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藤井聡太竜王を追う次世代の昇級の行方は?ー第81期順位戦B級1組~C級2組中間展望ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 第81期名人戦・順位戦は、B級1組~C級2組の各クラスで(延期分以外の)年内の対局を終えた。

 藤井聡太竜王(20)を追う次世代の若手棋士が昇級へあと一歩に迫っている。

 各クラスの途中経過と注目ポイントをまとめた。

B級1組

昇級枠は2つ。中村七段が首位を独走している。4敗までが圏内か
昇級枠は2つ。中村七段が首位を独走している。4敗までが圏内か

 前期B級2組から昇級した2人が昇級戦線を引っ張っている。

 中村(太)七段(34)は開幕から5連勝とロケットスタートを決めた。

 連勝が止まった後も、佐々木(勇)七段(28)、山崎八段(41)と昇級争いのライバルとの直接対決を制した。

 次戦は同じく前期昇級組の澤田七段(31)との直接対戦を迎える。ここで勝てば昇級が決まる大一番だ。

 2番手につけるのは佐々木(勇)七段。前期最終戦では藤井竜王に眼前で昇級を決められる悔しい思いをした。

 さらに上の舞台で藤井竜王と対決すべく、昇級を狙う。

 カギを握るのは4敗で追う山崎八段だろう。次々戦に佐々木(勇)七段との直接対決を控える。

 混戦になれば前期成績に基づく順位がモノをいう。

 昇級を争うメンバーでは山崎八段の順位がもっとも上だ。

 注目の羽生九段(52)は4勝5敗。羽生九段であっても昇級争いに絡めないあたり、B級1組のレベルの高さを表している。

B級2組

B級2組以下の昇級枠は3となる
B級2組以下の昇級枠は3となる

 このクラスでは藤井竜王を追う次世代の若手棋士が上位にきている。 

 前期C級1組から昇級した大橋六段(30)は全勝で首位を快走している。

 順位戦での連勝は16まで伸びており、藤井竜王に対して4連勝中の実力をいかんなく発揮している。

 そして藤井竜王と鎬を削ってきている増田(康)六段(25)も昇級圏内の3位につけている。

 安定した内容で勝ち星を積み上げてきており、このまま駆け抜けるか。

 40代の実力者も昇級争いに加わっている。

 前期まさかの降級を喫した木村九段(49)は、実力を発揮してここまで1敗。

 順位1位の有利さもあり、2番手につけている。

 B級1組への復帰の可能性は高い。

 安定した成績を残し続ける佐々木慎七段(42)が勝ち星を量産している。B1~C2で、振り飛車党で上位に来ているのは佐々木七段と今泉五段(49)しかいない。振り飛車党の期待が両肩にかかる。

 2敗は行方九段(48)ただ一人。順位の関係もあり、昇級争いは全勝と1敗の4名に絞られつつある。

C級1組

5勝2敗勢は5名。順位上位の2敗までがギリギリ圏内か
5勝2敗勢は5名。順位上位の2敗までがギリギリ圏内か

 ここでも藤井竜王を追う次世代の若手棋士が全勝で首位を走る。

 藤井竜王と同学年の伊藤(匠)五段(20)はここまで全勝。藤井竜王も成し遂げられなかった順位戦初参加からの連続昇級を狙う。

 1敗者が5名おり混戦模様といえる。直接対決も最終戦に一つあるだけで、いかに星を落とさないか、我慢比べの様相だ。

 1敗最上位で現在2番手の石井六段(30)は順位戦で安定した成績を残し続けており、今期勝率も8割近い。ここから高勝率を誇る関西若手との2連戦が昇級に向けて大きな関門といえよう。

 このまま上位が星を伸ばすと1敗で終えても昇級できない可能性もあり、高レベルかつ熾烈な争いだ。

 とはいえ、前期は7勝3敗での昇級者が出るなど最後までもつれたこのクラス。

 1戦消化ごとに状況が一変していくかもしれない。

C級2組

順位上位の2敗勢も多く、激戦の様相を呈している
順位上位の2敗勢も多く、激戦の様相を呈している

 全勝と1敗の7名中6名が20代と、藤井竜王を追う次世代の若手がずらりと名前を揃えている。

 服部五段(23)は、今期タイトル戦の挑戦争いに絡み、新人王戦でも優勝。充実の一年を象徴すべくここまで全勝だ。順位の関係でここから2勝1敗でも3位以内が確定するため昇級となる。

 前期も7連勝スタートながら、まさかの失速で昇級を逃した。その悔しさを払拭したい。

 斎藤(明)五段(24)は今期8割近い勝率を残している若手棋士だ。期待されながら大きな結果を出せずにきていたが、ここでブレークなるか。

 古賀四段(21)はフリークラスからC級2組に編入して、初めての順位戦を全勝できている。

 初参加だと順位が悪いため、一つ負けると圏外に転落してしまう。

 最終戦は上位陣で唯一の30代以上である今泉五段。カギを握る直接対決になるかもしれない。

年明けは1/6に再開

 年明け1月6日(金)にC級2組の半分の対局が行われて順位戦が再開する。翌週は怒涛の順位戦ラッシュだ。

  • 1月10日(火)C級1組一斉対局
  • 1月11日(水)B級2組一斉対局
  • 1月12日(木)B級1組一斉対局&C級2組の残り半分

 昇級や残留を争う棋士にとって年明けからの3戦は本当に苦しい。

 しかしそこで音を上げれば一年が終わってしまう。

 最後まで生き残るのは誰か。

 見ている側にとって、ここからが本当に面白い。

 まずは1月の順位戦ラッシュ、そして2月以降の戦いにもご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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