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大河ドラマ「べらぼう」で視聴者がざわついた遊女の悲劇 NHKは踏み込んだのか、その必然性はあったのか #専門家のまとめ

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
東京都台東区 吉原神社の境外摂社、吉原弁財天 観音像(写真:イメージマート)

江戸中期のメディア王・蔦屋重三郎を主人公にした大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)で遊女が無惨に葬られるシーンが視聴者をざわつかせた。

食うものにも困りぼろぼろになるまで働かされ、亡くなると身ぐるみはがされる。女性のうつ伏せの裸体が地面にごろりと転がった画面は衝撃的だった。インティマシー・コーディネーターも起用して性的な表現に真摯に取り組む「べらぼう」が第1話にしてここまで踏み込んだと評価の声がある一方で、慎重に描くべきではないかとの声もある。各媒体はこの問題にどう向き合っているか。

ココがポイント

名もなき人々それぞれの暮らしがあって、それぞれが生きているということをエンタメとして見ていただけたら
出典:マイナビニュース 2025/1/5(日)

SNSでは、そんな女郎たちの衝撃的なラストが描かれたシーンにSNSでは驚きの声が上がった。
出典:ENCOUNT 2025/1/6(月)

大河「べらぼう」 裸の女性死体が映りSNSで話題「驚いた」「吉原を描く覚悟に慄く」
出典:スポニチ Annex 2025/1/6(月)

病気などで命を落とした遊女は、無縁仏として葬られた。
出典:歴史人 2025/1/6(月)

エキスパートの補足・見解

主人公の蔦重が吉原で生活していたため吉原を描くのは必然。だがコンプライアンス的にどこまで描くか難しい題材である。第1回の試写のあとの会見で、チーフ演出家の大原拓と脚本家の森下佳子は吉原という性の売買が行われる場所とその仕事に従事する遊女たちを描く考えを明かしている。マイナビニュースは第1回終了直後にそれを紹介。その記事を読むと作り手は、実際にあったことを排除しないで描くことで視聴者に考える余地を残していると推察できる。

放送終了後から翌日にわたり、視聴者の声や、亡くなった遊女役がセクシー女優であったことを紹介する記事がいくつも出た。歴史専門の媒体・歴史人は、当時の状況を補足する記事を掲載した。

是非を問う様々な意見は主にSNSで飛び交っている。そのシーンに出演した俳優のコメントなどを記したものもあった。刺激的な部分がネットで拡散しやすいため、冷静な声が埋もれてしまうことが気にかかる。様々な記事を俯瞰して自分なりに考えることが大切であろう。

日曜夜8時という時間帯でどこまで表現するか、制作チームとして議論がされたことと思う。しばらく物語の舞台は吉原が続く。第2回、3回と見て考えていきたい。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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