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「寝言」の多いあなた、「脳卒中」にご用心!8000名データからの警告【2024年秋最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター
作者: サウナ猫

「死因」としては第4位にまで減った脳卒中。でも「要介護」の原因としてはトップクラス

かつて「脳卒中」は日本人の最大死因でした。

栄養状態が悪く血管が脆弱だった上に、食塩の取り過ぎで高血圧の人が多かったので、脳血管が破れる人も多かったのです。

しかし栄養状態の改善や血圧管理が進むのと並行して「脳卒中」は減少。今では「がん」「心疾患」「老衰」に次ぐ4番目(6.6%)になるまで減りました [厚生労働省2023年「人口動態調査」10頁] 。

しかし「脳卒中」が怖いのは、生き延びても「障害」の残る可能性があることでしょう。

最新の統計では「介護が必要な人」の19%は、その原因が「脳卒中」でした。「要介護」の約5人に1人は「脳卒中」が原因という計算になります [厚生労働省2022年「国民生活基礎調査の概況」23頁] 。

だからやはり、脳卒中は注意深く、予防した方が良いですよね。

「寝言」を言う人は脳卒中の危険性が高い?

その脳卒中、「寝言」を言う人はリスクが高いという驚きの論文が、去る10月30日に発表されました [文末文献1] 。

「脳卒中」と言えば脳の血管が破れたり詰まったりして、脳に血液が行き渡らなくなる病気。「寝言」と一体どんな関係があるのでしょう?

書いたのは中国復旦(ふくたん)大学のイン・リウ博士たち。論文は10月30日、米国心臓病協会(AHA)雑誌という学術誌に掲載されました。AHAは米国最大の心臓病・脳卒中学会です。

「寝言」があるとリスクが30%も増

今回リウ博士たちが調べたのは、中国在住で脳卒中を起こしたことのない約8千人。質問票を使って「寝言」の有無を確認し、その後8年間の脳卒中発症リスクとの関係を探りました。

すると、「寝言」の経験が「ある」人たちでは「ない」人たちに比べ、脳卒中を起こすリスクが相対的に30%、高くなっていました(1.3倍)。

さらに、「寝言」を言っている時間が長くなるほど、脳卒中の危険性は増していたのです。

ちなみにこの値は、「高齢」や「高血圧」、「喫煙」や「飲酒」など、脳卒中のリスクを上げる因子の影響を統計学的に取り除いたあとの数字です。

つまり「寝言」と「脳卒中」の間に直接、何らかの関係があると考えられるのです。

「睡眠の質」低下が脳卒中のリスクを上げる?

ではなぜ、「寝言」をいう人では脳卒中になる危険性が高いのでしょう?

リウ博士たちは「睡眠の質が低くなるから」と考えています。

事実、今回の調査でも「寝言」をいう人たちではそうでない人たちに比べ、「日中に睡魔を感じる」人が多くなっていました。つまり「寝言」を言う人は「眠りが浅い」、あるいは「何度も目が覚めていた」可能性が高いと考えられるのです。

そのような質の低い睡眠では、質の高い睡眠に比べ「交感神経」系が活性化され、それが脳卒中の危険性を挙げているのではないか、これがリウ博士たちの挙げる仮説の一つです。

ちなみに「交感神経」系が活性化されると、血管は収縮して血圧は上昇、加えて心拍数も増えます。つまり「血管」にかかる負担はかなり大きくなりそうです。

破れたり詰まったりするのも無理ないのかもしれません。

「寝言」以外の危険因子に手をつけましょう

とは言え「寝言」を止める方法はありません。

したがって「寝言」をいう人は、それ以外の脳卒中リスク因子を減らすのが賢明でしょうし。手っ取り早いのは「高い血圧」や「大量飲酒」、「喫煙」などです。

かく言う私も「寝言」派です。お互い、気をつけたいものですね。

脳卒中については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 寝言を言う人は脳卒中を起こすリスクが高い

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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