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悠仁さま進学騒動と、「国民と訣別」と仰天見出しで断罪された秋篠宮家めぐる騒動の背景

篠田博之月刊『創』編集長
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

過熱気味の悠仁さま「進学」騒動

 秋篠宮家の長男・悠仁さまが筑波大学に推薦入試で合格したと宮内庁が発表したことで、ネットや週刊誌で大きな話題になっている。悠仁さま進学問題については、どうやら東大に進学するらしいとの情報が出回って賛否両論、反対の署名活動もなされたことは記憶に新しい。

そうした進学騒動に困惑したらしい秋篠宮家では、長男の進学先についていちいち発表するようなことはしないという方針だったらしい。しかし悠仁さまが推薦入試を受験したことは既に週刊誌で報じられており、11日に結果発表があるということで取材が過熱していたため、宮内庁は発表せざるをえないと判断したようだ。

 過熱気味ということでは、例えば『週刊文春』は既に12月2日の朝、筑波大の学長に直撃取材を行っていた。その時の学長の返事は「知りませんよ、私は」だったと5日発売の12月12日号に書かれている。そして今回、同誌は結果発表前日の12月10日早朝、再び学長を自宅前で直撃した。12日発売の同誌12月19日号「悠仁さま筑波大決断で紀子さまへの反乱」によると、今度は学長が「ちゃんと申し込んでくれれば」と言い残して車に乗り込んだと書かれている。

『週刊文春』12月12日号(上)と19日号(筆者撮影)
『週刊文春』12月12日号(上)と19日号(筆者撮影)

バッシングには反論していこうとの意思

 悠仁さま進学報道については、私は既にヤフーニュースで何度が記事にしている。例えば下記だ。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e682053a9a8bc5d36fe3425e5eb2dee366ef7e19

紀子さま誕生日コメントで言及された悠仁さま進学問題などの大論争と、気になる「紀子さま胃腸問題」

 上記記事は、紀子さまの誕生日コメントについて書いたもので、紀子さまはこう発言していた。

「ネット上でのバッシングによって、辛い思いをしている人が多くいるのではないかと案じています。私たち家族がこうした状況に直面したときには、心穏やかに過ごすことが難しく、思い悩むことがあります」

佳子さまは以前、もっと厳しい口調で秋篠宮家バッシングについて批判したことがある。眞子さんの結婚騒動を経て、今なお続くバッシングについては、秋篠宮家としてはきちんと反論していこうという考えのようだ。

そしてそれが騒動になったのが11月30日、秋篠宮さまの誕生日に際して発表された、事前に収録された会見内容だった。秋篠宮さまの発言自体は新聞・テレビが詳しく報じたし、宮内庁のホームページに全文が公開されている。引用しよう。

《記者 秋篠宮家へのバッシングとも取れる情報について、妃殿下が誕生日に当たっての文書で「思い悩むことがあります」と記されました。殿下の受け止めや、宮内庁に求めていることもお聞かせください。

殿下 一般的には、バッシング情報と言われております。ただ、本当にたくさんの情報があるわけですけれども、その中でのバッシング情報というのは、これは第三者と当事者では恐らく意味合いが異なってくるように思います。当事者的に見るとバッシング情報というよりも、いじめ的情報と感じるのではないかと思います。

つまり、不特定多数からそういうものが寄せられているという情報ですね。ただこれは、難しいところが多々あって、今は特定の媒体ではなくて、誰もがそういう情報発信できる時代になっています。確か、スマートフォンの普及率というのが、全世帯の90%ぐらいあるのだと思うのですね。そうすると、いい情報悪い情報ということは抜きにして、誰もが情報発信できる時代です。したがって先ほどお話しした当事者にとるといじめ的情報、これについて果たして全体のうちのどれぐらいの人たちが、そういうものを出していて、またその割合がどうなのか、そういうものを俯瞰ふかんしてみないとどういうふうに受け止めるかっていうのは難しいと思いますし、俯瞰ふかんできる状態じゃないと、受け止める側もきちんとした判断にならないのではないかと思っています。》

その内容を最初に見た時の印象は、やはりバッシングについては折を見て反論するという方針なのだなと思った。前述した紀子さまもそうだが、あまり強い口調にならぬようにという意思も一方で読み取れるものの、バッシングに対する明らかな意思が読み取れる。

秋篠宮会見発言を「国民と訣別」と見出しに

 ところがこの表現が思わぬ騒動となった。

 会見発言を報じた『週刊新潮』12月12日号の見出しは「秋篠宮さまが吐露された『国民』『政府』へのご不満」だった。『週刊文春』12月12日号に至っては「秋篠宮が国民と訣別した日」。国民との訣別宣言だというのだ。

 週刊誌は従来、内容を実際に読まない人も新聞広告で見出しを見ている人が多いと言われてきたし、最近ではその記事の全文ないし一部がウェブで公開され、紙の週刊誌そのものを読んでいない人にも広く拡散するようになった。そして今回、この『週刊文春』の「国民と訣別」という記事も、ネットでとても数多く目にしたからかなり拡散されたと思われる。

秋篠宮さまがバッシングを繰り返している人たちについて反論したことが、それは「国民」を批判したのと同じだ、とされたのが両誌の報道の特徴だ。別に私は秋篠宮家の肩を持つつもりは全くないが、バッシングへの反論を「国民」を非難することだとしてしまう、この論法には違和感を感じざるをえない。眞子さんの結婚騒動以来、秋篠宮家を一貫して非難している人たちがいることは確かだし、それも限度を超えなければ表現の自由だと思うのだが、それが国民の多数、あるいは代表的意見であるかのように言ってしまうのには、むしろ違和感を感じる人が多いのではないだろうか。

識者コメントのインパクトの強い表現を増幅

 両誌、特に『週刊文春』の強いタイトルが何を根拠に掲げられているかというと、記事中に出てくる識者のコメントだ。これは週刊誌がよく使う手法で、記事中のコメントでインパクトのある表現が出てくると、それを見出しに持ってくる。

『週刊文春』のその記事では名古屋大学大学院の河西秀哉準教授がこうコメントしている。「『いじめ』と称してしまえば、国民への批判にも繋がりかねない。それだけご本人たちは心を痛めておられるのかもしれませんが、事態を悪化させるだけではないか」

『週刊新潮』でも武蔵大学の千田有紀教授が「秋篠宮家に批判的な書き込みをしている人がどの程度いるのかは不明ではありますが、今回のご発言は、“いじめの主体は国民である”と秋篠宮さまが仰ったと世間では受け止められることでしょう」とコメントしている。

 両誌ともそのコメントを見出しに使っているのだが、この両氏のコメントは、直接的には、秋篠宮さまの反論は事態を悪化させないかと危惧を表明したものだ。『週刊新潮』の千田教授のコメントは「“いじめの主体は国民である”と秋篠宮さまが仰ったと世間では受け止められることでしょう」と踏み込んだ発言だが、これも秋篠宮さまがそういう主旨で語ったと言っているわけではない。それが「国民への訣別」と編集部が立てた見出しのようになると、別のニュアンスを持って独り歩きしかねない。 

 秋篠宮家バッシングは、眞子さんの結婚騒動を機に起こり、今でもネットに特定のバッシング派が存在しているようだ。2022年、秋篠宮さまとも交流がある元毎日新聞記者の江森敬治さんが『秋篠宮』という本を出版したが、バッシング派がアマゾンの書き込みでこの本を非難し始め、あまりにひどいので書き込み欄そのものがアマゾンによって削除されたことがあった。これについて私は当時、下記の記事を書いている。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/834206fc8a6699a9e0c3a9ba44aabba7907336bf

バッシング騒動がそのまま反映された話題の書籍『秋篠宮』をめぐる様々な波紋と応酬

根深い背景を持つ秋篠宮家バッシング

 バッシングに対して秋篠宮家側が反論すると、それは「国民への批判」だという論法は、これまでもバッシングする側に使われてきた。今回の「国民との訣別」という見出しもそれに近い論法のような気がするが、それは恐らく、そもそも週刊誌自体が秋篠宮家バッシングを行ってきた当事者だという背景によるものだろう。

 秋篠宮家バッシングについては、例えば皇室の不自由さから結婚によって自由になろうとした眞子さんを皇室の尊厳を汚すものと批判し、ジェンダーの問題に踏み込んだ発言をする佳子さまを我がままと決めつけ、それを許してきたのが秋篠宮家の放任教育だという見方が背景にあるというふうに、私は比較的批判的に論じてきた。それが象徴天皇制のあり方をめぐる議論と深く結びついていることは、拙著『皇室タブー』でも詳しく論評している。

 ここでその「そもそも」の議論を持ち出すと長くなるのでやめておくが、今回の騒動についていえば、秋篠宮さまの誕生日発言を「国民との訣別」と表現するのはどうもいささか無理があると思えてならない。自身の発言を「国民との訣別」と見出しに掲げられ、一番驚いているのは当の秋篠宮さまではないかと思う。長きにわたって続いている秋篠宮家バッシングには、結構深い背景があるし、それについてもう少し、踏み込んだ議論がなされたほうがよいと思う。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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