糖尿病の人はカルシウムサプリを避けるが吉。 2万人データが明らかにした事実とは【最新医学論文】
糖尿病患者は骨折高リスク
最近、「名称変更」が話題になった「糖尿病」(しかし新名称候補の「ダイアベティス」ってどうでしょう?知らない人が聞いたら「妙な病気」と思われるだけでは?)。
ともあれ、日本では男性の5人に1人、女性でも10人に1人が「糖尿病が強く疑われる」と報告されるまでに増えてきました [厚労省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」20頁]。40歳をすぎたら注意したい病気です。
さて糖尿病の合併症といえば「しめじ」と呼ばれる「神経症」(し)、「網膜症」(目→め)、「腎臓病」(じ)や、血管が詰まって血液が流れなくなる「心筋梗塞」や「脳梗塞」が有名ですが、「骨折」も増えるのはご存知ですか?例えばカナダからの論文では、糖尿病の女性が大腿骨折するリスクが糖尿病でない女性の1.8倍にもなっていました [文末文献1] 。看過できない数字です。
なぜ骨が折れやすくなるのでしょう?その理由は骨がもろくなる「骨粗鬆症」になるリスクが、糖尿病の人では高くなっているからです [「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」126頁] 。
でもカルシウムサプリに走るのはちょっと待って
そこで「骨を丈夫にするためにカルシウムを摂らなくては!」となるのですが、「カルシウムサプリ」は避けた方が良さそう。
というのも、糖尿病の人がカルシウムサプリを常用すると、死亡や心筋梗塞や脳卒中などのリスクが上がる可能性が明らかになったからです。そしてこれが今回の本題です。
米国糖尿病学会が発行している「糖尿病治療(Diabetes Care)」という学術誌に掲載された論文をご紹介します。糖尿病領域の臨床研究が載る学術誌としては世界トップクラスの学術誌。信ぴょう性は高いと考えられます。筆者は中国・華中科技大学のZixin Qiu氏たちです(7月28日掲載)[文末文献2] 。
糖尿病でカルシウムサプリを常用すると死亡リスクが1.4倍
今回Qiu氏たちが解析したのは、英国に暮らす糖尿病患者2万2千人弱のデータ。UKバイオバンクというデータベースから引き出しました。
そしてこの2万2千人弱をカルシウムサプリ「常用」者と「非常用」者に分け、約10年間後、どうなっていたかを調べたのです。
すると「常用」者では「非・常用」者に比べて「死亡」するリスクが、相対的に44%も増加していました(1.44倍)。
心筋梗塞や脳卒中などの「脳心血管疾患」で死亡するリスクはもっと高く、「非・常用」の1.7倍近くまで増えていました。
ちょっと驚かされる数字ではありませんか?
サプリ以外の要因が死亡リスクを高めている可能性もあるが・・・
ただし念のために記せば、カルシウムサプリを常用する人たちに共通する別の因子が死亡などのリスクを上げている可能性も否定できません。「健康に自信がないからサプリを飲んでいる」=「サプリを飲もうという人はもともと健康状態が良くないから、死亡リスクが高い」などという可能性です。
しかしご紹介した結果は「カルシウムサプリ」以外が「死亡」や「脳心血管疾患死亡」に与える影響を統計学的に除去した結果です。つまり「カルシウムサプリ」がこれらのリスクを高めていた可能性が高いと考えられるのです。用心して損はありませんよね。
というわけで、糖尿病の患者さんが骨粗鬆症・骨折予防でカルシウム摂取を増やすなら、食事を工夫した方が良さそうです。
最後に
いかがでしたか?「糖尿病になると骨折リスクが上がる」からと安易にカルシウムサプリに走るとかえって、寿命を縮める可能性があるという論文でした。
サプリについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもちょっと意外なはず。でもきちんとした医学論文に載ったデータです。ぜひお読みください。ではまた!
今回ご紹介した論文
- 糖尿病患者では骨折リスクが高くなる [英語]
- カルシウムサプリ常用の糖尿病患者は早死していた [英語]
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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。