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「痛い!」尿路結石。そのリスクを下げる食事が判明。48万人データの最新解析

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

今回も最新の医学論文をご紹介します。

男女とも40~50歳代でリスクが高い尿路結石

テーマは「尿路結石」。尿を作る「腎臓」から出口まで続く「尿管」、どのどこかに「石」が詰まってしまう状態です。詰まりどころが悪いと「肋骨と腰の間に耐えがたい激痛が生じ」ます [MSDマニュアル家庭版] 。なった人の話を聞いたことはありませんか?本当に痛いそうです。

この「尿路結石」、統計上は日本人男性の7 人に1人、女性では15人に1人が、一生に一度はかかる計算だといいます。

年齢別に見ると、男性は40代、女性は50代の発症が多くなっています [以上「尿路結石症診療ガイドライン 2013年版」より]

にもかかわらず治療の基本は「自然排出を待つ」だそうです。薬や大量の水を飲んで石が出るまでひたすら待つのです。その間痛みが続くとしたら・・・・、想像するだけでも冷や汗が出てきませんか?

だから可能なら予防が一番。石ができないようにすれば良いわけです。

尿管結石の最大の原因は、腎臓でできた石の尿管への落下だと言われています。

なので腎臓で石ができる、つまり「腎臓結石」を予防できれば一番効果的ですね。

「魚油」で尿路結石を予防できる?

そこで今日の本題です。

魚油をたくさん摂取すると腎臓での結石が減る」という医学論文が、11月26日に発表されました。著者は中国・南方医科大学のシャオキン・ガン氏たち [文末文献1] 。

掲載されたのは「米国脂質協会」という大きな医学会が発行する「臨床脂質学雑誌」という学術誌です。

ガン氏たちが今回解析したのは、英国在住で尿路結石のない47万7千人です。「UKバイオバンク」と名付けられた観察研究から抽出しました。このデータバンクは手続きさえきちんとすれば、誰でも解析が許されるデータベースです。

48万人を12年観察したデータで判明

12年間観察したところ、これら47万7千人のうち約5千500人で腎臓結石が見つかりました。

そこで観察開始時に調査した食事内容から日々の「魚油」の使用状況を割り出し、「腎臓結石」発生との関係を調べてみたそうです。

すると日常的に「魚油」をたくさん使う人ほど、「腎臓結石」ができる確率は低くなっていました。

ただし「遺伝的に腎臓結石リスクの高い」人たちでは、魚油をたくさん使っても腎臓結石は減っていませんでした。なので家族に腎臓結石の人がいたらあまり期待できないかも、です。

EPAやDHAが結石抑制的に作用している可能性も

もちろんこの結果だけから「魚油が腎臓結石を減らす」とは結論できません。「魚油」をたくさん使う人たちに共通する何か別の要因が、腎臓結石を予防している可能性もあるからです。

しかしガン氏たちは「魚油が腎臓結石を減らした」と考えています。というのも、魚油に含まれるイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)には、結石ができにくい方向にクエン酸とカルシウムのバランスを変える働きが知られているからです [文末文献2] 。

これは英国の研究だったので「魚油」の使用量を「調味料」として見ていますが、日本なら「背の青い魚」を食べた方が手っ取り早く「魚油」は取れるはず。腎臓結石が怖い年頃の皆さんなら、頭の片隅に置いておいて損のない論文だと思います。

最後に

いかがでしたか?「魚油」をたくさん摂る人たちは「腎臓結石」のリスクが低かった、という論文のご紹介でした。

「な〜んだ、それだけか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。でも医学ってそういうものです。「〇〇で△△!効果は抜群!」といった発見は滅多にありません。今回の論文のような小さな発見から得た気づきを地道に積み重ねていくのが、結局、健康への一番の近道ではないでしょうか?

食べ物については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

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今回ご紹介した論文

  1. 魚油をたくさん使う人は腎臓結石になりにくかった
  2. 魚油は結石ができづらい方向に血液を変える

どちらも英語ですが、無料翻訳サイトDeepLを使えば簡単に読めるはずです。

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでもご自身の見解形成の「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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