子どもにAIで描かせるクリスマス切手 ノルウェーで賛否両論
ノルウェーでは、子どもや若者にAIが将来的に与える影響が懸念されている。
ノルウェー郵便局は毎年恒例のクリスマス切手のデザイン募集で、小学生にAIを使わせてイラストを描かせた。
- 「子どもたちにクリエイティブなアイディアを生み出す機会を提供し、新技術を探求する」
- 「新しいテクノロジーを試すのが私たちのDNAだ」
郵便局はそう主張するが、この決定はメディアで報じられ、物議を醸している。
まず、「子どもは自分で描くことができる」のに、想像力を自分で育む機会をむしろ奪っているという指摘がある。
「なぜ、その予算を本物のクリエイターに依頼することに使わなかったのか?」と、AIが伝統的なデザインの役割を置き換え、職業としてのイラストレーターやデザイナーの仕事に悪影響を与える可能性があるとして、懸念も広がっている。
AIの使用が拡大することで、クリエイティブな仕事が減少することが予想されている。これは現在、多くの国で議論の対象となっている問題でもある。
教育機関で学ぶ学生たちの間では、「キャリアの初期段階で重要な小さなイラストの仕事をAIに奪われるのでは」という不安が広がっている。また、創造的な学問や職業に進むことや、それを生業とする意欲が低下しているという声も聞かれる。
こうした状況で、郵便局という大きな組織が子どもにAIを使用させ、クリスマス切手にその作品を採用したことは、若いクリエイターたちの不安をさらに煽る行為となった。
特に、クリスマスという人々の感情が敏感な時期に関連した取り組みであるため、ショックに感じる人もいるだろう。クリスマスというのは必ずしも多くの人が「幸せ」なわけではなく、むしろ孤独感や不安感が増す人もいる。
北欧独独の「議論を巻き起こす」を狙う行為
郵便局のクリスマス切手が注目を集める背景には、「郵便局は物議を醸すと分かっていながらあえて実行した」という背景が透けて見えるからだ。「わかっていて、やったのだろう」とは、現地の各ニュースでも指摘されている。
このように、北欧の企業や組織には「一部の人の感情に火をつける」と予測して行動する文化がある。
日本でいうと「炎上」に近い「議論」になっても、「私たちは社会的に重要な議論を生み出した」という独特のポジティブ解釈をするのだ(これは「注目を集めて広告・経済効果を狙う」のとはまた違う)。
問われる大企業の説明責任
郵便局の試みは、AI技術の推進という側面がある一方で、子どもの創造性を育む責任や、業界の労働市場にどのような影響を与えるかについて、改めて議論を呼び起こしている。
AIの進展が人間の創造性をどのように補完し、または置き換えるのかについて慎重に評価する必要があるといえるだろう。また、大企業がAIを使うときは、説明責任が問われることも象徴している。