「紅麹サプリ」ってそもそも何?医学論文を読んでみた。
問題となった紅麹サプリ。そもそも「紅麹」がなぜサプリに?
世間を騒がせている紅麹サプリ。亡くなられた方や入院された方には心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
事故ばかりが騒がれていますが、「そもそも紅麹って何?なぜサプリになって売られているの?」という疑問を持たれている方も多いのでは?そこで今回は紅麹とコレステロールについて簡単にご説明します。
紅麹には「スタチン」という薬に似た物質が含まれている
今回問題になった紅麹サプリは、「コレステロールが下がる」というのが事実上の「売り」でした。なぜそのような作用が期待されたのでしょう。
キーワードは「モナコリンK」。コレステロールを下げる物質を探していた、わが国の遠藤 章博士が発見したものです。1979年のことでした [文末文献1] 。
「なぜコレステロールが下がるんだ?」
不思議に思った遠藤博士がモナコリンKを解析すると、「HMG-CoA還元酵素」という酵素の働きを阻害することが分かりました [文末文献2] 。この酵素は細胞がコレステロールを合成するのに必須の酵素です。
実は遠藤博士、ちょうど「HMG-CoA還元酵素」の働きを阻害する物質を探していたところでした。なんたる偶然。
細胞内でコレステロールが合成されるのを抑制
つまり紅麹に含まれるモナコリンKは、細胞内でコレステロールが作られるのを抑えることにより、血中のコレステロールを減らすのです。
なお遠藤博士は「HMG-CoA還元酵素」の働きを抑える物質をもう一つ発見しており(コンパクチン)、そこから「スタチン」薬と呼ばれる、世界中で使われているコレステロール低下薬が開発されました。今では血管系の病気治療になくてはならない薬となっています。
そこで薬剤としての「スタチン」ではなく、「サプリ」という形で「HMG-CoA還元酵素」を阻害し、コレステロール低下を期待すべく紅麹サプリが開発されたというわけです。
コレステロールは確かに下がる。でも安全性は未知。
では紅麹サプリで本当にコレステロールは下がるのか——。
この点は多くの臨床試験で調べられています。そしてそれらの臨床試験を併合した解析(「メタ解析」と呼びます)では、紅麹サプリで偽サプリに比べ、悪玉コレステロールが30 mg/dL以上も下がっていました。
一方、どのような副作用がどれほど出るかは、20試験のデータを併合したこの研究でも結論は出せませんでした [文末文献3] 。
サプリは医薬品と違い、臨床試験を行なって「一番効いて、一番害の少ない」用量を探し当てる必要がありません。だからどれくらいの量、紅麹サプリを飲むのがベストなのか、誰にも分からないのです。
そしてこれは、すべてのサプリに当てはまる話です。至適摂取量は不明なのです。
サプリだからといって必ずしも体に良いとは限らない。
いかがでしたか?紅麹サプリについての医学論文をザッと眺めてみました。
サプリについては以下のような論文紹介記事も書いています。体への影響は必ずしも良いものばかりとは限らないようです。こちらもぜひ、お読みください。
今回の事件については別途、月刊誌で記事にします。お楽しみに。
ではまた!
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今回ご紹介した論文
- 新たに発見した物質「モナコリンK」は動物実験で血中コレステロールを下げた。
- 「モナコリンK」は(のちにコレステロール低下薬となる)スタチンと類似の作用でコレステロールを下げていた。
- 信頼性の高いランダム化比較試験13本を併合すると、紅麹サプリは偽サプリに比べ悪玉コレステロールを大幅に下げていたが、安全性については結論できない。
【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。