安倍総理退陣がなければ小池都政も終わりになる
フーテン老人世直し録(331)
神無月某日
総選挙の序盤情勢について報道各社の世論調査で自公が300議席を超す勢いである。民進党から分かれた二つの勢力のうち希望の党は伸び悩み立憲民主党は公示前を倍増させる勢いと言う。
選挙前の経緯を振り返ればさもありなんと思うが、今回の総選挙の最大のテーマは妻と友人を守るため前代未聞の解散を行った安倍総理を続投させるかどうかにある。従って自公の数がどうなるかより自民党が単独過半数233を維持するかどうかが焦点となる。自民党が233議席を割り込めば安倍総理退陣の流れが生まれる。
しかし自民党が233議席を上回り安倍総理退陣が実現しなければ、安倍政権打倒を掲げて希望の党を立ち上げた小池東京都知事の政治力に疑問符が付く。勝負師が勝負に敗れれば影響は都政に及ぶ。敵対する者はここぞとばかりに攻め込み、都知事としての先行きは危うい。それを分かったうえでの決断だと思うから勝負の先行きを見守るしかない。
希望の党が登場する以前の政治構図なら安倍総理続投は間違いなく可能だった。だから解散の大義などなくても安倍総理は解散に踏み切った。ところが希望の党の登場はその思惑を吹き飛ばす。なぜなら現実に政権交代が可能な政治構図が出来上がったからである。
フーテンから見ると多くの国民は「55年体制」時代に培われた「保守・革新一騎打ち」の思考から抜け出ていないように見える。米国の言いなりに平和憲法を変えようとする保守と平和憲法を守り自立しようとする革新のイメージで日本政治を捉えている。
しかし55年体制末期の永田町を取材し、また冷戦後に世界を一極支配しようとした米国政治を見てきたフーテンにとって、それは「作られたイメージ」に過ぎない。自民党は米国の言いなりに平和憲法を変えようとしてきたわけではないし、社会党も自民党から政権を奪おうとしたことなど一度もない。
世界最強の軍事経済大国である米国は今もこれからも日本を支配し続けようと考えている。冷戦時代にあって平和憲法はそれに抵抗する手段であり、自民党は社会党に護憲運動を促し平和憲法を盾に米国の軍事的要求をかわし続けた。それが日本を経済大国に押し上げ米国を圧倒した。
米国は冷戦が終わるとそうした構造を一変させる。日本に憲法改正させて再軍備させるのではなく平和憲法を守らせて永遠に米国の軍事支配下に置き、米国に依存せざるを得ないようにして米国に経済的利益を吸い上げる。これが冷戦後の日米関係の基本である。
安倍政権の集団的自衛権行使容認やTPPへの積極参加はその要求に応えたもので、かつての自民党とは正反対である。安倍政権は平和憲法を変えずに米軍に全面協力し、TPPで米国の要求に最大限応える。それが「安倍一強」であるため歯止めが効かない。昔の自民党は社会党の議席を減らさずに歯止めをかける抵抗の政治術を持っていた。
政権与党になればその日から世界最強の軍事経済大国と渡り合わなければならないが、社・共に代表される野党は正論を主張するだけで立ち向かう手段を持たない。だから野党であり続けた。社会党は過半数を超える候補者を立てず、共産党は全選挙区に候補者を立てるが、政権を取らないことを前提にしていた。
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