「がん」で死なないための意外な秘訣。それは「普段のVILPA(ヴィルパ)」【最新エビデンス】
がんにならない人たちの生活習慣が明らかに
長寿化が進み国民の2人に1人ががんにかかると言われている日本。がんは日本人の最大死因でもあります。そんながんによる死亡(がん死)リスクを簡単に減らせる方法が見つかりました。日々の生活の中で「ちょっとしんどい行動」をとるだけでがん死のリスクが減るというのです。2022年12月8日、学術誌「ネイチャー・メディシン」に載ったEmmanuel Stamatakis博士(シドニー大学、豪州)たちの研究をご紹介します。
英国の2万5千人を解析
同氏らが解析したのは、UKバイオバンクという自主参加型の観察研究です。この中からがん診断歴がなく「余暇に運動はしない、そして毎週決まった散歩もしない」と答えた英国の2万5千名強を選びました。そしてこの人たちに7日間、手首につけた運動センサで日々の身体活動を記録してもらい、それから約7年間に生じたがん死との関係を調べました。
注目した身体活動は「長くても2分ほどで終わる比較的強度の強い、常習ではない身体活動」です。Stamatakis氏らはそれをVILPA(ヴィルパ:Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity [日常生活中の短時高強度身体活動])と名づけました。具体的には、通勤や移動の際の短時間の超速足歩行や坂道上がり、少し重い買い物袋を運ぶ——などです。簡単に言えば「生活の中のちょっとしんどい行動」がVILPAと考えて良いでしょう。
VILPAでがん死が4割減少
すると1日にまったくVILPAが記録されていなかった人たちに比べ、がんで死亡するリスクは
1)1日に1回「最長2分間」のVILPAがあっただけで3/4ほどに減り、 2)これが1日3回まで増えるとさらに、およそ6割にまで低下しました。
さらに「回数」ではなく「時間」を増やしてもOKです。 1日1回でもVILPAが5分弱続けば、VILPAがまったくなかった人たちに比べの、がん死亡リスクは7割ほどに下がっていました。
運動習慣はなくても大丈夫
ポイントは、研究対象は「運動習慣のない」人たちだったという点。つまり運動習慣がなくとも、日常生活で早足や階段上りなど「ちょっとしんどい行動」を避けなければ、それだけでがんによる死亡リスクが減ると考えられるのです。
なぜなんでしょう?Stamatakis博士たちは、身体活動増加による体内の「炎症抑制」や「免疫賦活化」などが発がんを抑える可能性を指摘しています。
なおVILPAが増えると心臓血管系の疾患で死亡するリスクも減ることも、今回の研究から明らかになっています。一石二鳥です。
まとめ
さあジムに行けなくても、ウォーキングができなくても、将来がんで死ぬリスクを減らすため、日々の生活で「ちょっとだけしんどい行動」を選んでみませんか?エスカレーターよりも階段、キャスター付きバッグではなくトート、スマホを見ながらゆっくり歩くより早足移動後スマホ確認——、できることはたくさんありそうです。
今回ご紹介した論文は「ネイチャー・メディシン」ウェブサイトで全文を無料で閲覧可能です(英語)。無料翻訳サイトDeeplを使えば簡単に日本語にも直せます。
また「身体活動」の最新医学エビデンスについては、以下の記事も書いています。「血糖値を下げるための運動は実施時間によって効果が違う」という論文の紹介です。ぜひお読みください。
・血糖値高めのあなた、エクササイズは「午後」か「夜」に集中がお得。軽くてもOK
それではまた!
【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、論文や研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」の見解です。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。