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【加速する銃乱射】今年に入って255件、死者62人 数字で見るアメリカの現実と憂い

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

アメリカでは特にこの1週間で、銃乱射事件がテキサス、オハイオ、カリフォルニアと全米各地で多発。この週末だけでも24時間以内に2つの州で、何の罪もない31人もの人々が、銃の犠牲になり亡くなった。

日本のニュースではほとんど報じられないが、負傷者が複数の発砲事件はこの国でほぼ「毎日」発生している。

例えば、9人が亡くなったオハイオ州デイトン市の銃乱射による大量殺人事件の日(8月4日)を例に挙げよう。その事件以外にも同日、イリノイ州シカゴ市で2件の発砲事件(1人が死亡、計14人が負傷)、そしてテネシー州メンフィス市で1件の発砲事件(1人が死亡、3人が負傷)が起こった。

そして今日もニューヨーク市内では、ギャングの抗争絡みで4人が負傷する発砲事件が起こった。

これらはあくまでも、毎日起こる銃事件の氷山の一角にすぎない。銃にまつわる事件は「日常化」しているのが、アメリカの現実だ。

(本文のすべての数字は、2019年8月5日現在)

全米で、ここ1週間強で発生した主な乱射事件(1ヵ所で起こったもので、無差別事件以外も含む。死傷数に犯人は含まず)

  1. 日時
  2. 場所
  3. 被害者数
  4. 容疑者
  5. 動機や事件の状況

(NY)

7月27日(土)午後11時前

ニューヨーク州ニューヨーク市で行われていた屋外イベント会場

1人が死亡、11人が負傷

見つかっていない

ギャングの抗争と見られている

(CA)

7月28日(日)午後5時半すぎ

カリフォルニア州ギルロイ市で行われていた屋外イベント会場

3人が死亡、15人が負傷

19歳男(Santino William Legan容疑者、警察によりその場で射殺)

「非常に怒っているからだ」という言葉を発して犯行に及んでいる

(TX)

8月3日(土)午前10時半すぎ

テキサス州エルパソ市のウォルマート(店内)

22人が死亡、26人が負傷

21歳男(Patrick Crusius容疑者、警察により拘束)

メキシコ系移民を標的にしたヘイトクライムと見られている

(OH)

8月4日(日)午前1時すぎ

オハイオ州デイトン市の繁華街(ストリート)

9人が死亡、27人が負傷

24歳男(Connor Betts容疑者、警察によりその場で射殺)

学友の証言で、容疑者は高校時代に殺人やレイプのリストを作成していたとの情報あり。死者に容疑者の妹も含まれる

銃暴力統計サイト「Gun Violence Archive」では、よりショッキングな事実が数字として確認できる。

数字で見る、2019年銃関連の事件

銃にまつわる事件総数:33,236件

銃の乱射事件総数:255件(1日1件以上発生している計算)

警察が関与し死者が出た、銃の事件総数:1,203件

銃による死者数:8,795人

銃による負傷者数:17,480人

11歳未満の死者数および負傷者数:396人

  • 数字は常にアップデート中

米『タイム』マガジンも4日「銃乱射で無差別に殺害されたのは、2019年に入ってすでに62人」というショッキングな見出しで、多発する銃乱射事件について報じた。

該当記事は、『マザージョーンズ』誌が1982年以降に発生した銃乱射事件の数をまとめたデータベースを基に、被害者数や発生した州を弾き出し、年ごとにわかりやすく記載している。

1982年以降発生した「銃乱射事件」の数

(犯人を除く死者3人以上の事件115件に限る)

死者:932人

負傷者数:1,406人

  • 59人もの人々が殺されたラスベガス銃乱射事件が発生した2017年は、死者、被害者数の多さが顕著に現れている。この1年間だけで、117人が乱射事件により亡くなった。
  • 銃規制が厳しい州(ニューヨーク、コネチカット、ワシントンDCなど)と比べて、銃規制が緩い州(銃所持に寛容な州)ほど、銃乱射事件が多い。

2013年にオバマ元大統領により承認された連邦政府の大統領令により、マス・シューティング(無差別乱射事件)の定義として、犯人を除く死者数が4人から3人に引き下げられた。よって、同年を境により多くの無差別乱射事件がカウントされるようになった。

例えば、先月27日にニューヨーク市で発生した銃乱射事件(ギャング同士の抗争)は、銃で亡くなった犠牲者が1人のため、ここにはカウントされていない。単に銃を使った発砲事件やその被害者の数を含めると、数字はさらに大きくなる。

これらの数を改めて見た人は、誰もが脱力し、深いため息しか出てこない。

他国と比べてもこの通り。発砲事件のピックアップ基準によって数字は異なるが、だいたい250件前後というのは共通している。

1999年のコロンバイン高校銃乱射事件でも、

2007年のバージニア工科大学銃乱射事件でも、

2012年のサンディフック小学校銃乱射事件でも、

2016年のフロリダ・ゲイナイトクラブ銃乱射事件でも、

2017年のラスベガス銃乱射事件でも、

2018年のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件でも、

殺戮が起こる度に、人々は「こんな悲劇はもうごめんだ」と、涙ながらに声高に、銃の廃止や規制強化を叫んできた。

しかし何も変わっていない。

変わらないどころか、悪化の一途を辿っている印象さえある。その大きな理由は、NRA(全米ライフル協会)と政治の癒着があると言われている。

度重なる銃の乱射事件を受けてトランプ大統領は、人種差別と白人至上主義を非難する声明を出した。若者のメンタルに悪影響を及ぼすものとして凄惨なストーリーのビデオゲームも一因だとする発言もみられ、それに対して「日本にはそのようなビデオゲームがないということか」というリプもある。

8月5日には、このようにツイートしている。

テキサスとオハイオの事件を断じて許さない。被害者を決して忘れることはできない。共和党と民主党は力を合わせて、銃購入のためのバックグラウンドチェックを強化すべく新たな法案を作り出さなければならない。そしてこの施策は、新たな移民制度改革案とおそらく結びつくことになるだろう。これらを良いものにしなければならない。これがうまくいっていないがために、これらの悲劇的な出来事に結びついているのだ。

出典:Twitter

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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