ラーメンで地元に恩返しをしたい モヒカン刈り店主が作る 進化系「久留米ラーメン」とは?
久留米の人気ラーメン店が念願の「博多進出」
豚骨ラーメン発祥の地、久留米で2000年に創業した『モヒカンらーめん 味壱家』(本店:福岡県久留米市津福本町221-11)。店主の頭は見事なモヒカン刈り。しかしながらそのワイルドな見た目とは異なり、明るく元気な接客と臭みがない豚骨ラーメンで人気の店だ。
そんな久留米の人気店が、JR博多駅構内の商業施設『博多デイトス』にある『博多めん街道』へ2月20日に出店した。『博多めん街道』とは、福岡の人気ラーメン店が12店舗集結する人気のスポット。『モヒカンらーめん』は、これまで福岡市内への路面店の出店や福岡空港への期間限定出店はあったが、ついに「博多進出」を果たした。
久留米の人たちが店の危機を救ってくれた
店主の於保貴久さんは青春時代をバイクで過ごした。バイクレーサーになるも夢が破れ、目標を失って自暴自棄になっていた頃に出会った一杯のラーメン。ラーメンとラーメンを作る店主の姿に魅せられてこの世界に入った。久留米市内の『「一味ラーメン』で修業を重ね、2000年に念願の独立を果たした。
ラーメンという新たな夢を追いかけていた於保さんだったが、オープンしてしばらくは客足も少なく、原価を掛け過ぎたことも災いし一時は閉店も考えたという。そんな時に助けてくれたのは常連のお客さんたち。皆が手弁当で店を改装してくれたり手伝ってくれたことにより、客足が軌道に乗っていった。
「横道に逸れそうだった自分をラーメンが救ってくれて、潰れそうだった店を久留米の人たちが助けてくれた。だから僕はラーメンで久留米に恩返しがしたいんです」(モヒカンらーめん店主 於保貴久さん)。
臭みのない進化系『久留米ラーメン』
『モヒカンらーめん』のラーメンは、臭みがなくあっさりとしつつもコクがある味わい。大きな回転釜を使って大量の豚骨を強火で一気に炊くことで、豚骨のフレッシュな旨味や甘味を余すところなくスープに閉じ込める。油分や粘度は低いが濃度が高い、繊細で力強い豚骨スープが特徴だ。
さらに低温調理のチャーシューを丼の周りにグルリと並べた「溢れチャーシューメン」や、レモンのスライスを乗せた「レモンラーメン」、鉄鍋で焼いた麺の上にスープを注ぐ「焼き替え玉」など、ここでしか味わうことが出来ないオリジナリティあふれるメニューも豊富に揃う。
久留米ラーメンといえば「呼び戻し」に代表されるような、濃厚で豚骨臭のするスープや、「食堂系」などと呼ばれるライトなスープの店が多いが、モヒカンのラーメンは言わば「進化系久留米ラーメン」。さらにいち早く化学調味料に頼らないラーメン作りにも取り組んだ。
「僕が若かった頃の久留米ラーメンって、どうしても化学調味料が強いラーメンが多かったんです。自分がラーメン屋をやる時にちょうど子供が生まれて、自分の子供が安心して食べられるものを出したいなと思ってこのラーメンを作りました」(於保さん)
久留米に恩返しをして子供たちに夢を与えたい
於保さんはラーメンを通じて、地元久留米を盛り上げる活動にも取り組んでいる。久留米は豚骨ラーメン発祥の地と言われているが、意外とそのことを知る人は少ない。さらに九州以外の地域では、久留米の名前がほとんど知られていないことにも於保さんは驚いたという。
そこで他の久留米のラーメン店と協力して、全国のラーメンイベントや催事に精力的に出店。イベントで久留米ラーメンを提供することで、多くの人に久留米という場所と久留米ラーメンを知って貰いたいと考えている。於保さんが考えるラーメンでの地元への恩返しの一環だ。
現在、期間限定店として埼玉県南越谷に出店しているほか、地元久留米でも新たな取り組みとして新業態の『元祖チゲジロー本舗』を開業するなど、精力的に活動を続けている於保さんだが、まだ果たせていない大きな夢がある。
「若い頃に目標を失った僕は、ラーメンと出会ったことで夢を見つけて前に進むことが出来ました。今度は僕が夢や目標を持てない子供たちに、ラーメンや飲食を通じて生きることの素晴らしさを伝えたい。いずれはそんなことを教えられるような『モヒカン学校』を作りたいと思っています」(於保さん)
※写真は筆者によるものです。
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