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北陸新幹線で乗りに行こう!越前の小京都へのローカル線・越美北線(九頭竜線)

清水要鉄道ライター
越美北線で活躍するキハ120(越前下山にて)

来たる令和6(2024)年3月16日に北陸新幹線が敦賀まで延伸開業する福井県。その県都・福井市の越前花堂駅から「越前の小京都」大野市を経て九頭竜湖駅までを結ぶローカル線が越美北線(えつみほくせん)だ。新幹線開業に伴う北陸本線のJR西日本からの分離に伴い、他のJR線と接続しない孤立路線となる。

福井駅2番線
福井駅2番線

越美北線の書類上の起点は越前花堂駅だが、列車はすべて北陸本線(3月16日からはハピラインふくい)に一駅だけ乗り入れており、福井駅に発着している。越美北線ホームは切り欠きホームの2番線だ。

足羽~越前東郷間
足羽~越前東郷間

越前花堂で北陸本線と別れた越美北線は、やがて住宅地を抜け、足羽川沿いの田園地帯を走るようになる。車窓は一気にのどかになるが、まだ福井市郊外といった雰囲気で人家も多い。越前東郷駅は線内で3番目に乗降客数の多い駅だが、それでも令和4(2022)年度の一日平均乗降客数はわずか116人である。

一乗谷駅
一乗谷駅

越前東郷を過ぎると車窓に山が迫ってきて、平野部から足羽川沿いの山間へと入っていく。一乗谷駅は戦国大名・朝倉氏が拠点とした城下町・一乗谷への玄関口だが、城下町へは少し離れていて、観光には本数の多いバスの方が便利だ。ただし、博物館だけは駅から近い。

モニュメント 福井豪雨の記録
モニュメント 福井豪雨の記録

一乗谷から先は蛇行する足羽川に沿ってわずかな平地を走り、各集落に設けられた小さな駅にもこまめに停車していく。一乗谷~美山間は平成16(2004)年7月18日の福井豪雨で橋脚が流されるなどの被害を受け、平成19(2007)年6月30日の運行再開までバス代行を余儀なくされた。

越美北線と並行する京福バス
越美北線と並行する京福バス

越美北線は全線に渡って京福バスと並行している。福井~越前大野間の運賃はJR680円に対し、京福バスは1040円と、鉄道の方が安いもののハピラインふくいの開業後は760円に値上げされる。所要時間はJRが約55分(列車により数分の差がある)で、京福バスが約一時間で、わずかながらに越美北線の方が早い。ただし、本数ではJR7.5往復に対し、バスは11往復とバスの方に軍配が上がる。本数さえ多ければ鉄道に勝ち目があるのにといった感じだ。

美山
美山

足羽川沿いに行くうちに大きな集落が見えてくると、まもなく美山駅に着く。越前花堂を出て最初の交換駅だ。平成18(2006)年2月1日に福井市に編入された旧:足羽郡美山町の玄関口で、公共施設は駅周辺に固まっているが、一日平均乗降客数は26人と少ない。ずっと寄り添ってきた足羽川とはここでお別れで、ここからは足羽川の支流・羽生川沿いを遡っていく。

越前薬師駅
越前薬師駅

美山から先は一層山深くなり、停車する駅の周りにも人家は多くない。一日平均乗降客数が8人の越前薬師駅、16人の越前大宮駅、6人の計石駅と利用者の少ない駅が続く。計石の先の坂戸トンネルで分水嶺を越えると大野市だ。

越前大野駅
越前大野駅

大野盆地に入ると一気に車窓が開け、牛ケ原、北大野を経て越前大野に着く。城下町・大野市の代表駅で、多くの列車が折り返す運行拠点駅だ。乗降客数は線内2番目で334人。ここまでは利用者数もそれなりにいてローカル線なりに活気が感じられるが、ここから先は列車もわずか4.5往復となり、乗客もぐっと減る。

大野の町並み
大野の町並み

大野は大野藩の城下町で古い町並みが残っており、「越前の小京都」の異名を持つ町だ。大野城は雲海に浮かぶ「天空の城」としても知られ、観光地としても注目されているが、越前大野駅からは少し離れている。駅にはレンタサイクルがあるので、鉄道で訪問の際は自転車を借りた方がいいだろう。(2時間300円、4時間600円、1日1000円)

醤油カツ丼
醤油カツ丼

福井の名物グルメと言えばソースカツ丼が有名だが、大野の名物は醤油カツ丼だ。ご飯の上にキャベツととんかつを載せ、大根おろし・大葉・ネギを添えたものに、醤油をかける。ソースカツ丼と比べるとあっさりした後味が特徴だ。発祥の店は「お食事処 しもむら」(越前大野駅から徒歩21分)

第三九頭竜川橋梁
第三九頭竜川橋梁

越前大野を出ると、しばらくは大野盆地の田園地帯を走るが、下唯野辺りから一気に山深くなり、九頭竜川の渓谷に沿って遡っていく。越前大野から先の駅は乗降客数の少ない駅ばかりで、越前田野駅2人、越前富田駅6人、下唯野駅0人、柿ケ島駅0人、勝原駅2人、越前下山駅2人という有様だ。勝原(かどはら)から先は昭和47(1972)年12月15日に開業した区間で、高規格なトンネルと橋梁で険しい地形を克服している。

九頭竜湖駅
九頭竜湖駅

終点の九頭竜湖駅は平成17(2005)年11月7日に大野市に編入された旧:大野郡和泉村の玄関口で、道の駅が併設されている。駅名の由来は九頭竜ダムがつくりだした人造湖・九頭竜湖で、駅から公共交通で行くことはできない。

越美北線はここから先、岐阜との県境を越えて北濃(ほくのう)まで延伸し、越美南線(長良川鉄道)と結ばれる計画があったが、実現することはなかった。路線名の「越美」は「越前」と「美濃」から一字ずつ取ったものである。

利用者数の減少から廃止の噂も囁かれる越美北線。さすがに越前大野以西の廃止はないと思われるが、末端区間とも言うべき越前大野~九頭竜湖間はいつ廃止になってもおかしくない。早めに乗っておいた方がいい路線の一つだ。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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