えちぜん鉄道が仮駅として使っていた新幹線駅 北陸新幹線・北陸本線 福井駅【前編】(福井県福井市)
3月16日の北陸新幹線金沢~敦賀間開業によって新幹線の停車駅となる、福井県の県庁所在駅・福井駅。新幹線駅は在来線駅の東側に建設されたもので、島式ホーム一面二線。県庁所在地の新幹線駅ながら小規模なもので、フル規格の新幹線の駅としては最もホームや線路の本数が少ない駅となる。外観は福井が誇る歴史遺産・一乗谷朝倉氏遺跡や永平寺唐門をモチーフとした和風デザインの落ち着いた雰囲気だ。駅出入口の呼称は新幹線開業に合わせ、「西口・東口」から「福井城址口・一乗谷口」に改称される予定だ。
ここで福井駅の歴史にも触れておこう。福井駅は明治29(1896)年7月15日、官設鉄道北陸線の敦賀~福井間延伸に合わせて終着駅として開業、翌年の小松延伸で中間駅となっている。昭和4(1929)年9月21日には京都電燈越前電気鉄道線(現:えちぜん鉄道勝山永平寺線)、昭和8(1933)年10月15日には福武電気鉄道(現:福井鉄道)の駅が開業した。在来線の駅は平成17(2005)年4月18日に高架化されている。北陸新幹線の駅工事は在来線高架完成からわずか2か月後の6月4日に着工され、平成21(2009)年2月19日には高架の基部が完成した。新幹線開業の実に15年も前に一部が完成していた新幹線駅というのも珍しいだろう。なぜ一部だけ先に建設したのかというと、在来線およびえちぜん鉄道の立体交差化工事や予算との兼ね合いが理由で、えちぜん鉄道の高架化工事中には新幹線の高架をえちぜん鉄道が仮線として使うという珍しい光景も見られた。(後述)
在来線ホームは島式2面5線で、北陸本線の1・3番線の越前花堂方に、越美北線が使用する切欠きの2番線がある。外側の1番線(金沢方面)と5番線(敦賀方面)を専ら特急列車が使用し、普通列車は2番線と4番線に発着することが多い。北陸本線のハピラインふくいへの転換後は普通・快速列車の大幅な増便が行われる予定で、JR時代よりも利便性が向上することが期待される。
新幹線駅コンコースは県産木材や和紙を使用した格調高い和風空間となっており、「悠久の歴史を未来へつなぐシンボルゲートとなる駅」にふさわしい雰囲気だ。
新幹線駅の北東にはえちぜん鉄道の福井駅が隣接している。平成30(2018)年6月24日完成の高架駅で、赤い外観が目を引く。
えちぜん鉄道福井駅は平成27(2015)年9月27日から現駅舎完成まで、新幹線の高架を仮駅として使っていた。実に2年9か月もの期間、一両や二両のローカル電車が新幹線の高架上を走っていたわけだ。
新幹線の高架を開業よりずっと前に完成させていたからできた芸当だと言えるが、似たような事例は過去にもあった。東海道新幹線が建設途中だった昭和38(1963)年4月24日から12月28日までの間、新幹線と並走している阪急京都線が高架化工事中の仮線として新幹線の線路を使用した。阪急は新幹線と軌間が同じということもあって、線路もそのまま使用したが、えちぜん鉄道は在来線と同じ幅のため、在来線よりも広い新幹線の線路をそのまま走るわけにはいかなかった。
新幹線が走る前に3年間もえちぜん鉄道の電車が使用した北陸新幹線福井駅の高架に、ようやく本来の主である新幹線が試験走行でやってきたのは令和5(2023)年9月23日。高架自体の完成からはじつに14年7か月もの月日が流れていた。待ちに待った福井県初の新幹線はあと2週間で開業の日を迎える。
後編では福井駅の周辺について紹介していこう。
待望の新幹線がやってくる不死鳥の県都 北陸新幹線・北陸本線 福井駅【後編】(福井県福井市)
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