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「庭いじり」で「がん死亡」リスクが19%減少?1万4千人観察で判明【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

日本ではダントツに多い「がんによる死亡」

いきなり気の滅入るグラフでごめんなさい。少し前になりますが、日本人の死因を調べたデータです。「がん」で亡くなる方が圧倒的に多いのが分かります。

「がんは治るようになった」と言われますが、それはほんの一部のラッキーな人の話なのかもしれません。

都内のある有名ながん専門病院の霊安室を見た時にも思いました。驚くほど広いのです。場合によっては一晩にそれだけの患者さんが亡くなられるということなのでしょう(その病院では毎年、集団慰霊祭も実施しています)。

それはさておき、今回は「ガーデニングする人はガンで死ぬ確率が低い」という論文です。

「栄養, 代謝と心臓血管疾患」という、イタリア糖尿病学会が発行する学術誌に載りました。 (でも)筆者は中国・中山(ちゅうざん)大学のジンホン・リャン氏たち。研究対象は米国人と、なかなかインターナショナル(?)な研究です [文末文献1] 。

米国住民1万4千人を観察

今回同氏たちが解析したのは、普通に暮らしている1万4千名弱の米国人

米国では定期的に全国から住民を任意抽出して、健康に関するいろいろな調査を行なっています。この調査は頭文字をとって「NHANES」(エヌヘインズ)と呼ばれるのが普通です(知っているとちょっと格好いいかもしれません)。

この1万4千人では、観察開始時の調査票で「庭いじり」(ガーデニング)をするかどうかが分かっていました。そこでリャン氏たちはそれから約17年後の彼らの生死を調べ、「庭いじり」との関係を調べたのです。

「庭いじり」する人はガンで死ぬ確率が19%低値

すると驚くことに「庭いじり」を「する」と答えた人は「しない」人たちに比べ、がんで死亡する可能性が相対的に19%、減っていたのです(0.81倍)。

「がんで死ぬ前に他の病気で死んでいるからじゃない?」と思ったあなた、非常に鋭いです。理論的にはその可能性も否定できません。

でも米国人最大の死因である心臓血管系疾患(心筋梗塞や脳卒中など)で死亡する確率も、「庭いじり」する人では相対的に35%、減っていました(0.65倍)。

さらに「全死亡」で比較しても、「庭いじり」で確率は24%減っていたのです(0.76倍)。

理由は「体を動かす」から?「ストレス解消」も?

ではなぜ「庭いじり」する人たちでは「がん死亡」が減っていたのでしょう?

リャン氏たちは「体を動かす」からだと考えているようです。

あまり知られていないかもしれませんが、体をよく動かすとがんになる確率は下がります。

これまでに報告された研究をまとめて解析すると、おおむね10から20%は発がん率が減るそうです [文末文献2] 。

一方、「庭いじり」をすると「ストレス」が減り、また(なぜか)「繊維質の摂食量が増える」という研究もあり、それが発がんのリスクを減らしていると推測する研究者もいます [文末文献3]。

もちろん「因果関係はない」可能性も否定できません。つまり「庭いじり」する人たちに共通する何らかの性質が「がん死亡」や「総死亡」のリスクを低くしている可能性です。

でもここは「因果関係あり」に賭けてみませんか?がんになってからでは手遅れかもしれませんし。

まとめ

いかがでしたか?

「庭いじりをする人はガンで死ぬ確率が低い」という論文のご紹介でした。

庭をお持ちの方にとっては「ラッキー」な論文ですが、庭がない方は週末農園でも借りられてはいかがでしょう?お金はかかりますが、がんの治療費に比べれば安いものかもしれません。

「がん」については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 庭いじりをする人はがん死亡の確率が低い。
  2. 身体活動性の高い人は発がんりすくが低く、がんになってからの死亡率も低い。
  3. 庭いじりをする人はストレスが少なく、食物繊維をよく食べる

【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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