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結婚しても、趣味への出費は減らさず、浮気もする「カゲソロ」夫の正体

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:PantherMedia/イメージマート)

独身といってもいろんなタイプがある

2040年には、15歳以上の人口の約半分は独身になる。世帯の4割が一人暮らし世帯となり、日本はソロ社会となる。

これは、私の妄想ではなく、社人研による将来人口推計に基づく不可避な未来の現実である。→家族が消滅する。ソロ社会が不可避な未来に必要な視点の多重化参照

独身といっても、未婚者もいれば、離別して独身に戻った婚歴ありの独身もいる。配偶者と死別してしまった独身もいるだろう。一人暮らししている独身もいれば、親元に住み続ける独身もいる。友人と共同生活する者もいる。それぞれ生活する環境が異なる独身者を一括りにはできない。

そして、それぞれの配偶関係などの環境を整える重要な因子に「ソロ度」という価値観がある。ソロ度とは、簡単に言えば「誰かと一緒にいるより、一人でいる方が心地よい」「一人で行動ができる」「一人が苦痛ではない」などの価値観のことである。いくつかの「ソロ志向・ソロ耐性」についての質問により算出している。

ソロ度と配偶関係の相関

私は、独身研究をはじめて8年目、延べ15万人以上の男女の未既婚者を調査してきたが、未婚の独身であっても、ソロ度と現在の配偶関係によって、実はその価値観も行動特性も大きく異なることがわかっている。

もちろん、ソロ度が高いからいって、それが全員結婚できないというものではない。ソロ度が高くても結婚する人もいるし、逆に、ソロ度が低いのに生涯独身もいる。

興味深かったのは、ソロ度の構成比は、既婚者のソロ度は独身と比べて若干下がるが、独身者に限ると、年代によって多少のバラつきはあるものの、男女で違いはない点だ。いずれも約半分がソロ度の高い人間なのである。

ソロ4象限マップ

ソロ度と配偶関係とを4象限にした図がこちら。わかりやすくするために、構成比の数字は丸めている。

上下が配偶関係の割合だが、有配偶率は大体6割である(2015年時点で、20~50代の現役世代の有配偶率は男54%、女61%)。

まず、図の左半分。ソロ度の低い人たちは全体で6割いる。

その中の左下部分、既婚者で「家庭を大事にする。よき親」である「ノンソロ」がもっとも構成比が高く、全体の4割を占める。

ソロ度の低い独身の「エセソロ」とは、今は独身だが、結婚意欲も高く、将来「ノンソロ」へと移行する「いずれ結婚する層」である。

とはいえ、現状は「結婚したいのに金がなくてできないエセソロ男」「結婚したいのに適当な相手がいなくて結婚できないエセソロ女」が増えていることは確かだ。だからこそ生涯未婚率(50歳時未婚率)は、2015年時点で男23.4%、女14.1%にもなっている。

ソロ度の高い「ガチソロ」と「カゲソロ」

次に、図の右半分のソロ度の高い人を見てみよう。

右上、未婚で結婚意欲も低く、ソロ度の高い人は「ガチソロ」という。こちらも全体では2割ほどいる。負け惜しみでもなんでもなく「結婚に興味のない層」である。

右下は、既婚者ではあるもののソロ度の高いまま、何らかの事情やきっかけによって結婚した人たち。これも全体の2割いて、「カゲソロ」と命名した。

そして、残念なことに、「カゲソロ」は、結婚しても離婚しやすく、「ガチソロ」に戻る可能性が高い層である。特に、何度も離婚と再婚を繰り返す男性のことを、私は「時間差一夫多妻男」と定義しているが、それはまさにここに当てはまる。

ガチソロとカゲソロをいったりきたりしている。

写真:Cultura/イメージマート

6割の既婚者のうち2割も「カゲソロ」がいるのか、と思われるかもしれないが、よくよく考えれば、3組に1組が離婚する現在の日本。その離婚はこれらの層によって成立していると思えば、数字のつじつまは合う。

「カゲソロ」夫の特徴

結婚しても夜遊びをやめない夫、独身時代から続けている趣味を頑なに継続している夫など、言われてみればみなさんの周りにも思い当たる人がいるのではないだろうか。既婚者でありながら、婚活アプリに登録して、遊びまわっているのもこの層である。さらにいうなら、カゲソロの割合は既婚者の浮気率とも合致する。

特に、「カゲソロ」夫の特徴は、基本的に財布の紐を妻に渡さず自分で握っている点である。本当の所得すら妻に内緒にしている場合もある。月3万円のお小遣いで汲々としている「ノンソロ」夫とはそこが大きな違いである。

ちなみに、小遣い制の夫は約62%だそうだ。奇しくも「ノンソロ」と「カゲソロ」の割合もほぼイコールである。

「カゲソロ」が「カゲソロじゃなくなる」時

基本、ソロ度の軸を超えて移行する例はあまりないが、例外もある。結婚した「ガチソロ」が、結婚後も「カゲソロ」として活動していたものの、子どもが生まれた瞬間から「ノンソロ」に価値観含めて華麗に変身を遂げるパターンだ。特に、40歳を過ぎて子が生まれたカゲソロにその傾向が強く見られる。

「娘が生まれて何もかも変りました。結婚してしばらくは、悪友たちと夜遊びを続けていましたけど、今では完全に家族中心、というか娘中心の生活ですよ。他のものに興味がなくなりましたから(42歳)」

とは、独身時代「ガチソロ」だった男性の言葉である。

写真:Paylessimages/イメージマート

ちなみに、妻や子どもから邪魔扱いされて、家に居場所のないお父さんは「カゲソロ」とは呼ばない。

「亭主元気で留守がいい」という妻の本音

ところで、既婚女性のソロ度が既婚男性と変わらないという点は意外に思うかもしれない。一般的に、男の方が「一人を望む」と思分けているからだ。しかし、実は、ソロ度を測る指標のひとつである「(家族がいても)一人の時間を確保したい」意識に関していうと、未婚者も既婚者も基本的に男女とも高いのだが、男性より女性の方が一人になれる時間をより欲していることがわかる。

コロナ禍で、在宅勤務などと騒がれて、「家族一緒の時間が増える」ということは、一見良い機会のようにも思えるが、人間とは不思議なもので、四六時中ずっと一緒にいなければならないという状況になると、それはそれで大きなストレスになる。夫にも妻にも。

定年退職後の夫が家にいることが嫌で熟年離婚する夫婦もまさにそういう理由だろう。「亭主元気で留守がいい」というのは妻の本音なのだ。どんなに仲の良い夫婦や家族であっても、「一人の時間」がまったくないとそれは苦しいものなのである。

次回、ソロ度診断ができる記事を公開する予定。お楽しみに。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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