【速く走るためには、筋トレも必要?】マラソンを速く走るために、筋トレ以外にもして欲しいこと
速く走るために、筋力トレーニングを行っているランナーは少なくありません。そうして筋肉質になった肢体を持ったランナーは、確かに速そうに見えます。ですがプロ・実業団ランナーならいざ知らず、一般の市民ランナーでも筋力トレーニングはした方がいいのでしょうか?そしてランニングパフォーマンスに寄与するのでしょうか?2024年4月にスペインで発表された、筋力トレーニングが中・長距離ランナーに与える影響を、国際ランナーから市民ランナーレベルまでを対象に調べた多数の研究をメタ分析した総括論文でみてみましょう。
総括論文の内容
総括論文に含まれた研究は計38件でした。その対象者はトレーニング群と対照群を合わせて計894人の参加者で構成され、男性651人、女性 243人で、年齢は17 歳から40歳でした。筋力トレーニングは週1-4回で、期間は6週間から40週間でした。
ランニングのみの対照群と、高負荷の筋トレ(1回が限界の筋トレの、80%以上の強度)併用、プライオメトリックトレーニング併用、両方の組み合わせの3つの群を、ランニングパフォーマンスに関わるとされる能力と、ランニングパフォーマンスで比較しています。
様々な能力でみた、対照群と比較した各トレーニングの効果
最大酸素摂取量VO2maxについては、①~③のトレーニングともに10件以上の研究数がありましたが、総じて有意な効果はみられませんでした。vVO2maxというのは聞き慣れないかもしれませんが「Velocity at VO2max」の略で、VO2maxでの走行速度をいいます。5~7件の少ない研究数であったためかvVO2maxも、いずれのトレーニング群も有意な効果はみられませんでした。
また最大代謝定常状態、これも聞きなれないかもしれませんが乳酸作業性閾値が近いでしょうか。これについては5~10件の研究が対象となりましたが、全く有意な効果は見られませんでした。そして瞬発力については、5件の研究が対象となりました。若干効果があるようにも思えますが、対照と比較して有意と言われるような効果はなかったようです。
そうは言っても、けっきょく効果はあり?
ではランニングパフォーマンスに効果がないのかと言うと、そんなことはないようです。残念ながら12件の研究が対象となったプライオメトリックトレーニングは、有意な効果がみられませんでした。ですが高負荷の筋トレは、中等度の効果が得られたようです。さらにこの2つを組み合わせると、さらに大きな効果が得られたようです。
筋トレも効果はあるけどそれだけでは効果が弱く、ついた筋肉をランニング向きにするためにもプライオメトリックトレーニングを併用した方がいいわけです。
そもそも筋トレは、怪我の予防じゃないの?
そもそも筋トレを行うのは、走力アップより怪我の予防でというランナーも多いと思います。ですが本当に筋トレは怪我の予防になるのでしょうか。2023年9月に公開された、走行量の多い市民ランナーの怪我と筋トレの関係の横断的研究では、一概にいいとは言えないようです。この文献内で気になるのは、怪我を避けるため筋トレを行うと怪我をするリスクは軽減できますが、速くなるために筋トレをすると怪我するリスクは高くなるというところです。
まとめ
速さを追い求めるときに筋トレは有効です。ですがそのためには、プライオメトリックトレーニングなどの他のトレーニングも併用する方が良いようです。そして本来筋トレにはランニング障害の予防効果もあるのですが、記録を追い求めて筋トレをするシリアスランナーは、予防効果の恩恵は受けられないようです。