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「オレオレ詐欺」の次は「オレガイコクジン」-「外国人」を悪用する「不良日本人」

にしゃんた社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)
東警察署管轄の銀行内で発見したポスター。筆者による撮影(2000年)

Yahoo トップにも登場した兵庫県警が誤認逮捕 片言で「コンテナで韓国から来た」逮捕後「実は日本人です」というニュース。詳細な内容を読んでみることにした。

10月25日早朝2時50分頃、兵庫県尼崎市の飲食店で3人組の男が無銭飲食したと110番があったことを受けて、駆け付けた警察署員が、彼らは店側とは示談が成立していたものの、このうち1人が片言の日本語で「コンテナ内に隠れてフェリーで韓国から来た」と話したため、任意同行して現行犯逮捕している。しかし、男性は逮捕後「嘘をついた」と、黙っていた住所や連絡先を明かし、同署が家族に電話してうそが発覚し解放することになった。

私も以前、外国人として誤認逮捕された日本人についてニュースを書いたことがある。そこで、無実でかつ警察に対して正直に対応した日本国籍の者が外国人として誤認逮捕されていることの問題点を指摘した。その点、今回のニュースのタイトルは似ているものの、かすりもしないほど全く違うものである。一番大きく異なるのは無銭飲食するような不良日本人が片言の日本語を喋り、不法入国した外国人を演じ、成すまそうとした点である。一連の言動は悪意に満ちており、容赦の余地は見当たらない。

実は外国人に成りすまし悪事を働く日本人の存在はこの国のもう一つの隠された真実である。2006年に起きた一つの事件。

大阪府北部の 高槻市などで、覆面をした2人組の男によるコンビニ強盗が十数件連続して発生、府警捜査一課は、手口や現場の足跡が一致したことから同一犯による連続強盗事件とみて捜査本部を設置した。事件後の逃走に使用されたものと色やバンパーの特徴が酷似した軽自動車が吹田市内で見つかり、捜査本部は近く車の所有者である高槻市内の 20代男性から事情を聴く。調べでは、犯人はいずれも20〜30代で身長170センチ前後の男2人組。

出典:時事通信2006年 8 月22 日

ここまでは、どこにでもあるような事件だが、注目すべきはここからである。

店員に片言の日本語や英語で金を要求し、外国人に見せ掛けるなどの工作もしていた。被害は 計百数十万円。

出典:同上

日本人は優秀で、努力を怠らず、常に改善を重ね物事を良くする。KAIZENはもはや海外でも広く知られるようになっている。改善は世を良くするためのみ活かすならば良いが、善人ばかりではない。悪事にも活かしていることがこの国の目立った問題である。

「オレオレ詐欺」止まる所を知らない日本社会の大問題である。子を産み落とした親に対して我が子に成りすことの出来る日本人詐欺師らの匠さには世界が驚く。改善を繰り返しては子のように見せかけて親を騙せる程の高い演じ力と演出力。そんな不良者などからすれば、片言風に日本語を喋って外国人に成りすますことは朝飯前であるに違いない。

真面目な日本人を外国人として逮捕したり、不良な日本人を外国人として逮捕したりと全く違う問題でありながらも、「日本人を外国人として誤認逮捕」した点で共通しているこれらの事件、そして繰り返される警察による謝罪。警察側も頭を抱えていると思われるが、これらの根っこは警察が自ら撒いた種のしっぺ返しではないか。

日本のどこの都道府県の警察も基本的に外国人に対する姿勢が厳しい。筆者、2001年~2007年ぐらいまで、鳥取県警のホームページで書かれていた犯罪関連呼びかけの文言を記憶している。そこに書かれている「あれは・・・」「もしかしたら・・・」と思ったら迷わず110番という箇所に「怪しい者として」その1.地元で見かけない外国人、2.片言の日本語で道を尋ねる外国人、3.交通機関の利用が不自然な外国人が上げられていた。

全くの善良な外国人友人などに対しても、逮捕される可能性があるため、鳥取には旅行しないように注意したことを覚えている。

さらには、日本の警察は外国人に対しては「不良」や「不法」とつけることには抵抗がなく「不良外国人」や「不法外国人」と平気で使う。日本人多数派本位の世の中において誰もそのことを指摘することはない。逆に言うと、大勢いるにもかかわらず、少なくとも日本の行政が発する内容で「不良日本人」や「不法日本人」などの文脈は見たことがない。

警察なども一緒になって作り上げてきた日本社会に蔓延している、「悪いことをする」つまり「不良」「不法」イコール「外国人」という偏った常識を徐々に訂正していくことが必要ではないか。たとえ犯罪者は自ら外国人と自己紹介をしても「日本人ではないか?」と疑うこともこのご時世は大いに必要である。今回の事件は警察にとってその免疫をつけるいい機会であっただろう。

国際化時代において、さらにはオリンピックなどの祭典も控えている日本における公的機関である警察として国籍など問わず住民に対して均衡のとれた感覚をもち、何人にも平等に公僕することが望まれる。均衡のとれた感覚を覚えた時には公文にも変化が生まれるのではないか。防犯を呼びかける「外国人」だけを特定した「不法外国人」や「不良外国人」などの文言がいつになったらなくなるのか注目したい。

※ 参考資料として下記の記事も合わせて読んでいただきたい。

日本人のあなたが外国人として逮捕される日。

ジャパニーズ・オンリー!(Japanese only!)繰り返さないために。

あなたは、ジャパニーズ・オンリーを見分けられますか!?

社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、経営者、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「ミスターダイバーシティ」と言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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