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業界や業種によって女性の発癌リスクは違うって本当?国勢調査データ解析を調べてみた。

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター
作者:himawariinさん

「仕事」もガンのリスクです

「ガンの危険因子」と聞くと「タバコ」や「大量飲酒」を筆頭に生活習慣を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。あと「糖尿病」などの一部疾患も、ガンのリスクを上げますね。

しかしそれだけではありません。「どんな仕事に就いているか」、そして「職場でどのような立場にあるか」によっても発ガンのリスクは変わってくるのです。

それを日本人女性のデータで明らかにしたのが、国際医療福祉大学・和田耕治教授(当時)のチームです。論文が掲載されたのは「英国医学雑誌(BMJ)公衆衛生」。臨床医学では四天王に数えられるBMJの兄弟誌です。掲載されたのは少し前、2022年の11月でした [文末文献1] 。

早速、内容を見てみましょう。

働く世代の女性の命を奪っていたのは「胃ガン」「大腸ガン」「肺ガン」「すい臓ガン」だった

和田教授たちは日本全体を対象とした調査データ、すなわち「国勢調査」データと「人口動態統計」データを突き合わせ、25歳から65歳女性の「ガンによる死亡」リスクを調べました。そしてその結果を「業種別」と「役職」別にまとめたのです。

すると2005年、2010年、2015年の調査3回を平均すると、25歳から65歳女性で最も死者が多かったのは「胃ガン」。次いで「大腸ガン」「肺ガン」「すい臓ガン」の順番でした。

今回はこれを「職種」別に見た結果をご紹介します。

胃ガンに注意すべき職種は?

まず一番死者が多かった「胃ガン」から。

胃ガンで亡くなる方の割合が最も高かった職種は「管理職」。次いで「保安職」と「輸送・運転職」でした。どの職種も胃がキリキリするようなストレスを感じそうですね。

逆に胃ガンで亡くなる方の割合が低かったのは「製造職」や「事務職」「販売職」でした。

「運送・運転職」は大腸ガンに要注意

次は「大腸ガン」です。

このガンで亡くなった方の割合は「運送・運転職」が最多でした。続くのが「管理職」と「保安職」。これら上位3つは胃ガンと変わりません。

また「サービス職」では胃ガンに比べ大腸ガンで亡くなる方の割合が3倍近く増えていました

「農林業従事」者と「販売職」でリスクが高いのが肺ガン死

「肺ガン」で亡くなった方の割合はどうでしょう。

こちらは「運送・運転職」が最多。「管理職」と「保安職」が続きます。

また「農林業従事」者と「販売職」で、「胃ガン」や「大腸ガン」に比べて亡くなる方の割合が多い傾向も見られます。タバコを吸いやすい職種ということでしょうか?

どのガンも職種により死亡率は大きく異なる

最後は「すい臓ガン」です。

このガンで亡くなる人の割合が高かったのは「管理職」と「運送・運転職」でした。

それにしても職種によって、ガンによる死亡率にかなり差があるのに驚かされます。なぜこれほど異なるのでしょう?

和田氏たちは次のように考察しています。

仕事別の「ストレス」や「生活環境」が発ガンリスクに影響の可能性

一つ目は「ストレスの差」。

ストレスがかかる職種ほどガンになりやすく、その結果、ガンで死亡するリスクが高いのではないかというのです。

また「食生活の違い」が影響を与えた可能性もあると言います。

例えば「事務職」に比べ「保安職」や「運送・運転職」ではどうしても食事を短時間ですませがち。それがガンのリスクに跳ね返ってくる可能性があります。

もう一つが「勤務時間」。

夜勤を含む交代勤務は正常なメラトニン分泌を妨げ、それが発ガンリスクを上げる可能性があるそうです。

ガンは日本人最大の死因。職種別のリスクも考慮しませんか

いかがでしたか?

日本人女性では職種によってガンで死亡するリスクに差があるかもしれない、というデータをご紹介しました。

ご存知の通り、ガンは現在、日本人の最大死因です。

もし現在、ガンで死亡するリスクの低い職種に就いていたら、「ラッキー」なのかもしれません。少しくらい仕事が好きでなくとも、少しは心が安らぎませんか?

逆にリスクの高い職種の方は、少なくとも職場健診だけはどれだけ忙しくても受けた方が良いでしょう。

ガンについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!

「抗酸化作用」は「諸刃の剣」。「発がんリスク上昇」を報告する研究も

「男性は野菜」「女性は果物」で「肝臓がん」リスク低減?13万人データ解析で明らかに

「食事からのフラボノイド摂取増」で「ガン死リスク減」。1万人8年弱観察データ

今回ご紹介した論文

  1. 日本人女性のガン死亡率は職種・業種で異なる

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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