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「高齢者より独身者の方が多く、若い独身より中年以上の独身が多い」~中高年ソロ国家ニッポン

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

ほぼ3割が高齢者の国

日本は世界一の高齢国家である。

全人口に占める65歳以上の割合である高齢化率で比較すれば、2位以下の諸国を引き離しての圧倒的な1位であり、ほぼ3割の高齢化率を誇る。

※グラフ上はOECDだけを抽出したが、全地域で見ても日本が1位であることは変わらない。

WHO(世界保健機関)と国連が定めた高齢化の定義によれば、65歳以上人口の割合が7%超で「高齢化社会」、14%超で「高齢社会」、21%超では「超高齢社会」と呼ばれる。日本はもうすでに2008年には「超高齢国家」となっている。

失われた30年とともに高齢化

日本は平均寿命も長く、それゆえ勘違いも多いのだが、日本は決して昔から高齢国家だったわけではない。1980年代までは高齢化率は10%以下で、むしろ米国や欧州諸国に比べて高齢者の少ない国だった。

それが1990年代以降、一気に他の先進諸国をごぼう抜きにして世界のどこよりも早く超高齢国家となってしまった。奇しくも、「失われた30年」と同期して高齢化が進んだわけだ。

高齢者がいきなり降ってわいてくるわけではないので、これは戦後~第二次ベビーブームにかけて多く生まれた世代が高齢者となって顕在化したものである。同時に、この戦後から1990年代にかけては、医療の発達などによりきわめて低い死亡率で推移したこととも関連する。いわゆる「少死時代」である。

今後、間もなく年間150万人以上の高齢者が死亡していく期間が50年続く「多死時代」を迎えるが、同時に出生数の少ない少子化も起きているので、しばらくは高齢化率はあがり続けることになる。最大で4割近い高齢化率になることが推計されている。

写真:イメージマート

高齢者より独身者の方が多い

高齢者の割合が増えることとは、自動的に現役世代の割合が減ることであり、生産人口比率が少なくなることを意味する。だからこそ、現役世代への負担が大きくなることで社会保障費などの課題が叫ばれているわけである。

しかし、高齢化というが、2020年時点の国勢調査段階における高齢人口は約3600万人である。配偶関係別人口は15歳以上で見るのだが、高齢人口と独身人口(未婚に加えて離別死別の独身を含む)を比べてみると、実は独身人口の方が多い。

独身人口は現役(15-64歳)世代で約3556万人、高齢独身で約1374万人で、あわせて約4930万人である。有配偶と独身あわせた高齢人口全体より1300万人以上も多いのである。むしろ日本は「超高齢国家」である以上に「超独身国家」であるといえる。

※グラフ上の数値は万人以下四捨五入
※グラフ上の数値は万人以下四捨五入

「未婚化が進行して若い独身者が増えているのだからそうなるだろう」と思いがちだが、もうすでに「独身者=若い」という常識は通用しない。

実は、2020年の国勢調査段階で15-39歳までの独身人口と40歳以上の中高年独身人口とでは、40歳以上の中高年独身人口の方が上回っている。

つまり、日本はもはや「高齢者よりも独身者の方が多い」上に、「若い独身より中年以上の独身が多い」国なのである。

これらボリュームの多い40歳以上の中年独身は今後それほど結婚する見込みはないわけで、いずれそのまま高齢独身となる。また、有配偶の高齢者もいつまでも夫婦ともに長生きするわけではないので、やがてどちらかの死別によって婚歴有の独身となる。高齢者が増える速度以上に独身者が増大するかもしれない。

もはや高齢者は支えられる側ではない

「2040年に15歳以上の人口の半分が独身になる」と私が言っているのが決して妄想ではなく、確実にやってくるだろう未来であることがおわかりいただけたかと思う。

家計調査では相変わらず「二人以上の世帯」という家族単位の集計が重視されているが、もはや日本の消費の半分は独身(単身世帯以外の家族同居の独身含む)によって占められているといっても過言ではない。総務省では以前より「家計から個計へ」の統計指標作りを検討しているが、ぜひとも早急に実現していただきたいものである。

さて、そうした現状を前提とした場合に、「現役世代VS高齢世代」や「家族VS独身」などのように対立構造を煽ってもあまり意味はない。「少子化では増え続ける高齢者を支えきれない」という危機感もわかるが、もはやいつまでも高齢者が支えられる側だと考えること自体に無理がある。もちろん、病気などで働けない人たちに対する支えは必要だが、それは現役世代の中にも存在する。

世代や配偶関係というものではなく、「働ける大人たちが子どもを含む働けない人を支える」という有業人口依存指数視点で考えれば、一人が自分以外のもう一人を支えればいいという計算になるのである。

写真:アフロ

言い方を変えれば、結婚しようがしまいが、子がいようがいまいが、働く人は直接間接にかかわらず、税金を納め、消費によって経済を回すことで、必ず誰かを支えていることになる。

現状と未来の現実を正確に把握し、そうしたバランスを舵取りすることが、本来政治の役割と言えるのではないか。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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