ノルウェー国会が先住民に歴史的謝罪、現代の闘争と「和解」の皮肉とは
11月12日はノルウェーの先住民にとって特別な日となった。先住民族のサーミ人、クヴェン人、フォレストフィン人に対して、ノルウェー国会は過去の同化政策を公式に謝罪したのだ。
2018年、ノルウェー国会の「真実和解委員会」は、先住民に対する国家の扱いについて調査を開始。2023年夏に、700ページを超える報告書が提出された。言語、教育、名前、文化、産業など、先住民が失ってきたものと、今も受ける差別と苦しみの証拠をまとめたものだ。
1997年に、ノルウェー国王はサーミ人に対しては謝罪はしているが、クヴェン人とフォレストフィン人に対しては同様の謝罪はされなかった。
この日、国会では複数の政党の代表が謝罪したが、極右の進歩党は先住民に対して変わらず否定的な態度を隠さなかった。
国会で謝罪されれば問題が解決するわけではない。ノルウェーでは、先住民は今もメンタルヘルスの悪化に苦しみ、暴力や差別を受けている。謝罪されたくらいで消える傷ではないのだ。
この日は国会の外の広場に、サーミ人の移動式住居であるラヴヴォが設置された。先住民の象徴でもある「焚火の周りを、円で囲って対話する場」で、国会議員と先住民らが思いを言葉にして交流した。
「サーミ国会議長に『ラヴヴォを一緒に建てましょうか』と声をかけられたときに感極まりました」と、スヴァイン・ハルヴァルグ国会議員(保守党)が涙を流すシーンもあった。
今、国と先住民サーミの間には新たな亀裂が走っている。風力発電の建設がサーミのトナカイ放牧を困難にしているのだ。これは「グリーンコロニアリズム」と批判され、過去のアルタ闘争に続く「フォーセン闘争」とも呼ばれている。どちらも産業開発によって起きる、自然の土地を巡る対立だ。
だからこそ、「真実和解委員会」の報告書のタイトルでもある「和解」は皮肉だともサーミ人から指摘されている。過去の歴史を反省して、和解しようなんて気が本当にあるとはフォーセン闘争からは感じられないからだ。
それでも、この日はノルウェーの政治の権力が集まる場と、先住民たちにとって、新たな歴史を刻む日となった。
焚火を囲みながら、自由党のグルンデ・アルメランド国会議員が言った言葉が、筆者の頭の中で今もグルグルと連呼している。
「私はノルウェーの小さな村で育って、子ども時代に先住民のことを知る機会はなかった。社会科の教科書にもちょっとしか書かれていなかったから、大人になってから何が問題なのかを理解するのに時間がかかりました」
これは多くのノルウェー人にとって同じだろう。先住民は同化政策の影響で自らの言語やアイデンティティを奪われて、自分たちを語る術を失った。そして抑圧した側の子どもたちも、学習機会の欠如で、問題の根幹が分からずに育つ。そして、分断が強化される。
現場にいた先住民には、「これからの国会予算がどのように分配されるか」に注目するもの者もいた。先住民のことを学ぶ制度と教育に税金が分配されなければ、同化政策の傷跡は修復されないからだ。