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昭恵と朋美を調教できない「情実政治」が安倍政治の本質

田中良紹ジャーナリスト

フーテン 老人世直し録(311)

水無月某日

稲田朋美防衛大臣が都議選の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣として」自民党候補者への支持を訴えたことが大問題になっている。

憲法や公職選挙法、それに自衛隊法は公務員が特定の政党の候補を応援することや自衛隊の政治利用を禁止しており、発言がそれらに違反するとみられるからだ。

ところが弁護士である稲田氏は違法と認識しておらず、菅官房長官から注意されると発言の5時間後に「誤解を招きかねない」と撤回した。しかし撤回だけで謝罪はしていない。

民進、共産、自由、社民の野党4党は稲田大臣の「罷免」を求めたが、安倍総理は応ぜず8月に予定される内閣改造まで続投させる構えである。「罷免」すればそれでなくとも追い込まれた安倍政権が一気に崩壊に向かうことになりかねず、ここを正念場と見て踏ん張るつもりのようだ。

しかしこうした姿勢が都議選を不利にすることは間違いない。自民党候補者を苦境に追い詰め不満を高まらせる可能性がある。政府・自民党は都議選への影響を最小限にすることに全力を挙げるしかないが、さりとてここに至って妙案があるわけでもない。

安倍政権の御用新聞である読売と産経の今朝の朝刊を見ると、読売は一面の中ほどに「稲田発言/首相が陳謝」との見出しを掲げた。「えっ!本人が陳謝していないのに安倍総理が陳謝した?」と思って読むと、安倍総理は直接稲田発言を謝罪した訳ではなく、昨夜の応援演説で「都議選に対して厳しいおしかりをいただいており、党総裁としてお詫びを申し上げたい」と発言した部分を引用しただけであった。

この見出しはいかにも安倍総理が稲田発言を謝罪したかのようにみせる「印象操作」である。読売はこうした形で選挙への影響を軽減しようとするのだろう。一方の産経は二面で「稲田氏への続投指示」が見出しであった。安倍総理が野党の「罷免」要求に屈せず断固として続投させることを評価した記事である。

その一方で産経のコラムは「稲田防衛相は猛省せよ」との見出しをつけた。しかし内容は旧民主党と民進党の批判に終始し、最後まで稲田氏に何を猛省せよと言っているのかが分からない。また小泉進次郎議員の応援を写真入りで掲載し「進次郎効果/流れ断つか」という記事にしている。マイナスイメージを次世代の期待感で薄めようというわけだ。

それにしても不思議なのは安倍総理の稲田朋美氏に対する「思い入れ」の強さである。自らの思想信条に近いというだけで、政治家としての資質や能力にはお構いなし、2005年の郵政選挙で初当選以来異例の厚遇を与え続けてきた。

2012年に第二次安倍政権が発足すると、当選3回なのに規制改革担当大臣で初入閣させ、それが2年後には政調会長として自民党三役入り、そして昨年夏には将来の総理候補として防衛大臣に就任させた。総理になるには米国のお眼鏡にかなうことが必須条件だと考える安倍総理の特別待遇である。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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