存在感ゼロだった「水路」は癒しスポットになるか?メンタルヘルス向上も ノルウェー
北欧ノルウェーの首都オスロは、今年の「欧州・緑の首都」に選定されています。
日本では知られていない賞なので、ぴんとこないかもしれません。
詳細は「欧州都市が欲しがる「緑の賞」って何? 2021年の首都は、北欧のあの国」
今回は12の評価項目のひとつである、「自然と生物多様性」の実例を、ひとつあげたいと思います。
それは、「水路」!
水路が、「オスロが緑の首都に選ばれた理由のひとつ」と聞くと、「え?」と思いませんか?
普段の生活で、水路のことって、あまり意識しませんよね。
「水の道」。
洪水が排水され、私たちを守ってくれる。生物の命を育む道。よく考えると、「水の道」って、なんだかすごそう。
市民の心をリラックスさせる水路
「水路」を自然芸術・建築物のように、人々の心を癒す「かたち」にすることは可能でしょうか?
以前の水路は、パイプや排水渠(はいすいきょ、排水用のみぞ)で、市民の目からは隠れた場所にありました。
オスロは水路を造り直し、市民の目に見える場所に設置。
結果
- 大雨が起きた時の、水量調節がより簡単に(パイプよりも川がダイナミックだから)
- 生物の多様性につながり、市民も鳥や虫を観察できるように
- 住宅街など、都市のど真ん中に、ほっと一息できる癒しスポットに
- 子どもたちの遊び場が増えた
インターネットで、「水路」と画像検索してみてください。
オスロの水路は、これまでの水路とは違ったデザインであることに気が付くかもしれません。
「問題」だった川は、「解決策」に
かつてパイプが水路だった頃は、重工業用に使用されており、洪水が起きるとコントロールできる限界がありました。
川や湖型の水路になってからは、生物の住処に。
ホヴィン川・湖では、国のレッドリストに指定されていた2種類の鳥が、なんと戻ってきました!
「今の水路により、市民の暮らしの質、メンタルヘルス、水質、生物の多様性の向上につながります。それだけではなく、気候変動対策にも大きく貢献します」と市の都市環境課は説明します。
- 水路となって開かれた水路は10か所、354キロメートルに及びます
- 過去10年間で、2810メートルの水路を開きました
- 今後10年間で、8キロメートルの水路が増える予定
- 家からすぐ側にある川で、トラウトなどの魚釣りができます
水路が街の風景を豊かにする
気候変動により、洪水のような奇妙な天候は増加しているため、水路はより重要となります。
「水路」によって、都会に緑や生物が増え、市民の憩いの場所が増える。
民主的なデザインは、水路でも可能である。
私たちは、普段はそのようなことを、意識しないのではないでしょうか?
この日は他国の記者と一緒に、他のグリーン政策関連の場所も取材しました。そして、私たちの一番のお気に入りは、満場一致でこの水路でした。
私の中で存在感ゼロだった水路。この文を書いていたら、愛着がひたひたと沸いてきました。
Photo&Text: Asaki Abumi