街なので、市民の移動手段にはフェリーもある。
バスの電気化においては、市民やメディアから大きな反発もなく、順調に進んでいるようだ。
一方で、交通チケットの料金を「もっと安くしてほしい」という声も。
グリーン化はいいけど、チケット料金が高すぎる?
オスロでは距離は関係なく、公共の路面電車、フェリー、地下鉄、バスでは、同じチケットを使用する。
1か月の定期代
- 大人 750NOK(9400円)
- 6~17歳 375NOK(4700円)
- 18・19歳、もしくは30歳未満の学生、シニア67歳以上 450NOK(5600円)
- 片道チケット 36NOK(450円)
物価が高い国なので、料金は毎年値上がりしている。
「車ではなく、ほかの乗り物で移動してほしいと政治家が本気で思っているなら、チケット料金を安くして」という声は、毎年ある。
人々の不満の原因のひとつは、「料金がどう使われているのか、実感できない・わからない」から。
情報伝達の不足が課題
コミュニケーション不足もあるとして、市の政治家や交通機関は、ポスターやFacebookでの有料広告を使う。
「みなさん、料金を払ってくれてありがとう。お金は交通機関の改善のために使われています」というメッセージを送ることに必死だ。
新しい変化に、最初は懐疑的になるものだ。行動して見せるしかない
地球にも市民にも優しい、新しい都市開発を進めるオスロ市。市議会の環境・運輸課の責任者であるハルムスタド氏は、
「オスロで可能なことは、世界の他の場所でも可能だと思います」と取材で語る。
市民が政治家の発言に飽き飽きしている背景があるとすれば、「高い目標ばかりを口にして、実際は行動しない人もいるから」だろうと同氏は答える。
街の中心部から電気自動車EVも含め、車をできる限り減らそうとする「カーフリー政策」。
発表時は、反対したりバカにする声も多かった。
「急進的なポリシーに人々は懐疑的でした。でも、市民は私たちに怒っているわけではないと思っています。環境のために、誰が、何をしていくのか。責任の居場所を明確にして動き、街の変化を市民に見せていくことが大事」と話す。
2030年までに「ゼロエミッション都市」になりたい!「世界最初の」という称号も欲しい!
オスロ市は2030年までに、排出ガスをゼロにする「ゼロエミッション都市」となることを宣言している。
EVを初めとする「乗り物の電気化」が好きなオスロ。「世界で最初のゼロエミッション都市」になるために、グリーン化と電気化をものすごい勢いで進めている。
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Photo&Text: Asaki Abumi