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なぜレアルはCLで目覚めたのか?ベリンガムとヴィニシウスの輝き…探し当てられたピース。

森田泰史スポーツライター
アタランタに勝利したレアル・マドリー(写真:ロイター/アフロ)

伝統的なチームの強さを、見せつけた。

チャンピオンズリーグ・リーグフェーズ第6節、レアル・マドリーはアウェーでアタランタと対戦した。試合前の段階で24位に沈んでいたマドリーだが、『絶対に負けられない』一戦で、アタランタに3−2と勝利している。

得点を喜ぶエムバペ
得点を喜ぶエムバペ写真:ロイター/アフロ

アタランタ戦では、キリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ジュード・ベリンガムが得点をマークした。役者が揃い踏みした格好だが、際立ったパフォーマンスを見せたのはベリンガムだろう。

カルロ・アンチェロッティ監督は、今季、苦しみながらチームビルディングを行ってきた。それは無論、エムバペを如何にして嵌めるかという問題に終始したが、そのなかで犠牲になってしまった選手の一人がベリンガムだった。

■ベリンガムとタスクの変化

ベリンガムは昨年の夏、移籍金固定額1億300万ユーロ(約162億円)で、ボルシア・ドルトムントからマドリーに移籍した。

カリム・ベンゼマが抜けたばかりのチームで、アンチェロッティ監督は【4−4−2】のトップ下にベリンガムを配置した。『ベリンガム・システム』と称されたフォーメーションで、イングランド代表MFは得点能力を開花させ、マドリーのドブレーテ(2冠)達成に大きく貢献した。

だが今季、エムバペの加入で、チームの様相は変わった。

3トップの中央にエムバペ、左ウィングにヴィニシウスを置くシステムで、攻撃時にピッチ上の左側を使うのは彼らのタスクになった。

一方で、ベリンガムには、ピッチの右側でのムーブが求められるようになった。アンチェロッティ監督がクラシコでベリンガムを右サイドの偽ウィングに配置し、バルセロナに0−4と大敗したのは記憶に新しい。

チームを支えるベリンガムとモドリッチ
チームを支えるベリンガムとモドリッチ写真:ロイター/アフロ

アンチェロッティ監督のそれは『悪手』であった。

ベリンガムは昨季、トップ下→左MFと自由にプレーできたから、得点力をアップさせられた。2023−24シーズン、公式戦42試合に出場して23得点13アシストを記録。2024年のバロンドールのランキングで3位に入った背景には、その起用とベリンガム自身の進化があったのだ。

■探し当てられたピース

ベリンガムは今季、苦しんでいた。リーガエスパニョーラでは、第13節オサスナ戦でようやく初ゴールを記録。ただ、そのゴールを皮切りに、レガネス戦、ヘタフェ戦、アトレティック・クルブ戦、ジローナ戦と5試合連続得点をマークした。

アンチェロッティ監督は、ベリンガムを左のインテリオール、あるいは【4−2−3−1】のトップ下に置くようになった。ベリンガムはヴィニシウスやエムバペのムーブを見ながら、空いたスペースに顔を出すようになり、得点力を取り戻しつつある。

アタランタ戦でゴールをマークしたヴィニシウス
アタランタ戦でゴールをマークしたヴィニシウス写真:ロイター/アフロ

またチャンピオンズリーグの決戦で、マドリーはヴィニシウスが負傷から復帰した。

リーグフェーズ5試合消化時点で、ヴィニシウスは16本のシュートを放ち、4ゴールをマークしていた。これはアーリング・ハーランド(シュート20本/4ゴール)、ハリー・ケイン(シュート18本/5ゴール)に匹敵するほどの決定力だった。

その男が戻ってくるというのは、アンチェロッティ監督にとって朗報だった。件(くだん)のアタランタ戦では、負傷明けでベストコンディションではなかったものの、押し込まれていた展開で勝ち越しゴールを記録。エースとしてのプレーを印象付けた。

マドリーを率いるアンチェロッティ監督
マドリーを率いるアンチェロッティ監督写真:ロイター/アフロ

「大きな勝利だった。監督は良い準備をしてくれた。試合に向けて、よく準えられていた。こういう試合でプレーするモチベーション、勝利するモチベーションに満ちていた。この勝利が、僕たちを前進させてくれる。素晴らしい試合だった。アタランタも良い状態だったし、ファンにとっても良いゲームだったと思う。だけど、こういう試合で、いつも勝つのはマドリーだ。だから満足しているよ」

「1試合1試合、戦っていく。僕たちはそういう風に考えている。勝ち点を15ポイント、積み上げたい。その先、どうなるかは見てみよう。いま、少しずつ、うまくいき始めている。この状況で前に進むため、それぞれ、何ができるかを考えている。これがレアル・マドリーだ。まだ始まったばかり。評価は最後に下してもらいたい」

これはブラヒム・ディアスのコメントだ。

ドリブルするブラヒム・ディアス
ドリブルするブラヒム・ディアス写真:ムツ・カワモリ/アフロ

これこそ、レアル・マドリーだ。ブラヒムのコメントは、正しいのだろう。それは歴史が証明している。

しかし、今季のマドリーは、思ったようにビッグマッチで力を示せていない。アタランタ戦が、カンビオ・デ・チップ、つまり変化のきっかけになるかーー。戦いは、続く。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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