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覆るポジションの概念。ベンゼマとフィルミーノに見る、「9番」と「10番」の間の世界。

森田泰史スポーツライター
カルバハルと競り合うフィルミーノ(写真:ロイター/アフロ)

現代フットボールにおいてポジションの概念は存在するのだろうか?

2019-20シーズン、2020-21シーズンとイタリアと欧州で躍進しているのがアタランタだ。ジャンピエロ・ガスペリーニ監督の提唱するフットボールは人とボールが動くもので、選手たちはポジションを入れ替えながら相手の陣形に穴を見つけていく。

得点を喜ぶアタランタの選手たち
得点を喜ぶアタランタの選手たち写真:代表撮影/ロイター/アフロ

DF/MF/FWという概念はアタランタを見ていると消え去っていく。

そして、アタランタがチームとしてそれを体現しているなら、個人で体現しているのがカリム・ベンゼマであり、ロベルト・フィルミーノだ。

■フィルミーノの楽器

フィルミーノ、モハメド・サラー、サディオ・マネ。彼らはユルゲン・クロップ監督にとって、欠かせないリヴァプールの3トップだ。

「フットボールはオーケストラのようなものだ。いろいろな楽器を弾ける人間が必要だ。ある者はフィジカルが強く、またある者は淡々とプレーする。だがリズムを刻むためには全員が重要な素材だ」とはクロップ監督の弁である。

「ボビー(フィルミーノ)は本当に大事な選手だ。12本の楽器を奏でられるようなプレーヤーなんだ。いまさら、彼のクオリティについて話す必要さえない」

ドリブルするフィルミーノ
ドリブルするフィルミーノ写真:ロイター/アフロ

時に決定力不足が批判されるフィルミーノだが、それだけチームのために働いている。「プレスの先鋒」となり、リヴァプールの前線からのプレッシングを成立させる。また、状況によっては中盤の3枚と連携してボール奪取を試みる。

また、攻撃においてはフィルミーノが中盤に引いてきて起点になる。ジョルジニオ・ワイナルドゥム、チアゴ・アルカンタラ、ファビーニョといった選手たちとコンビネーションしながら「4vs3」の数的優位をつくる。

さらに、フィルミーノが下がってきて、サイドバック(アンドリュー・ロバートソン)が上がると、インサイドハーフ(ワイナルドゥム)が出ていく。2列目からの飛び出しでゴールを狙うが、これもフィルミーノがいなければ成り立たない。

■C・ロナウドのパートナーだけではない

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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