離婚再婚を繰り返す「時間差一夫多妻男」のカゲで生涯未婚の男たちが増えていく
男女の生涯未婚率10%の差の謎
今月公開した2020年の生涯未婚率についての記事は、大変多くの方に読まれたが、その中で「なぜ、男女の生涯未婚率に10%の差が出るのか」という疑問もいただいた。
2020年の生涯未婚率グラフはこちら
→2020年国勢調査確定報より、男女の生涯未婚率は何%になったのか?
今回はその疑問にお答えしたい。
男女で未婚率が異なるのは、当然分母となる未婚人口が男の方が多いからである。なぜ、男の方が多いかというと、男女の出生性比の違いによる。これは日本に限らず、全世界的にそうなのだが、出生性比は必ず男児の方が5%程度多い。時代によってもそれは変わらない。少なくとも統計が残る1899年からの長期推移を見ても、大体女児100に対して男児105である。
これは、男児の方が女児に比べて病気などによって死亡しやすく、そのため多く産まれるようになっていると言われるが、医療の発達によってほぼ乳幼児段階での死亡が極少なくなった今、多く産まれた男児が成人してそのまま男が多い状態となった。しかし、それだけなら最大5%の違いのはずである。
離婚再婚を繰り返すバツあり男たち
出生性比以外にも要因がある。それが男の再婚数である。
婚姻数全体は激減しているのは周知の事実で、婚姻数が一番多かった1972年(年間約110万組)と比べると2018年は約60万組と半減した。その一方、再婚数だけは逆に同期間比で1.3倍に増えている。
再婚が増えたのは、そもそも離婚数自体が増えたからなのだが、再婚数が増えると、未婚男たちがそのあおりを受けるのだ。それはなぜか?
再婚の組み合わせは「再婚同士」「再婚夫×初婚妻」「再婚妻×初婚夫」の3種類に分けられる。組み合わせ別の再婚比率を時系列でみると、1980年代からほぼ変わっておらず、「再婚同士」と「再婚夫×初婚妻」の組み合わせがほぼ同数で推移している。
2019年の実績でいえば、「再婚同士」37%、「再婚夫×初婚妻」37%、「初婚夫×再婚妻」26%である。つまり、「再婚妻×初婚夫」の組み合わせだけが少ない。「再婚妻×初婚夫」に対して「初婚夫×再婚妻」は常に1.4倍近く差がある。
要するに、離婚したバツあり男は未婚女性と再婚する割合が高いということだ。そうすると、未婚女性の絶対数だけが減ることになる。
再婚する男の中には、何度も結婚離婚を繰り返す男もいるだろう。こちらの記事で4象限で区分けした「カゲソロ」という男たちである。
→結婚しても、趣味への出費は減らさず、浮気もする「カゲソロ」夫の正体
時間差一夫多妻制という現実
冷静に考えれば、複数回も離婚する男というのは、そもそも結婚生活に向いていないんじゃないかとも思うのだが、不思議と婚活の現場では、バツあり男は頼りがいがあってモテるという話も聞く。
そうした複数回結婚するバツあり男に押し出され、一度も結婚できない生涯未婚の男が増えることになるのだ。これを私は、「時間差一夫多妻」と呼んでいる(すでに2017年にこういう記事を書いている)。
具体的に、「時間差一夫多妻制」を体現している例は、声優の山寺宏一氏だ。3回目の結婚で31歳差婚を実現している。タレントの石田純一も再婚3回である。さらに上をいく再婚4回でいえば、お笑い芸人木村祐一氏、歌手の玉置浩二氏、俳優の六角精児氏などがいる。
40年間の長期統計からみる影響度
人口動態調査に基づき、1980年から2019年までの40年間の累計で「時間差一夫多妻」の規模を見てみることにする。
婚姻数は約2890万組、離婚数は約855万組で、離婚した夫婦のうち613万組が再婚(夫婦いずれかが再婚含む)夫婦である。単純計算すると離婚者の72%が再婚していることになる。
再婚の内訳をみると、再婚同士が約221万組、再婚夫と初婚妻が約224万組、初婚夫と再婚妻は約169万組となる。40年間を通じて、バツあり男と224万人の初婚女性が結婚したという計算になる。もちろん、再婚妻と結婚する初婚夫も169万人いるわけなので差し引き54万4千人となる。年間あたりにすると1万3600人となる。
たいした数字ではないと思うかもしれないが、既に年間初婚女性数が38万人になっている中で、その割合は3.6%になる。出生性比で5%、時間差一夫多妻により3.6%、合計8.6%も影響値があれば未婚男女で生涯未婚が10%ほど乖離するのは、数字の辻褄が合う話だ。
最新の2020年国勢調査で年齢別離婚者人口を見ると、一目瞭然である。離婚者は基本的に男女同数であるはずなのに、どの年代も現在離別独身として存在するのは女性の方が多い、これは、女性より男性が再婚している割合が多いことを示している。
結婚したい未婚男のライバルは再婚男
そもそも再婚自体、同時に複数の妻を持つ重婚ではないので、法的にも道義的にも何ら問題はない。しかし、バツあり男と初婚女性が次々と結婚すると、割を食うのは未婚男性ということになる。
再婚年齢の最盛期は35-39歳である。晩婚化が進めば進むほど、結婚したい30代の未婚男性にとっては、同年代のバツあり男が強力なライバルとして立ちはだかることになる。
まさに、今、婚活アプリなどで繰り広げられている光景そのものである。
ほしいものを何度でも手に入れては、取り替える強者がいる一方で、手に入れることが一生叶わない弱者が必ず生まれる。
社会的お膳立てシステムが失われた現代、自由恋愛・自由結婚とは、一部の強者だけに許された特権となり、結婚の不可能化と同義となった。
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