Yahoo!ニュース

藤井聡太竜王の独走か?それとも??年明けから注目のWタイトル戦!ー2023年将棋界展望ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
2023年はさらにタイトルを増やすか? 写真は2019年のもの(写真:森田直樹/アフロ)

 あけましておめでとうございます。

 私事ながら、昨年は副会長を務める日本将棋連盟棋士会の東日本大震災復興支援イベントを再開できました。大きな一歩であり、少しずつ日常が戻ってきたことに喜びを感じます。

 2023年も棋士ならではの視点を交えて将棋界の動向をお伝えしますので、お付き合いのほどよろしくお願い致します。

2022年振り返り

記事中の画像作成:筆者
記事中の画像作成:筆者

 まずは2022年のタイトル戦を振り返ろう。

 タイトルの移動はわずかに一つ。藤井聡太竜王(20)が四冠から五冠にタイトル数を増やす結果となった。

 渡辺明名人(38)が三冠から一つ減らして二冠に。

 永瀬拓矢王座(30)は挑戦に2度失敗したが、虎の子の王座を防衛した。

 藤井竜王は4つのタイトルを全て防衛。タイトル戦の成績はこれで11戦負けなしと恐るべき勝率を誇っている。

 初戦を落とすケースが多く(4つの防衛戦のうち3つ)ファンをヒヤッとさせるが、そこから力を発揮して勝ち星を積み重ねた。

 藤井竜王は先手番での勝率が脅威の9割超え!この勝率であれば番勝負で負けることは相当にない。

「盤石の先手番」勝利で藤井聡太竜王が初防衛。藤井竜王を後手番で崩すにはどうすればいいのか?

 この勝率が続くのならば、タイトル戦での無敗記録が更新されていくだろう。

Wタイトル戦と順位戦

 2023年は注目のWタイトル戦で幕を開ける。

 まずは第72期ALSOK杯王将戦七番勝負で藤井王将は羽生善治九段(52)を挑戦者に迎える。

 こちらは1月8・9日に開幕する。

 ファン待望のシリーズ、初戦から注目度が高くなるだろう。

 そして第48期棋王戦コナミグループ杯で藤井竜王は渡辺棋王に挑戦する。

 こちらは2月5日(日)に開幕する。

 同時進行のタイトル戦で防衛を果たせば、六冠目なるか、という観点で注目されるだろう。

 1~3月は順位戦が佳境を迎える時期だ。

 現況や注目ポイントは下記の記事をご参考ください。

藤井聡太竜王、名人挑戦なるか?挑戦争いは激戦に-第81期順位戦A級中間展望-

藤井聡太竜王を追う次世代の昇級の行方は?ー第81期順位戦B級1組~C級2組中間展望ー

七or八冠?

 Wタイトル戦が終わると春が訪れる。

 春といえば名人戦七番勝負の季節だ。

 3連覇中の渡辺名人は永世名人まであと2期と迫っている。

 A級順位戦では藤井竜王がトップを走っており、挑戦権を得れば谷川浩司十七世名人(60)の持つ最年少名人記録の更新に期待がかかる。

 仮定の話だが、もし藤井竜王が棋王&名人を獲得すれば、王座のタイトルが唯一獲得していないタイトルとなる。

 こちらは挑戦までに4連勝が必要だ。タイトル戦の開幕は例年9月になる。

 永瀬王座は防衛すると名誉王座の称号を獲得する。その点でも注目されるシリーズとなるだろう。

 藤井竜王は春先から防衛戦も始まる。

  • 叡王戦(4月)
  • ヒューリック杯棋聖戦(6月)
  • 伊藤園お~いお茶杯王位戦(7月)
  • 竜王戦(10月)

 タイトル戦ではその時の最強者が挑んでくる。藤井竜王といえども防衛戦はいばらの道である。

ストップ・ザ・藤井

 藤井竜王を止めるのは誰か。非公式ではあるが、ファンの認知度も高くなっている棋士のレーティングを元に考えてみよう。

 レーティング1位の藤井竜王を追う2~5位は、渡辺名人、永瀬王座、豊島将之九段(32)、広瀬章人八段(35)と実績上位の棋士がずらりと並ぶ。当然ながら今年もタイトル戦で藤井竜王との対戦が期待される面々だ。

 若手でトップ10入りしているのが、大橋貴洸六段(30)と服部慎一郎五段(23)。二人とも昨年は挑戦者決定戦まで進出してあと一歩に迫った。今期の勝率ランキングでもトップ10入りしており、今年はもう一段の飛躍が期待される。

 レーティングでトップ20までに入っている20代棋士、佐々木勇気七段(28)、八代弥七段(28)、近藤誠也七段(26)、佐々木大地七段(27)、増田康宏六段(25)あたりも壁を破ればタイトル戦への出場もありそうだ。

 そして藤井竜王と同学年の伊藤匠五段(20)もレーティングでトップ20に入ってきた。

 前期竜王戦では決勝トーナメントで2勝をあげ、順位戦では初参加からの2期連続昇級を目指すなど、持ち時間の長い棋戦での活躍が目立っている。

 2023年に活躍が期待される一番の棋士といっても過言ではない。

 歴史をたどれば、羽生九段のライバルは世代のごく近い棋士であった。

 そう考えると同学年の伊藤(匠)五段への期待は高まる。

 さらには、やはり同学年の高田明浩四段(20)や現在最年少棋士の藤本渚四段(17)あたりにも活躍の期待が高まる。

 藤井竜王の活躍ぶり、一局一局に注目が集まることは間違いないが、こうしたライバルたちの動向にも気を配りながら将棋界の行方にご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

遠山雄亮の最近の記事