アメリカ同時多発テロから20年「まだ終わっていない」... NY倒壊跡地はいま
2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件から、もうすぐ20周年を迎えようとしている。
我々の多くが戦時中のことを歴史の教科書で学んできたように、これからの若い世代もこの同時多発テロについて教科書で学ぶ時代となった。あの年に生まれた人が今年ハタチとなり成人した姿を見ると、長い年月の経過を感じずにはいられない。
20年企画シリーズの第一話として、本稿では倒壊跡地の現在の様子をお届けする。
ニューヨークはテロが起こったあの日、秋晴れの美しい朝だった。しかし突然、世界貿易センター(ツインタワー)に2機の旅客機が激突してビルが倒壊し、ビルで働いていた人、救助に向かった消防士や警官など多くの人々が命を落とした。
これをきっかけにアメリカは「テロとの戦い」を宣言し、実行犯とされる国際テロ組織アルカイダを倒すため、その指導者ウサマ・ビンラディン容疑者をかくまったなどとしてアフガニスタンに侵攻した。アフガニスタン紛争の始まりである。そして20年間にわたる米軍駐留後、「成果が見られない」として今年8月末をもって米軍が撤収し、米史上最長となった戦争に終止符が打たれた。
これで911は本当に終わったのだろうか?
この20年で世界は少しでもより良い方向に進んだだろうか?
ツインタワーの倒壊跡地は現在、亡くなった犠牲者を悼み、悲劇を後世に語り継ぐための場所「グラウンドゼロ」となっている。
犠牲者一人一人の名前が刻まれた慰霊碑の9/11メモリアルと博物館も作られた。
1993年に発生した世界貿易センター爆破事件の犠牲者6人を含む合計2983人をここで追悼し、ビルの残骸や写真の展示で2001年のテロや93年の爆破事件を伝えている。
博物館を案内してくれた女性スタッフによると、コロナ禍前はこの博物館だけで1日8000人が訪れていたそうだが、パンデミックでサイト自体が閉鎖となり、昨年9月11日(一般向けには12日)に再開した。客足は以前の半数になったが、最近は徐々に戻りつつあるという。
また毎年9月11日の午前中、遺族を対象にした追悼イベントが行われており、今年も予定されている。
女性スタッフによると、北棟と南棟があった場所をつなぐ青の壁のインスタレーション、Trying to Remember the Color of the Sky on That September Morning(9月の朝の空の色を思い出そう)は犠牲者一人一人を表し、2983個の青みがすべて異なる。
また、このインスタレーションの向こう側は一般の人は入れないが、実は犠牲者のDNA鑑定をしている市検死官オフィスだという。倒壊跡地で行方不明になったままの人はいまだに多く、倒壊跡地から発見された2万2000もの遺体の一部がDNA鑑定されているが、それらのDNAが倒壊跡地の死者の40%にあたる1106人とまだ照合できていないとされている。あくまでも遺族の意向を尊重しながら、20年経った今でもDNA鑑定作業は地道に続けられている。
「つい2週間前も新たに2人分の身元が判明したばかりです」(女性スタッフ)
2001年の同時多発テロは過去の出来事でも何でもない。こうやって、20年経った今でも終わっていないのだ。
- アメリカ同時多発テロから20年。【911から20周年】の第2回目は、グランドゼロだけではない、ニューヨーク市内の911慰霊碑を訪れます。
9月11日の記念式典
グラウンドゼロでは遺族を対象に20周年記念式典が行われる。
2021年9月11日 8:30am - 1pmごろ
(この日は一般の人の博物館入館不可。式典はライブストリーミングされる)
日没後から翌日まで、北・南棟に見立てた2本の光のタワー、Tribute In Light(トリビュート・イン・ライト)も照らされる。
そのほか、全米各地では追悼式典が行われる。
(Text and some photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止