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電車に乗って国境を超える楽しさ

にしゃんた社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)
山手線の駅にて(筆者撮影)

いつの間にか、日本のエスニックコミュニティーを回るのがライフワークになっている。

日本にいながら世界旅行がいとも簡単に出来る。本来なら時間をかけ、チケット、ビザ代を払い、旅行ケースを引きずり、飛行機に乗り、面倒な入国審査を受けてやっと外国に入れるのだと冷静に考えるとぞっとする。それに比べ、こっちの方が比にならないくらい気軽に国境を自由に行き来でき、もちろん経済的にもうんと安上がりである。

エスニックコミュニティーにひかれる大きな理由の一つは食事である。

都内なら、世界のほとんどの国の料理にありつけることが出来る。スリランカレストランに入り浸っていることは言うまでもないが、休みの日の定番コースの一つは、新大久保高田馬場である。新大久保は韓国コミュニティーで、高田馬場ではビルマ(ミャンマー)と出会える。駅も隣同士で、梯子だって出来てしまう便利な立地である。歩けないことも無いが、仮に電車に乗ったところで、初乗り130円で一つの外国から次の国へ何の気兼ねもなく移動できる。

新宿の定宿で、朝食に焼き魚、納豆、味噌汁、そして卵掛けご飯と、コテコテの日本(和食)を頂き、昼間は新大久保に移動。この時期なら体温まるユッケジャンで韓国を堪能、夕食と一杯呑みは、高田馬場のミャンマーコミュニティーでモヒンガー(米麺の和え物)を食べ、ミャンマーのそば焼酎か、ミャンマービールを飲みながら、ミャンマー語と日本語の行き交うカラオケで盛り上がる。休日の過ごし方としては、これほどまでに贅沢で充実した趣味は他にあるのだろうかと思う。もちろん、このコースに限らず他の国々の選択肢はいくらでもあるし、自由自在に組み立てられる。

希少価値からであろうか、地方都市なんかに行くと不必要に値段設定が高いエスニック料理店に出くわすことはたまにある。その点この上記の2つのコミュニティーに関しては同国のお店が密集していることにより競争原理が働いており、おまけに、顧客の中にそれぞれの国の出身者やその国にルーツのある人間の出入りが多いことも関係しているのか、高田馬場と新大久保のお店は値段的にもお得感満点である。

さらに、店員さんの接客はとてもフレンドリーで気さくなところが多い。今では、日本で街に食事に出かけても、気持ちのよい接客になかなか巡り合わない。「お客様は神様」なんて死後に等しい。別に神様扱いを望んでいるわけではないが、高田馬場と新大久保あたりに行くと、時として言葉がままならないということがあっても、マニュアル化していない接客の中で、お店側の一生懸命さと取り繕っていない素朴な優しさが滲み出ていることを感じることが出来る。ひと時の間、ここは日本国内だということを、忘れさせてくれる。一昔前の日本のどこにでもあっただろう接客の本質、素朴なぬくもりを味わうことができる。

2020年、久しぶりに東京にオリンピックがやってくる。東京に限らず、日本社会が国際名のもとにうんと成長する機会である。わざわざ東京に行く必要もない。日本全国各々の地域で素敵な異国料理店を贔屓にすることからスタートしよう。島国で電車やバスに乗って、国境を超える感覚、感性をもっともっと磨くために、エスニックコミュニティーを活用して国際に対する免疫をつけに出かけよう。

※ 参考資料として筆者が書いた下記の記事も合わせて読んでいただきたい。

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社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、経営者、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「ミスターダイバーシティ」と言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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