こんな上司の下では働けない! 目標達成をはばむダメ上司3つの思惑
部下に「目標を達成してくれ」と言うだけで、具体的な道筋を示さない上司が増えている。若者の離職率が高まる昨今、このような上司の存在が問題視されている。
どんな上司のもとで働く若者は離職を決意するのか? どのような目標設定が部下を成長させるのか? 今回は目標設定が苦手なダメ上司に関して解説する。マネジメント業務に携わる人は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■目標だけ言い渡す上司3つの思惑
あるIT企業の営業部長からこんな話を聞いた。
今期の目標が昨対比20%アップという高い数字だったため、部長は毎月の業績会議で部下たちに「とにかく目標達成するように」と言い続けていた。しかし半期が過ぎても業績は上がらず、ついに若手営業の一人が「私には無理です。退職させてください」と申し出たという。そこで部長が、
「最近の若い子は、忍耐力がない。どう思いますか?」
と尋ねてきたので、私も言い返した。
「年齢なんて関係ありませんよ。そんなやり方では、部下はついてきません」
目標を達成させるためには、具体的な計画、プロセスが必要だ。そしてそのスケジュールを作るうえで重要なのは、行動指標(KPI)の設定である。
目標達成させるには、目標設定が最も大事なのだ。これ以上のアドバイスはないし、それをしないのなら上司の存在意義がない。
しかし、それがまったくできない上司が多すぎる。目標だけを伝える上司の思惑は次の3つである。
(1)部下の主体性を重んじる
(2)部下の成長を促す
(3)成果が出ないときの言い訳ができる
まず、部下の主体性を大切にする点は間違っていない。目標達成のための具体的なやり方まで細かく指示すると、部下は言われた通りにしか動かなくなるからだ。
また、自分で考えて行動することで、部下は大きく成長するチャンスを得ることができる。失敗を恐れず挑戦することで、新しい気付きも生まれるだろう。
しかし最大の問題は、目標が達成できなかったときの責任を部下に転嫁できることだ。上司は「目標は伝えた。あとは部下次第」と逃げることができる。
■KPIを知らない上司と苦悩する部下
目標を伝えるだけでは、部下は具体的に何をすればいいのかわからない。たとえば先述したように「今期は昨対20%アップ」と言われても、そのためにどんな行動をとるべきなのかイメージができないのだ。
本来なら、最終目標を達成するためのKPI(重要業績評価指標)を設定し、段階的に目標を達成させていく必要がある。「新規顧客を月に10社開拓する」「既存顧客の単価を20%アップさせる」といった具合だ。
さらにそのKPIを達成させるための指標設定も必要だ。
「新規顧客を月に10社開拓するには、60社の顧客リストに対して月1回はアプローチする」
「既存顧客の単価を20%アップさせるには、30社の既存顧客に対して部長と同行訪問する」
こういった具体的な指標があってはじめて「計画」はできる。スケジュールアプリに予定を書き込むことができるのだ。
しかし多くの上司は、このKPIの設定方法を知らない。または面倒くさがって設定しない。だから部下は手探りで仕事を進めるしかなく、目標達成への道筋が見えない。だから不安を抱え続けることになる。
最悪の場合、目標未達の責任を問われ、部下は「もっと頑張れ」「結果を出せ」と言われ続ける。
「何か分からないことがあれば、いつでも相談に来い」
と言う上司は多いが、そもそも目標達成するための指標を設定できないのだから、相談しようがない。そのストレスから心を病み、退職を選ぶケースも増えている。
■上司と部下の信頼関係を築くために
目標を伝えるだけの上司は、部下の成長を阻害しているだけでなく、人材流出のリスクも高めている。これを防ぐためには、上司は最低限KPIの設定方法を学び、部下と一緒に目標達成への道筋を考えていく必要がある。
目標を達成できないのは、部下の努力不足ではない。適切な目標設定ができていない上司の責任なのだ。部下を成長させる目標設定をすることで、組織の生産性は必ず向上するはずである。
<参考記事>