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【大会前のカーボローディング、食事はどう選ぶ?】消化器病専門医ランナーがおすすめする食事とは?

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

マラソンの前に、体にしっかりとエネルギーをため込むために、カーボローディングを行うランナーは多いと思います。多くのランナーは食べるのが大好きで、ここぞとばかりにラーメンやパスタ、スイーツを大盛で食べる姿をみかけます。ですが大会でのパフォーマンスの向上を考えると、ラーメンやパスタでいいのでしょうか。文献を元に何が最適か考えてゆきましょう。

1.体重減少効果のある低食物繊維食

以前書いた通り、体重を減らせばタイムの向上が期待できます(自分の以前のYahoo!ニュースより)。そこで厳格な体重制限のある競技で用いられている「低食物繊維食」というものをご紹介します。これは大会の約1-3日前から低食物繊維食をとることで便の量が減り、体重が軽くなるというものです。文献では4日間の低食物繊維食を摂取することで、0.4±0.77kg減少したとあります。個人差もありますが、体重0.4kgはフルマラソンのタイムで計算すると1-2分に相当しますので、試してみる価値があるのではないでしょうか。

穀類の可食部100g当たりの食物繊維の含有量:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より改
穀類の可食部100g当たりの食物繊維の含有量:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より改

一番少ないのは白米です。麺類やパンなどもあまり多くはありませんが、カーボローディングで大量に摂取すると、食物繊維はそれなりの量になってしまいます。注意したいのは玄米やライ麦パンのように精白していない原料を使った主食です。食物繊維を多く残していますので、マラソン前のカーボローディングには向きません。

2.お腹の弱い人に、低FODMAP食

さらにカーボローディングでは、普段では食べない量の食事を食べます。胃腸は訓練しないと、たくさんの食事を消化することができません。結果として胃もたれや腹痛、下痢といった消化器系のトラブルを抱えて当日を迎えることになります。そんな経験のある方は、低FODMAP食を試してはいかがでしょうか。

高FODMAP食と低FODMAP食の例:イラストACより改
高FODMAP食と低FODMAP食の例:イラストACより改

低FODMAP食は小腸で吸収されやすく、結果大腸への影響が少なくなり腹部症状が出にくい食事です。もともとお腹の弱い過敏性腸症候群の方に推奨される食事でしたが、腹部症状のでやすいアスリートにも推奨される食事です(自分の以前のYahoo!ニュースより)。低食物繊維食の中では、ごはん(白米)がこれに当たります。

3.果物を摂取する場合はジュースに

先週のYahoo!ニュースで、大会の前に果物を摂取するのがいいと書きました。主にポリフェノールがその要因で、食物繊維はあまり関係はありません。そのためかランニングと果物について調べた文献では、果物をジュースにして研究をしているものも散見されます。なので果物の恩恵も併せて期待するためには、果物をジュースにしてはいかがでしょうか。

特に便の調子に影響しやすい2日前から、果物をジュースに変えてみるのがいいと思います。

4.まとめ

マラソンのカーボローディングは、
・低食物繊維食
・低FODMAP食
・果物はジュースで
がお勧めです。ですが個々人で効果が異なる場合もあります。「大会前のカーボローディングは食材で効果が違うかも?」ということを理解して、自分にあった大会前の食事を心がけましょう。

カーボローディングは、少し工夫するだけでも違います
カーボローディングは、少し工夫するだけでも違います

ちなみに自分は普通の量のラーメンやパスタに加えて、コンビニで海苔のない「塩むずび」を追加していました。そこまで厳格にならなくても、大会直前は食物繊維が少な目の一品を追加したり、高FODMAP食のチャーシューを残すだけでも違うと思います。大会前の食事の際は、是非思い出してください。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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