なぜ仕事ができない人ほど「よく言うじゃないですか」をよく言うのか? 上司が対応すべき3つのポイント
「よく言うじゃないですか」という言葉を、頻繁に使う人がいる。
何か問題が起きても、
「よく言うじゃないですか、景気が悪くなると設備投資を控えるって」
「よく言うじゃないですか、高学歴な人ほどすぐ会社を辞めるって」
と言って済ませようとする。まるで、この言葉で思考を停止させているかのようだ。
ビジネスの世界で、このフレーズを多用する人は要注意である。正しい分析や検証をせず、主観的な思い込みだけで意思決定をしてしまう危険性があるからだ。
今回は、部下がこのようなフレーズを使ったとき、どう対応したらいいのかを解説した。とくに上司の人は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■「よく言うじゃないですか」の正体
このフレーズは、思考力が不足している人がよく使う言葉である。たとえば営業の現場で成績が伸び悩んでいる部下に対して、「どうすれば成果を上げられるか」と尋ねると、こんな答えが返ってくる。
「よく言うじゃないですか、量よりも質って。行動の質を上げることだと思います」
「よく言うじゃないですか、売れないのは商品が悪いって。商品力を上げることですよ」
いずれも根拠に乏しい言説である。なぜ量よりも質なのか。そもそも「行動の質」とは何なのか。商品が悪いとはどういうことなのか。その根拠がハッキリしない。
このように、多くの人が漠然と受け入れがちな通説や迷信を持ち出すことで、自分の主張を補強しようとする。しかし、これでは問題解決にはつながらない。
■なぜこの言葉を使いたがるのか?
このフレーズを多用する人の最大の特徴は、思考を深めることを避けたがることだ。たとえば「なぜ売上が伸びないのか」と上司に問われても、市場分析や競合調査をせずに、
「よく言うじゃないですか、不景気になると財布のヒモが固くなるって」
と言って済ませようとする。本当に景気が原因なのか、自社の商品力や営業力に問題はないのか、きちんと検証しようとしない。
また、客観的なデータを集めるのが面倒なタイプでもある。売上データや顧客の声を分析する代わりに、
「よく言うじゃないですか、お客様の声を聞くのが一番大切って」
と、漠然とした通説を持ち出す。
さらに、自分の経験則を過信する傾向も強い。たまたま経験した成功体験を一般化し、
「よく言うじゃないですか、お客様との飲みニケーションが大事って」
などと主張する。これでは時代の変化に対応できないのは明らかだ。
■ビジネスでの危険な使われ方
ビジネスの現場では、このフレーズは大きな問題を引き起こす可能性がある。たとえば経営判断の場面で、
「よく言うじゃないですか、お客様は価格で決めるって」
と言って、安易な値下げを提案する。本当に価格だけが購買の決め手なのか、付加価値を高める余地はないのか、そういった検討をせずに結論を出そうとする。
また、人材育成の場面では、
「よく言うじゃないですか、自分でお金を払わないと勉強しないって」
と決めつけ、会社が正しい教育機会を提供しない。このような思考停止は、組織に致命的なダメージを与えかねない。
■上司はどう対応すべきか? 3つのポイント
このフレーズを使う部下には、次のように対応すべきだ。
(1)具体的な根拠を求める
(2)反証例を示す
(3)思考を促す質問をする
まず何より、具体的な根拠を求めることが重要だ。
「よく言うじゃないですか、お客様は価格で決めるって」
と部下が言ったら、
「それは、どういうデータに基づいて言えることなの?」
「実際にお客様に対して調査はしたの?」
と掘り下げていく。また、反証例を示すことも効果的である。
「でも、高価格でも売れている商品があるよね。それを表にまとめたんだけど」
「むしろ値上げして売上が伸びた事例もあるよ」
このように具体例を示しながら、思考を深めさせていく。そして、
「その考えで本当に大丈夫?」
「他の可能性は考えられないかな?」
といった問いかけで、多角的な検討を促すのだ。
■まとめ
「よく言うじゃないですか」というフレーズは、雑談や日常会話では使っていい。人間関係を円滑にする潤滑油となることもあるだろう。
しかし重要な意思決定の場面でこのフレーズを使うのはリスクが高すぎる。上司はこのフレーズを使う部下の思考を深めるよう導くべきだ。そうしないと、いつまで経っても「自考自走」の組織にはなれない。
<参考記事>