米議会予算局が指摘した極超音速兵器の技術的課題とは?
米軍は極超音速ミサイルを配備するための技術的課題を克服する必要がある――。米議会予算局(CBO)が1月31日に公表した報告書は、こう指摘した。
「米国の極超音速兵器と代替兵器」と題されたこの報告書は、同国の陸軍、海軍、空軍の3軍それぞれが開発中の極超音速兵器を分析し、既存の弾道ミサイルや巡航ミサイルと比較した。その上で、極超音速ミサイルの技術的課題の1つとして、極端な温度に耐えられる必要性があると次のように指摘した。
「今も残っている基本的な課題は、極超音速ミサイルがその飛行の大半を高速で大気圏内を移動する中、極度の熱にさらされることを管理することだ(これは、大気圏を低速で飛行する巡航ミサイルや、主に大気圏外を飛行する弾道ミサイルとは異なる)。極超音速ミサイルの敏感な電子機器を保護したり、さまざまな材料がどのように機能するかを理解したり、華氏3000度(=摂氏約1649度)もの高温での空気力学を予測したりするには、広範な飛行試験が必要だ。試験は進行中だが、近年の失敗によって開発が遅れている」
●極超音速ミサイルはコスト高
また、同報告書は、極超音速ミサイルのデメリットとしてコスト高を指摘した。具体的には300発の弾道ミサイルを調達して20年間維持するには2023年のドル換算で134億ドル(約1兆7260億円)の費用がかかる一方で、同数の極超音速兵器には179億ドル(約2兆3052億円)の費用が必要になると試算した。
同報告書は「極超音速ミサイルのコストが高いのは、極超音速飛行の熱に耐えられるシステムを構築する複雑さを部分的に反映している」と指摘した。
しかし、これらのマイナス面があるのにもかかわらず、同報告書は極超音速兵器が効果的である点も強調している。
●高い精度と低い脆弱性
弾道ミサイルと極超音速ミサイルが、ロシアや中国など仮想敵国が展開する接近阻止・領域拒否(A2/AD)ゾーンを超えて作戦能力を発揮でき得ると同報告書は指摘。特に極超音速兵器は、理論的にこれらのゾーンの射程外から発射でき、数百から数千キロメートルの準中距離から中距離のターゲットに数分以内に到達できるほか、既存のミサイルよりも高い精度を有し、迎撃に対する脆弱性が低くなると指摘した。極超音速兵器は相手の近接防御に対し、高速で予期せぬ機動を発揮できる。
機動式の弾頭を備えた弾道ミサイルについては、非常に効果的な長射程の迎撃システムに対しては大気圏外のミッドコース(中間)でも脆弱になる可能性があると指摘した。しかし、現段階では米国のいかなる仮想敵国も、そのような迎撃システムを有していないと述べた。
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