存在感ゼロだった「水路」は癒しスポットになるか?メンタルヘルス向上も ノルウェー
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/top_image.jpeg?exp=10800)
北欧ノルウェーの首都オスロは、今年の「欧州・緑の首都」に選定されています。
日本では知られていない賞なので、ぴんとこないかもしれません。
詳細は「欧州都市が欲しがる「緑の賞」って何? 2021年の首都は、北欧のあの国」
今回は12の評価項目のひとつである、「自然と生物多様性」の実例を、ひとつあげたいと思います。
それは、「水路」!
水路が、「オスロが緑の首都に選ばれた理由のひとつ」と聞くと、「え?」と思いませんか?
普段の生活で、水路のことって、あまり意識しませんよね。
「水の道」。
洪水が排水され、私たちを守ってくれる。生物の命を育む道。よく考えると、「水の道」って、なんだかすごそう。
市民の心をリラックスさせる水路
![環境のために、水路も変化する Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image01.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「水路」を自然芸術・建築物のように、人々の心を癒す「かたち」にすることは可能でしょうか?
以前の水路は、パイプや排水渠(はいすいきょ、排水用のみぞ)で、市民の目からは隠れた場所にありました。
オスロは水路を造り直し、市民の目に見える場所に設置。
![オスロの水路を視察するなら、ホヴィン川がおすすめ Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image02.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
結果
- 大雨が起きた時の、水量調節がより簡単に(パイプよりも川がダイナミックだから)
- 生物の多様性につながり、市民も鳥や虫を観察できるように
- 住宅街など、都市のど真ん中に、ほっと一息できる癒しスポットに
- 子どもたちの遊び場が増えた
インターネットで、「水路」と画像検索してみてください。
オスロの水路は、これまでの水路とは違ったデザインであることに気が付くかもしれません。
![住宅街にある巨大な水路、白鳥がお出迎え Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image03.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![線路と住宅街の間にある水路。ベンチもあり、ゆっくり休憩できる。散歩道として人気 Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image04.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![水路にはサケ科であるトラウトが生息。「トラウトがいるということは、オスロ市が水路開設に成功したという意味です」と市の担当者は話す Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image05.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「問題」だった川は、「解決策」に
かつてパイプが水路だった頃は、重工業用に使用されており、洪水が起きるとコントロールできる限界がありました。
川や湖型の水路になってからは、生物の住処に。
ホヴィン川・湖では、国のレッドリストに指定されていた2種類の鳥が、なんと戻ってきました!
「今の水路により、市民の暮らしの質、メンタルヘルス、水質、生物の多様性の向上につながります。それだけではなく、気候変動対策にも大きく貢献します」と市の都市環境課は説明します。
![都市環境課のラスケモエン氏。後ろの建物は小学校、天井では大雨が降った時に水をため、水は水路へと流れる Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image06.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
- 水路となって開かれた水路は10か所、354キロメートルに及びます
- 過去10年間で、2810メートルの水路を開きました
- 今後10年間で、8キロメートルの水路が増える予定
- 家からすぐ側にある川で、トラウトなどの魚釣りができます
![住宅街、幼稚園、小学校の間を流れる水路では、カモがエサを探していた。のんびりとした雰囲気で、都会にいることを忘れる。奥にある車は電動で、電気を充電中 Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image07.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![灰色の建物と、緑色の自然、青い空のコントラスト Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image08.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![昆虫などが生息しやすいように、草はあまり切らない Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image09.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![巨大な水路は幼稚園のすぐ側に。洪水が起きた時に、子どもたちに危険ではないかという議論はもちろんあった。人を救いやすい深さにして、園周辺にはフェンスを設置 Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image10.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![水路周辺にはベンチ、飛び込み台もある。穏やかな空気が流れる市民の憩いの場に。奥の赤いバスは電動式 Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image11.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![トラウトがいるので、釣り人もくる。家のすぐ側で釣りができる贅沢! Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image12.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![レッドリスト指定の「バン」の親子が挨拶にきた。水路によって生物が戻ってくることを、市は誇りにしている Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image13.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
水路が街の風景を豊かにする
![10年前、この地域は、冬の汚い雪などを捨てている、工場地帯だった。今は自然であふれており、水路が街の風景を豊かにした Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image14.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![大きな湖のようだった水路は、水量調節のためにどんどん狭くなり、住宅街を静かに流れる Photo: Asaki Abumi](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abumiasaki/00132505/image15.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
気候変動により、洪水のような奇妙な天候は増加しているため、水路はより重要となります。
「水路」によって、都会に緑や生物が増え、市民の憩いの場所が増える。
民主的なデザインは、水路でも可能である。
私たちは、普段はそのようなことを、意識しないのではないでしょうか?
この日は他国の記者と一緒に、他のグリーン政策関連の場所も取材しました。そして、私たちの一番のお気に入りは、満場一致でこの水路でした。
私の中で存在感ゼロだった水路。この文を書いていたら、愛着がひたひたと沸いてきました。
Photo&Text: Asaki Abumi