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【将棋】昇級か?降級か?運命の一局 ~白玲戦・女流順位戦 クライマックス直前特集~

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 第4期に入ったヒューリック杯白玲戦・女流順位戦はいよいよ佳境を迎え、全クラスで最終戦を残すのみです。

 この記事では、A級の挑戦争いと残留争い、B~D級の昇級争いについて解説していきます。

 各クラスの全成績については、日本将棋連盟HPの公式ページよりご確認ください。

A級 挑戦、残留、ともに一騎討ち

挑戦争いは一騎打ちに
挑戦争いは一騎打ちに

 8回戦では、福間女流五冠、伊藤女流四段がともに2敗勢との直接対決を制しました。結果的にこの二人の一騎討ちとなり、最終戦で直接対決を迎えます。
 福間女流五冠が勝てば挑戦権獲得、伊藤女流四段が勝てば二人によるプレーオフとなります。

 対戦成績では福間女流五冠が27勝10敗とリードしており、星の差を考えても有利な状況です。伊藤女流四段としては初挑戦目指して、目の前の一戦に集中するのみでしょう。

塚田女流二段の結果により、最終的な残留者が決まる
塚田女流二段の結果により、最終的な残留者が決まる

 渡部女流三段の降級が決まっており、残りは1枠です。
 8回戦では加藤(圭)女流二段と塚田女流二段の直接対決が行われ、加藤(圭)女流二段の振り飛車に対して穴熊に組んだ塚田女流二段が、強引な攻めを通して勝ちました。
 最終戦、塚田女流二段が勝てば残留決定(加藤(圭)女流二段が降級)、敗れれば降級となります。他に可能性がある人はいないため、塚田女流二段の最終戦に全てが委ねられた格好です。

B級 運命の直接対決

昇級枠は残り2つ。表の3名で争う
昇級枠は残り2つ。表の3名で争う

 8回戦で波乱が起きました。首位を走っていた和田女流二段が武富礼衣女流初段に完敗を喫しました。そして、2番手につけていた鈴木女流三段も伊奈川女流二段との直接対決に敗れました。

 結果、8回戦で勝利した香川女流四段の昇級が決まりました。香川女流四段は嬉しい初めてのA級入りです。室田伊緒女流二段との一戦は序盤で敗勢に陥りながら諦めずに食い下がり、逆転に成功しました。

 さて昇級枠は残り2つです。最終戦では、伊奈川女流二段と和田あき女流二段の直接対決が組まれています。


◎最終戦の昇級パターン

  • 伊奈川:自身◯or鈴木●
  • 和田:自身◯or鈴木●
  • 鈴木:自身◯

 直接対決の二人は、勝つと昇級が決まり、敗れた場合は鈴木女流三段の結果待ちです。
 鈴木女流三段は勝つと昇級が決まり、敗れると昇級の可能性が消滅します。

 残留争いは、中村真梨花女流四段、北村桂香女流二段の降級が決まり、残り1枠です。
 可能性があるのは、室田女流二段と武富女流初段で、この二人の直接対決で敗れた方が降級となります。

C級 勝てば天国、負ければ・・・

2敗勢は内山女流初段まで。直接対決もあるため、3敗勢の可能性はかなり低い
2敗勢は内山女流初段まで。直接対決もあるため、3敗勢の可能性はかなり低い

 首位を走る千葉女流四段が7回戦で勝利して昇級を決めました。前期は不運な形でB級から降級となりましたが、堂々の成績で実力があるところを見せました。
 昇級の残る枠は3つです。加藤女流初段までが自力となっています。その加藤女流初段の最終戦の相手は千葉女流四段です。期待のホープが難敵を下してB級入りを果たせるでしょうか。

 前期B級から降級した岩根女流三段は、今年度好調でC級でも2番手をキープしています。7回戦では苦戦を跳ね返して勝利をあげました。最終戦の相手は、残留がかかる渡辺弥生女流二段です。

 こちらも今年度好調の頼本女流初段が3番手につけています。7回戦では本田女流三段との直接対決を制しました。最終戦の相手は、こちらも残留がかかる藤井奈々女流初段です。

 昇級に向けて自力で最終戦を迎える3名は、それぞれ嫌な相手を迎えます。そのため、5番手以降にもチャンスが出てくるかもしれません。
 本田女流三段と内山女流初段の直接対決は2敗キープをかけたサバイバルマッチです。そしてレジェンド清水女流七段も虎視眈々と逆転を狙っています。

 降級枠の4つはまだ一つも決まっていません。今年彗星のごとく現れて第17期マイナビ女子オープンで挑戦権を獲得した大島綾華女流二段は、7回戦で勝利して2勝目をあげ、残留へ希望をつないでいます。

D級 熾烈なサバイバルマッチ

昇級の可能性があるのは表の7名
昇級の可能性があるのは表の7名

 上位陣が揃って星を伸ばしました。そのため、昇級者がまだ一人も決まっていない激戦です。

 現役女流棋士では最年長(60歳)の長沢女流四段が自力で最終戦を迎えます。最終戦の相手は、長年戦ってきた斎田晴子女流五段です。60歳での昇級となれば、簡単には破られない記録となるでしょう。

 タイトル挑戦経験のある長谷川女流二段も自力で最終戦を迎えます。最終戦の相手は、他棋戦で次々と本戦入りを決めて絶好調の宮澤紗希女流1級で、難敵を迎えます。

 佐々木女流初段、今井女流初段、砂原女流2級という、女流棋士1~2年目の若手が躍進しています。今井女流初段は木村朱里女流初段、砂原女流2級は久保女流2級と、それぞれ若手との最終戦を控えます。相手も同世代のライバルを先に上へ行かせたくないでしょう。火花散る戦いとなりそうです。

◎最終戦の昇級パターン

佐々木:自身◯or(長谷川・長沢・今井・砂原・高浜)のうち一人が●
長谷川:自身◯or(長沢・今井・砂原・高浜)のうち一人が●
長沢:自身◯or(今井・砂原・高浜)のうち一人が●
今井:自身◯or高浜●
砂原:自身◯
高浜:自身◯and(佐々木・長谷川・長沢・今井・砂原)のうち一人が●
久保:自身◯and(今井・高浜)のうち一人が●

今後の日程

 女流棋士1年目でも大きな勝負を戦えるのが、白玲戦・女流順位戦の素晴らしいところです。
 D級では1年目で初参加の今井女流初段と砂原女流2級が最終戦を自力で迎えます。最終戦を前に緊張が高まるところだと思いますが、最終戦の結果がどうなってもこの経験は長い目で見て良い経験となるはずです。

 昇級&降級の可能性が残る女流棋士にとって、最終戦はプレッシャーがかかります。参加している女流棋士の1/3くらいはどちらかの目が残っている状況です。苦しいところですが、いばらの道を通るからこそ、実力向上につながります。

 最終戦は7月初旬に行われます。
 どんなドラマが起こるでしょうか。ご注目ください。

  • A級:7月1日(月)
  • B級:7月1日(月)
  • C級:7月5日(金)
  • D級:7月8日(月)
将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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