最大のテロ防止策は「共謀罪」ではなく安倍総理を辞めさせること
フーテン老人世直し録(309)
水無月某日
安倍総理は幕末の「テロリスト」を尊敬している。長州藩士高杉晋作は尊王攘夷を唱え品川に建設中の英国公使館に火をつけた首謀者であり、また町人や農民からなる「奇兵隊」を組織して藩にクーデターを起こした張本人である。牢獄につながれ逃亡生活を余儀なくされたこともある。安倍晋三の「晋」はその高杉晋作の名にあやかっている。
2014年7月1日、米国の強い要求を受け入れ集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を閣議決定した安倍総理は、直後の19日に高杉晋作の墓に詣で「志が固まった」と述べた。米国に従属することが高杉晋作とどう関わるのかフーテンには理解できなかったが、おそらく重大な決断をした心情を幕末のテロリストに重ねたのだろう。
その安倍総理が「テロを防止するため」と称してテロ防止とは筋の異なる「共謀罪」を今国会に提出、議会制度を無視する異常なやり方で成立させたのは「加計問題」で前川前文科省事務次官の告発に追い詰められ、都議会議員選挙への影響を懸念せざるを得なくなったためである。
文科省にあって上からの命令に唯々諾々と従うだけでない前川氏は部下に人望があり、文科省内に「奇兵隊」と呼ばれる人脈を持っていたという。小泉政権時代には「三位一体改革」に抵抗し「奇兵隊、前へ」というブログで反対論を展開した。
前川喜平(まえかわきへい)の名前から「奇兵隊、前へ」のブログ名になったようだが、藩の命令に唯々諾々と従わず、身分制度を超えた武装集団を組織して旧体制に挑んだ高杉晋作に通ずるものを前川氏の「奇兵隊」は意識しているはずである。
その前川「奇兵隊」が「加計問題」で安倍政権に真っ向から戦いを挑み、隠蔽体質と権力内部の歪みを国民の前に明らかにした。挑戦に慌てた安倍政権は前川氏の人格を貶めて鎮静させようとしたが、むしろそれは攻撃した菅官房長官の人格に疑問を抱かせ、それに加担した読売新聞もフェイクニュースを流すイエロー新聞に過ぎないことを天下にさらした。
面白いことに安倍総理も前川前事務次官も高杉晋作という幕末のテロリストと自身を重ね合わせている。どちらの生き様が本物の高杉晋作にふさわしいかはこれからの歴史が証明することになる。
ところで安倍政権が我が国の議会制度を歪めるやり方で強行成立させた「共謀罪」について、その可否を国民に問うと賛成と反対が拮抗すると聞き、フーテンは暗澹たる思いになった。報道で見る限り賛成者はこの法律を本気で「テロ対策」と思い込み、これによって国民の安全が守られると信じている。
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