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「加工食品」の1割を置き換えるだけで「がん」のリスクが低下。45万人データ解析【最新医学論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

若くてもがんで亡くなる人は多い

日本人の死因として「がん」が一番多いのはご存知だと思います。でも「がん」のことを「年寄りの病気」だと思っていませんか?「長生きすればがんになるのも仕方ない」などと聞きますよね?でも若い人でも、がんで亡くなる方は決して少なくありません。あなたもまわりにもいらっしゃいませんか?

厚生労働省がまとめている人口動態統計で2022年の数字(第7表)を見てみましょう。すると「40~44歳」ですでに「がん」は日本人の死因第一位となっていました。「25〜39歳」でも2番目に多い死因です(ちなみにこの年代の最大死因は「自殺」でした。限りなく悲しいことです)。

若いうちから「がん」の予防に取り組む必要性がお分かりいただけると思います。

食事は有効ながん予防策

がんの予防については国立がん研究センターが科学的根拠に基づく「日本人のための癌予防法」を公表しています。予防法の一つに「食生活を見直す」がありますね。

この「食生活」が今回の本題です。

欧州の45万人を調べたところ、「加工食品の摂取が少ない」ほど「がん」になる危険性が低いことが明らかになりました。ブラジル・サンパウロ大学のナタリー・クリーマン氏たちが「ランセット公衆衛生」に報告した論文をご紹介します [文末文献1]。

「ランセット」は世界の四天王の一角を占める臨床医学系の学術論文誌、その兄弟誌に掲載ですから信頼性も高いでしょう。

45万人を10年以上観察した貴重なデータ

今回クリーマン氏たちが解析対象としたのは、欧州10カ国在住でがん診断歴のない約45万人です。観察を始める際に質問票で食事習慣を把握し、食事とその後12〜22年間の「がん」発症との関係を調べました。

食事は素材にどれほど加工が加わっているかに従い、次の4カテゴリーに分けられました

  • (ほぼ)無加工食品:添加物なし
  • 素材として加工された食品(添加物は天然由来のみ):
  • 保存食品:缶詰、パン、チーズ、燻製された肉——など。
  • (超)加工食品:ソーセージ、ハム、炭酸飲料、菓子パン、菓子類、インスタント食品

その結果、「保存食品」の1割を「(ほぼ)無加工食品」に置き換えるだけで「がん」になるリスクは4%下がることが明らかになりました。特にこの置き換えによるリスク減少率が大きかったのは「食道がん」(相対的に34%のリスク減)と「肝臓がん」(同28%)です。

同じように「(超)加工食品」の1割を「(ほぼ)無加工食品」に置き換えると、やはり「がん」になるリスクは3%減りました。こちらでも減少率が大きかったのはやはり「食道癌」(同34%)と「肝臓がん」(同28%)でした。さらに「頭頸部がん」(鼻から喉の間にできる様々ながんの総称)も「(超)加工食品」から「(ほぼ)無加工食品」への「1割」置き換えで、相対リスクは24%低下することが分かりました。

この結果は、食事以外の要因が発がんに与える影響を統計学的に除去して得られたものなので、クリーマン氏たちは食事が発がんリスクに影響を与えたと考えているようです(理論的には、特定の食事を好む人たちに共通する未知の因子が「発がん」リスクに影響を及ぼしている可能性もあり)。

おしまいに

いかがでしたか?「食事に気をつけてもそれほどがんのリスクは減らないな」と思った方もいらっしゃるでしょう。しかし「食道がん」の5年生存率は約40% [がん情報サービス]、肝臓がんに至っては36% []です。予防を心がけて損はありません

加えてこの数字は「1割」を置き換えた場合の減少率です。もっと多くを健康な食品に置き換えれば、さらに大きな減少率が期待できるかもしれません。

「(ほぼ)無加工食品」の割合が高い食事とは、簡単に言えば「マメに料理された」食事。さあ、ご飯の準備をする際、一品だけで良いので「素材」から調理してみませんか?きっと未来の自分が感謝してくれますよ。

がんについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

加工度の低い食品への置き換えでがんリスク低下 [英語、無料]

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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