【NHL】ベガスの優勝はNHLの思惑どおり!?
チーム創設から6年で、スタンレーカップを獲得したベガス・ゴールデンナイツ。
6年という短期間でチャンピオンとなったベガスのGMのケリー・マクリモンの手腕が高く評価されますが、実は、要因は他にもありました。
北米のプロスポーツでは、新規加盟チームがある場合に「エクスパンションドラフト」を行います。既存の各チームは、決められた日時までに、リーグに「プロテクトリスト」(既存のチームで保護したい選手)を提出します。その後、新規加盟チームは、プロテクトリストに含まれていない選手の中から指名します。
1998年から2000年にかけて4チームが新規加盟した際のエクスパンションドラフトでは、プロテクトリストに載せることができる選手の数は、以下の通りでした。
ゴーリー(1)、ディフェンス(5)、フォワード(9)(=合計15名)
または
ゴーリー(2)、ディフェンス(3)、フォワード(7)(=合計12名)
これらのルールでは、理論上、新規加盟チームが既存のチームから獲得できる選手は、バックアップゴーリー、第3セットのディフェンス、第4セットのフォワードに限られる可能性があります。この時期に新規加盟した4チームがプレイオフに進出するまでの年数を見てみると・・・
ナッシュビル・プレデターズ(1998年加入):6年目で初のプレイオフ進出
アトランタ・スラッシャーズ(1999年加入):7年目で初のプレイオフ進出
コロンバス・ブルージャケッツ(2000年加入):8年目で初のプレイオフ進出
ミネソタ・ワイルド(2000年加入):2年目にプレイオフ進出したが、最初の5年でのプレイオフ進出は一度のみ
そこで、NHLは、2017年のベガスと2022年のシアトル・クラーケンの新規加盟時のエクスパンションドラフトでは、「プロテクトリスト」の人数を、以下のように変更しました。
ゴーリー(1)、ディフェンス(3)、フォワード(7)(=合計11名)
または
ゴーリー(1)、ゴーリー以外の選手(8)(=合計9名)
さらに、既存のチームは、ノートレード条項 (NTC・トレードを拒否する権利)を持っている選手は無条件にプロテクトリストに入れなければなりません。
このルールで行われたエクスパンションドラフトによって選手を獲得したベガスは初年度からファイナル進出を果たし、6年目でNHLの頂点に立ちました。
また、シアトルも、加盟2年目の今シーズンに初のプレイオフ進出を果たし、ファーストラウンドで前年チャンピオンのコロラド・アバランチを撃破したのです!
これらのルール改正が、ベガスやシアトル以前の新規加盟チームにとって公平ではなかったのかもしれません。しかし、NHLは、この2つの新しい市場で新たなファンを獲得しており、将来にわたって成功する基盤を築きつつあります。NHLが求めていた「新たなフランチャイズの獲得」という点では既に成功を収めているのかもしれません。