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超効果的!頭を整理する「壁打ち」3つのポイント 「壁打ち」相手に求められる2つのスキル

横山信弘経営コラムニスト
「壁打ち」は頭を整理するうえで効果的(写真:イメージマート)

「なかなかいいアイデアが出ない。どうしたらいいのか?」

「数年前から同じ問題に直面している。解決策がわからない」

こんな悩みを抱えている人は多いだろう。そんなときに使えるのが「壁打ち」である。テニスの練習などでよく使われる「壁打ち」のことである。とくにスタートアップ企業の間で、発想力を鍛えたり、頭を整理したりするために、この「壁打ち」はよく利用されているようだ。

そこで今回は、「壁打ち」とは何なのか? 「壁打ち」を受ける場合、どんなコツがあるのかを徹底解説する。

最後にはChatGPTを使った「壁打ち」も紹介する。なかなか新しい発想が思い浮かばない経営者、マネジャーの方々は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

■「壁打ち」の効果とは?

さて「壁打ち」については、私も何度か経験がある。コーチングなどと異なり、非常に手軽で、効果が高いと思っている。X(旧Twitter)やインスタグラムのDMを使ってもできるし、電話でもできる。

私の周りでは、20代から30代の若手経営者、フリーランスの人が

・新しいビジネスプランをどう見つけるか?

・どんな人を新たに採用したらいいのか?

・お客様のインサイト(購買心理、隠れた本音)とは?

・どうすれば目標を達成させられる課題(KSF)を見つけられるか?

といった悩みを解消するために「壁打ち」を使っているようだ。相手はだいたい外部のコンサルタントや経営者だ。同じチーム内のメンバーや先輩、上司から「壁打ち」をしてもらうのは、あまり効果がないだろう。

なぜなら相手が「壁」になりづらいからだ。相手が上司なら「相談」になってしまう。アドバイスを期待するのは当然で、それだと自分の頭を整理するのには役立たない。答えらしきものを受け取ったら考える力が身につかず、発想力も鍛えられない。

■うまく「壁打ち」する3つのポイント

「壁打ち」の相手をする人は、コーチングと同じようにアドバイスをするのはやめよう。ポイントは3つだ。

(1)テンポを大事にする
(2)短い質問を繰り返す
(3)選択肢を提示する

「壁打ち」の相手を務める人は、テンポよく、短い質問を繰り返していこう。そして効果的と判断したら、選択肢を提示して選んでもらうのもいい。

それでは、イメージしてもらうためにも、具体的な例を書いてみよう。

「売上目標の2億円が、達成しそうにありません」
「着地はどれぐらいになりそうですか?」
「おそらく、1億8600万円ぐらいになると思います」
「その差を埋めるために、何をするつもりですか?」
「そう、ですね……。提案件数を増やします」
「もともと提案件数は何件だったのですか? 月平均で」
「だいたい8件ぐらいですね」
「それをどれぐらいに増やしますか?」
「えーっと……。わからないですが、10件とか」
「提案件数を10件増やせば、2億円の目標を達成できそうですか?」
「いや、それだけでは難しいかも」
「他には何をしますか?」
「展示会に行って名刺交換をしようと思います」
「展示会はいつありますか?」
「今年はあと2回あります」
「その2回の展示会で、どれぐらいの名刺交換をされますか?」
「うーん、がんばって50人とか、かな」
「50人と名刺交換をすれば、2億円の売上目標が達成しますか?」
「いや、名刺交換しただけで売上はアップしません」
「売上アップのために、名刺交換のあとは何をしますか?」
「名刺交換のあと?」
「電話でフォローしたり、商談したり、商品説明したり」
「ああ、そうか。でも、今から展示会に出たとしても、今期の売上に繋がるお客様は見つからないな。来期の数字には繋がるだろうけど」
「では、今期の目標達成には、他に何をしますか?」
「部長に相談するのがいいかと思います」
「部長さんには、どんなことを相談しますか?」

このように、ある程度、頭が整理されるまでラリーを続けるのが「壁打ち」だ。

「読む」と辛いだろうが、実際に「話す」となると、それほど時間はかからない。ポンポンとテンポよく掛け合いをする。15分~30分やるだけでも、かなり頭が整理できるだろう。

■「壁打ち」相手に必要な2つのスキルとは?

「壁打ち」相手に必要なスキルは、先述した

(1)テンポを大事にする
(2)短い質問を繰り返す
(3)選択肢を提示する

の他に、以下の2つのスキルが必要だ。

(1)メタ思考
(2)MECE思考

メタとは、「超越した」とか「高次の」という意味だ。「鳥の目」を持ち、視座を高められる人だ。固定観念や価値観に縛られないような人でないと「壁打ち」の相手はできない。

だから外部の人に「壁打ち」相手を頼むといい。

MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive:ミ―シー)とは、「モレなく、ダブりなく」という意味だ。MECEの頭文字は以下の通り。

・Mutually(お互いに)
・Exclusive(重複せず)
・Collectively(全体に)
・Exhaustive(モレがない)

内部の人は「抜けている」思考から抜け出せない。フレームワークなどを使って「モレなく、ダブりなく」質問をしてくれる相手を選ぼう。このあたりは、センスが求められる。

■ChatGPTを「壁打ち」にするケース

今回はビジネスでよく使われる「壁打ち」についてカンタンに解説した。適切に「壁打ち」を手伝ってくれる相手が少ないのであれば、ChatGPTなどの生成AIをうまく活用しよう。

たとえば次のように書いてみるのだ。

「あなたは売上目標を達成させるプロのコーチです。私は現在、今期の売上目標を達成させるためにどうしたらいいか、頭を悩ませています。そこで私の頭を整理し、適切なアイデアを見つけるための効果的な質問をしてください。私が「終わりです」と書くまで、質問を繰り返してください」

このように書けば、ChatGPTが質問を開始してくれるだろう。うまくいかなくても、以下のように何度かフィードバックすれば、相手はよき「壁打ち」相手になってくれる。

「もっと短い質問をお願いします」

「質問がズレています。私の目標達成のための効果的な質問をお願いします」

「勝手に終わらないでください。まだ私の頭は整理できていません。続けてください」

なかなか頭が整理できない人は、ぜひ「壁打ち」を試してもらいたい。

<参考記事>

敏腕コンサルタントのスゴ技「スケール推定」 超高速マシーンのように効率的に仕事をこなす方法

【大作】新しい発想ができない人には絶対不可欠!「メタ思考」トレーニング3つのステップ

【大作】悩みや後悔をゼロにする!仮説思考に不可欠な「MECE」を理解する5つのパターン完全解説

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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