【ランナーはなぜ爪が黒くなる?】普段使いの靴を買う感覚で、ランニングシューズを選んではいけない理由
マラソンが終わって疲れや足の痛みがなくなっても、多くのランナーが長く傷を負うところがあります。それは足の爪で、一般的にはランナー爪といわれます。足の指と爪の間に出血するもので、これを起こすと爪が生え変わるまでの数か月、爪が変色したままになります。もちろん自分も経験したことがあるのですが、なぜこんなことになるのでしょうか。2024年の中国からの報告で、爪下出血を経験したことのある男性ランナー10人の、足の形状や温度を調べた研究の結果から説明していきましょう。
長距離走行することで、足の形状は変化する
足の形状は朝と夕方でも異なることが知られています。さらに歩行でなくランニングで、強くグッと足を踏み込むことでも足の形状は変化します。そして長距離のランニングを行うことで、さらに形状が変化します。走ることでアーチの部分が低くなり、かかとから母指までの長さが長くなります。5km走ったあとで1.6mm、10km走ったあとに測定すると、1.9mm弱ですが長くなっています。ハーフマラソンやフルマラソンでは、もう少し長くなるかもしれませんね。
踏み込んだときに、足指から靴の先端までの距離が短くなる
そして走ると、踏み込んだ時に指が靴の先端の方にグッと伸びていきます。上のグラフをみると、走り始めのころでも約1cm弱伸びているのが分かります。そして10kmも走ると、1cm以上も縮まっているようです。前述した通り、この差は19mmほどです。走っているうちに、つま先がきつくなったことはありませんか?このスペースがないと、爪とシューズの先端が衝突して爪下出血がおこるのです。
ランニングシューズを買うときに、つま先部分に1cm程度余裕のあるシューズをすすめられるのはこのためです。頻回に爪下出血を起こすランナーは、1cm以上余裕のあるシューズでもよいかもしれません。
足の先も温度が上昇する
足の先は冷える印象があるかもしれませんが、ランニング中は血流の増加や摩擦で皮膚温は上昇します。この研究は室温が20度の中で行われたので、より顕著かもしれません。ですがこの上昇した皮膚温が発汗を招き、足と靴の相互作用を悪化させて、結果として爪のストレスを高める環境を作り出すようです。
爪下出血を起こさないためには
ランニングの時は、普段の生活のときよりもアーチが潰れて、つま先から靴の先端の距離が短くなります。また、長時間のランニングではそれがさらに顕著になります。ランニングをしていると、最初は心地よかったのに段々とシューズがきつくなることはありませんか?普段履く靴と同じサイズのランニングシューズを選ぶと、つま先に大きなストレスが生まれることがあります。爪下出血を経験したことのあるランナーは、0.5cm大きめのランニングシューズを選ぶとよいかもしれません。歩くときは緩く思えても、走るとあまり気にならなくなり、10km、20kmと走ると逆にフィット感が生じてくるかもしれません。特に暑いときは足の指も汗をかいて、爪下出血を生じやすくなります。爪を気遣うなら10kmを目安に、何度か靴下を取り換えるとよいようです。その際に足のアーチを潰さないように、靴ひもを少しずつ緩めにしてゆくとよいでしょう。