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なぜ営業活動に「大量行動」が必要なのか? 〜4つのポイントを徹底解説〜

横山信弘経営コラムニスト
営業に絶対不可欠なのが「大量行動」である(写真:イメージマート)

「とにかく数をこなせ!」「行動量を増やせ!」

営業の現場では、こういった声をよく耳にする。しかし、ただ闇雲に数をこなすだけで結果は出せない。では、なぜ大量行動が必要なのか、その正しい根拠を知らないまま行動し続けても効果は限られるだろう。

そこで今回は、営業活動において「大量行動」が必要な理由を、4つのポイントから解説する。営業マネジャーのみならず、新人営業や営業未経験の方にとっても、大量行動の本質的な価値が理解できるはずだ。ぜひ最後まで読んでもらいたい。

■なぜ「質より量」と言われるのか?

営業の世界では、よく「質より量」という言葉が使われる。しかしこれは質を軽視してもいいという意味ではない。むしろ量を追求することで質が高まることを意味している。

有名なピアニストでも、毎日練習を怠ることはない。プロ野球選手も、試合前には必ずバッティング練習をする。どんなに腕が良くても、繰り返し練習することで初めて実力は維持され、さらなるスキルアップ、能力開発が望めるのだ。

営業も同じである。自分のスキルに自信があったとしても、行動量を減らしたら実力が落ちていく。なぜなら人間の能力は使わないと必ず衰えていくからだ。

コミュニケーション力アップは、音楽やスポーツと同じ。センスも重要だが、練習なくして上達はあり得ない。

■無意識的有能状態をめざす

営業活動に大量行動が必要な理由の1つ目は、「無意識的有能」という状態を作り出すことにある。

営業で初めて商談をする人を見ていると、ほとんどの人が緊張で声が震える。それは当たり前のことだ。しかし、同じ行動を100回、1000回と繰り返していくと、誰でも自然とリラックスして話せるようになる。これが「無意識的有能」の状態だ。

※習慣化、慣れる、と同じ意味(無意識のうちに有能である状態)

無意識のうちにスムーズな行動ができるようになれば、相手の反応を細かく観察することもできる。相手の表情や仕草から、商談がうまくいっているのか、いないのかを瞬時に判断できるようになる。

緊張している人に

「肩の力を抜け」

と言う人がいるが、役に立たないアドバイスだ。緊張は、その人の生理的反応である。意識ではコントロールできない。緊張をなくす、不慣れなことを面倒に思わないようになるためには「場数」が絶対不可欠なのだ。

■「大数の法則」を理解しよう!

営業活動に大量行動が必要な理由2つ目は、「大数の法則」の存在である。

これは統計学の基本的な考え方で、試行回数を増やせば増やすほど、経験的確率が理論的確率に近づいていくという法則だ。

例えば、コインを投げる実験を考えてみよう。10回だけコインを投げて、表が7回、裏が3回出たからといって、このコインは表が出やすいとは言えない。しかし1000回投げて、表が700回、裏が300回出たとすれば、このコインは明らかに表が出やすいと判断できる。

しかし現実はそうならないだろう。1000回もコインを投げたら、だいたい半々の確率で表か裏になるものだ。

営業活動も同じだ。10件の商談をして3件成約したからといって、成約率が30%だと判断するのは早計である。100件、1000件と商談数を重ねてはじめて正確な成約率が見えてくる。

大量行動を嫌う営業は、10回、20回やっただけで、

「新規の顧客開拓なんて意味がない」

「この商品、意外と売れないですね」

と身勝手に決めつけてしまう。よほど仮説が間違っていない限り、大量に実践しない限り仮説の精度を検証することはできないものだ。

■最低限必要な努力量を知ろう

営業活動に大量行動が必要な理由3つ目は、目標達成に必要な最低限の努力量(最低必要努力投入量)を把握するためだ。

たとえば中小企業診断士に合格するには、一般的に1000時間の学習時間が必要と言われている。これは多くの合格者のデータから導き出された数字だ。営業も同じで、どれだけの行動量が必要なのか、実際に目標が達成するまで行動してみないと分からない。

大量行動を通じてはじめて、「この程度の成果を出すためには、これだけの行動量が必要なんだ」と理解できる。逆に言えば、これだけの行動量を確保できないなら目標達成は難しい、という判断もできるようになる。

達成するまで行動をしてもいないのに、「このやり方では効率が悪い」「こんなやり方では意味がない」と結論を出すことはできないのだ。

■単純接触効果を活用しよう!

営業活動に大量行動が必要な理由4つ目の理由が「単純接触効果」である。 この4つ目が、最も重要といってもいい。

これは心理学の用語で、「人は見慣れたものに対して好意を抱きやすい」という法則である。つまり、何度も顔を合わせるだけで相手との心理的な距離が縮まっていくのだ。古いも新しいもない。

SNSは典型例だ。毎日のようにインフルエンサーのInstagramやYouTubeを観ていれば、自然と好意を持っていく。気になる存在になってしまうのだ。

たとえ短い時間でも、継続的に接触を重ねることで、自然と信頼関係が構築されていく。営業はこの効果を意識的に活用すべきだ。なぜなら営業活動にとって最も重要なことは、お客様との関係構築と維持だからである。

ただし、相手にマイナスの印象を与えるような接触は逆効果だ。短時間でも相手に価値を提供できるような接触を心がけたい。まだ関係もできていないのに営業の都合で商品を案内したり、売込みをするのはやめよう。

■まとめ

以上、大量行動が必要な理由を4つの観点から解説してきた。「質より量」という言葉の本質は、量を追求することで質も高まっていく、というところにある。だからもちろん決して量だけを追い求めればいいわけではない。

重要なのは、なぜ大量行動が必要なのかを理解したうえで、日々の活動に取り組むことだ。今回紹介した4つのポイントを意識して行動すれば、おのずと成果は付いてくるはずだ。営業にとって絶対不可欠なこと(前提)なので、忘れないようにしたい。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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