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【将棋】女流順位戦、フィナーレへ ― 福間vs伊藤のプレーオフ、快挙&ドラマチックな結末

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 第4期ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦は、7月初旬に各クラスで最終戦が行われ、全対局を終了しました。

 西山朋佳白玲への挑戦権をかけた争いはプレーオフに。昇級争いでは、D級最終戦で順位戦らしい波乱が起きました。
 残留争いでも各クラスでドラマがありました。

 各クラスの全成績については、日本将棋連盟HPの公式ページよりご確認ください。

A級

挑戦者はプレーオフで決まる。降級は渡部女流三段と塚田女流二段
挑戦者はプレーオフで決まる。降級は渡部女流三段と塚田女流二段

 挑戦争いの直接対決、福間女流五冠ー伊藤女流四段は、伊藤女流四段が会心の指し回しで完勝。これで7勝1敗で福間女流五冠と伊藤女流四段が並びました。
 挑戦者は7月17日(水)に行われる二人によるプレーオフで決まります。

 残留争いでは、勝てば残留決定だった塚田女流二段が無念の敗戦。これにより二人目の降級者が決まりました。

昇級

 ここで昇級者の一覧をご覧ください。

今期はA級で引退者が出たため、例年よりB~D級でそれぞれ昇級枠が一つずつ多かった
今期はA級で引退者が出たため、例年よりB~D級でそれぞれ昇級枠が一つずつ多かった

 ベテランと若手が入り混じったメンバーとなっています。
 A級への昇級者のうち、香川女流四段と和田女流二段は初めてのA級入り、鈴木女流三段は復帰となります。
 和田女流二段は最終戦で伊奈川愛菓女流二段との直接対決を制して、前期に続いての連続昇級となりました。連続昇級は女流順位戦史上初の快挙で、今期も和田女流二段ただ一人でした。

 C級での昇級者のうち、千葉女流四段と岩根女流三段は前期降級からの復帰となります。
 今期と同様に前期もC級→B級で2名が復帰しており、B級からの降級者は実力と順位が上なのでC級で昇級しやすい傾向にあると言えそうです。

 また、B級へ昇級した加藤女流初段は、3期中2期で昇級しています。21歳と若いこともあり、来期も飛躍が期待されます。

 D級ではドラマが起きました。

初参加の今井女流初段と砂原女流2級は最終戦の黒星で昇級を逃す結果に
初参加の今井女流初段と砂原女流2級は最終戦の黒星で昇級を逃す結果に

 自力の権利を得ていた5名のうち、4名が最終戦で黒星を喫しました。プレッシャーに負けたような将棋が多く見られ、順位戦の重みを痛感する結果でした。
 最終戦で黒星を喫しながら昇級した長沢女流四段は、6月に還暦を迎えたばかり。もちろん女流順位戦史上最高年齢での昇級ですし、この記録は当分破られないでしょう。

 初参加で昇級したのは久保女流1級のみ。新人同士の明暗を分けたのは順位の差で、これはプロ入りの順番です。そんな所で運命が決まるのも順位戦らしいと言えます。
 久保女流1級に加えて、佐々木女流初段の2名が十代です。今後の活躍に期待したいです。

C級のドラマ

 ここで降級者一覧をご覧ください。

D級は降級点制度で、降級点3回で降級となる。今期の降級者は無し
D級は降級点制度で、降級点3回で降級となる。今期の降級者は無し

 9名中4名が20代、というところに競争の厳しさがうかがえます。
 また、タイトル獲得経験のある渡部女流三段や、前期はA級に所属していた中村真梨花女流四段など、実力者として知られる女流棋士も降級の憂き目に遭いました。

 C級では最終戦にドラマが起きました。

 残留に勝利が絶対条件だった藤田綾女流二段が、昇級争いに残っていた清水市代女流七段に勝利。
 さらに、今年タイトル戦に出場した大島綾華女流二段も昇級争いに加わっていた小高佐季子女流初段に勝利し、ラスト2戦の連勝で降級を免れました。

 結果的に最終戦に行われた貞升ー礒谷が残留をかけた直接対決となり、勝利した貞升南女流二段が残留、礒谷真帆女流初段が降級と、明暗が分かれました。

七番勝負の行方

 先ほども記載したように、西山白玲への挑戦権をかけて、福間女流五冠と伊藤女流四段がプレーオフを戦います。

 7月17日に行われるプレーオフが、第4期女流順位戦のフィナーレを飾る一戦です。どちらが挑戦権を得るでしょうか。

 先日、西山白玲は棋士編入試験の資格を獲得し、行使することを明言しています。白玲戦七番勝負は編入試験と並行して行われることが予想されるため、今まで以上に注目を集めそうです。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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