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【NHL】スタンレーカップの世界旅行! 最初の目的地はオオハシさんのリクエスト 添乗員も同行します!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHLのチャンピオンだけが手にすることができる「スタンレーカップ」(写真:ロイター/アフロ)

 7月1日から新たなシーズンに入ったNHLは、初日からFA(フリーエージェント)権を持つ有力選手移籍のニュースが、飛び交いました。

▼北米で最も伝統あるスタンレーカップ

 各チームのGMは、今季の戦力を充実させようと、まだまだ忙しい日が続きそうですが、それにも増して、これから忙しくなるのが、「スタンレーカップ」(タイトル写真)。

 既に筆者の当サイトでも紹介しましたが、NHLのチャンピオンチームに手渡されるスタンレーカップは、カナダがイギリス連邦に属していた1892年に作られたもの。

 大のアイスホッケー好きだったフレデリック・アーサー・スタンレー総督の名から命名された「北米4大メジャースポーツの中で最も古い優勝トロフィー」です。

▼2代目スタンレーカップ

 初代の優勝カップが脆弱で壊れやすかったことから、1963年に当時のクラレンス・キャンベル コミッショナーが、新たな優勝カップの製作を命じ、1971年に現在の「2代目スタンレーカップ」が完成。

 スタンレーカップの下部には、歴代優勝チームのオールメンバー(選手、コーチ、チームスタッフなど現在は最大52人)の名前が小さなパネルに刻まれています。

 しかし、毎年新しいチャンピオンが誕生するため、スペースがなくなると古いチームのパネルが外され、トロントのアイスホッケー殿堂で展示されます。

スタンレーカップから外されたパネル(左側)はアイスホッケー殿堂で展示されている(Photo:Jiro Kato)
スタンレーカップから外されたパネル(左側)はアイスホッケー殿堂で展示されている(Photo:Jiro Kato)

▼スタンレーカップは大忙し!

 NHLのチャンピオンチームに手渡されるスタンレーカップは、優勝が決まった直後に、試合が行われたT-モバイルアリーナ(ネバダ州・ラスベガス)で、ワシントン キャピタルズのキャプテンを務める アレックス・オベチキンに手渡されました!

 その後、ワシントンD.C.に凱旋すると、地元のスポーツファンへお披露目をしたり、街中がチームカラーの赤に染まる中、優勝パレードに”参加”したり(下の動画)

 さらには、ファンサービスにも一役買っています。

 この他にも、ラスベガスで行われた「アウォード」や、ダラススターズのホームアリーナが会場となった「ドラフト」といったNHLの公式イベントにも”出席”して、大忙しの毎日を送っているようです。

▼スタンレーカップを24時間独占できる!

 しかし、このような忙しさは、まだ序の口。

 スタンレーカップが忙しくなるのは、これからです!

 というのも、「優勝チームは100日間スタンレーカップを独占できる」中で、優勝チームのメンバーは、「スタンレーカップを(およそ)24時間独占できる!」という”特権”が与えられるからです。

▼最初の目的地はオオハシのリクエスト

 早速、この特権を使ったのが、ビデオ(を用いて分析をする)コーチの ティム・オオハシ

 オオハシがリクエストしたのは、ナショナルモールにあるリンカーン記念塔。

 観光名所にもなっているワシントンD.C.の名所をバックに、ビクトリーフォトを撮影しました!

▼初めてデンマークへ! そしてオーストラリアへ!

 ホームタウンからスタートしましたが、ワシントンに限らず、NHLのチームには世界各国のトッププレーヤーが集まっています。

 そのため、ワシントンD.C.を皮切りに、ヨーロッパ各国の選手たちの故郷(もしくは指定した地)も訪問。

 初めてスタンレーカップを手にした選手が誕生したデンマークラルス・エラー/FW・29歳)に加え、オーストラリアネイサン・ウォーカー/FW・24歳)にも赴く予定です。(追記・ワシントンはウォーカーの故郷であるオーストラリアへのスタンレーカップツアーを、NHLに対して要求しなかった模様です)

▼スタンレーカップの添乗員

 ところで、毎年世界各国を旅するスタンレーカップと常に同行している、いわば”スタンレーカップの添乗員”がいるのを、ご存じでしたか?

 「スタンレーカップ キーパー」と呼ばれる、フィリップ・プリチャード です。

「スタンレーカップキーパー」フィリップ・プリチャード(Courtesy@mdaubrey)
「スタンレーカップキーパー」フィリップ・プリチャード(Courtesy@mdaubrey)

▼スタンレーカップとの世界旅行

 上の写真をご覧になって、「見たことがある!」と声が出たファンの方もいるのでは?

 トロント(カナダ・オンタリオ州)にある「アイスホッケー殿堂」に、1988年から務めているプリチャードは、長年にわたって、優勝チームのメンバーが手にした「スタンレーカップを独占する」日に合わせて、スタンレーカップとともに旅を続けています。

 その他にも、スタンレーカップが北米以外に赴く際も帯同。

 このような役割を担っているため、スタンレーカップとともに、年間150日ほど世界各国を旅しているそうです。

▼スタンレーカップは戦地にも!

 また一方で、優勝チームとは関係なく、様々な場所へ向かいます。

 一例を挙げると、スタンレーカップが、アフガニスタンの戦地支援にあたっている兵士たちの所へ、向かったこともありましたが、、、

 派遣されている兵士のベースキャンプへ向けて、ロケット砲が放たれながら、スタンレーカップは全く被害を受けなかったというエピソードも残っています。

▼空港へ早めに向かう理由は?

 プリチャードとスタンレーカップの世界旅行が、今年も間もなく始まります。

 特別機をチャーターしての悠々自適な旅ではなく、一般の旅客機に搭乗しての移動が基本のため、プリチャードは「空港へ早めに向かう」のを常としていると話します。

 その理由は二つ。

 一つは、預け荷物ではなく、万一に備えて機内へ持ち込む交渉に、時間を要する時があること。

 そしてもう一つは、「スタンレーカップと写真を撮らせて!」と、よく頼まれるからだそうです。

▼スタンレーカップキーパーが与える夢

 紹介してきたように、「スタンレーカップ キーパー」というプリチャードに与えられた役割が、しっかり守り続けられているからこそ、世界中のアイスホッケー選手が、いつかスタンレーカップを手にする日を、夢見ることができるのです。

オベチキンが見ているのは2連覇への夢!?(Courtesy@HockeyCentraI)
オベチキンが見ているのは2連覇への夢!?(Courtesy@HockeyCentraI)
フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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