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肝がんになりにくい人たちの避けていた飲料が明らかに。10万人解析データ【最新論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

肝がんによる死亡はがんの中で5番目の多さ

「がん」と聞くと「肺癌」や「乳癌」を想起する方が多いのではないでしょうか。でも肝臓の癌(肝がん)も忘れてはなりません。2019年の数字ではわが国のがん患者死亡者数では5番目に多い癌種でした。1年間に肝がんと診断されるのは4万人弱に上ります [日本肝臓学会「肝がん白書」5頁] 。

肝がんを引き起こす危険因子としてはウィルス性肝炎や大量飲酒などが知られていますが、実は肝がんと診断された4割の患者さんには、このような危険因子がなかったとの報告があります [文末文献1] 。つまり、まだ「隠れた」肝がん危険因子が身の回りに潜んでいる可能性があるのです。

砂糖含有飲料をめったに飲まない人は肝がんリスクが低い

その隠れた危険因子を探った研究が8月8日、米国医師会雑誌(JAMA:ジャマ)に掲載されました。JAMAは臨床医学系学術誌としては4本の指に入る、信頼性の高い論文誌です。そこで示唆された「肝がん危険因子」は「砂糖含有飲料水」。これをよく飲む人は、肝がんになる危険性が高くなっていたのです。逆に言えば、肝がんになりにくい人たちは砂糖含有飲料を控えていたということです。米国・南カロライナ大学のLonggang Zhao氏たちによる論文を簡単にご紹介します [文末文献2] 。

今回Zhao氏らが解析の対象としたのは、米国の女性看護師たちを観察したウィミンズ・ヘルス・イニシアティブというデータセット。50歳以上の閉経女性9万8千人余のデータを調べました。

その結果、約20年間に0.2%が肝がんとなりました。500人に1人の計算です。そして1日に砂糖含有飲料を「毎日飲む」人たちは、「月に3回以下」の人たちに比べ、肝がん発生率が高く()、肝がんになるリスクは相対的に85%も高くなっていました(1.85倍)。

一方、人工甘味料入り飲料は肝がんリスクに影響を与えていませんでした。しかしZhao氏たちは「人工甘味料で肝がんリスクは上がらない」と楽観することなく、今後も観察が必要だと警鐘を鳴らしています。

砂糖含有飲料摂取後の急峻な血糖上昇が肝がんリスクを高めている可能性

もちろんこの結果からは「砂糖含有飲料が肝がんを増やす」とは断言できません。砂糖含有飲料をよく飲む人たちに共通の何か別の因子が肝がんリスクをあげている可能性も否定できないからです。

しかしZhao氏たちは「砂糖含有飲料が肝がんを増やす」と考えています。そして肝がんが増える理由として、1)砂糖含有飲料を飲んだ後の急峻な血糖上昇(が引き起こす「インスリン抵抗性*」)や、2)砂糖が腸内細菌叢(腸内環境)に与える悪影響などを挙げています。

インスリン抵抗性:細胞内に糖を取り込むよう促したり、肝臓による糖の酸性(糖新生)を抑制したりするインスリンの働きが弱くなる状態。インスリン抵抗性は肝がんリスクである可能性が報告されている [文末文献3]。

最後に

お酒が好きで「肝臓がちょっと心配だな」という人ならば、砂糖入りの飲み物を減らしても損はないでしょう。また、コーヒーの砂糖にも気をつけたいですね。

甘味飲料については以下の論文紹介記事も書いています。こちらもぜひご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 既知の危険因子を持っていた肝がん患者は6割のみ [英語、無料]
  2. 砂糖含有飲料多飲で肝がんリスク高 [英語]
  3. 砂糖が肝臓に与える悪影響 [英語、無料]

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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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